DQ4プレー記・ただ今のお題
<掃き溜めに鶴>

ルール
・4章はミネア(とオーリン)だけで進める
・5章、船取得までは勇者、ミネアのみで進める
・5章、船取得以降、トルネコ、ライアン、ブライ、ミネアで進める
・キングレオ戦、天空への塔のみ勇者使用可
・勇者は馬車内での生存状態可。アリーナ、クリフト、マーニャは棺桶
・ガーデンブルグでの棺桶人質可
・838861、8逃げ、透明気球等の裏ワザ禁止
・種や木の実類は使い切る


過去のプレー記(プレー記案内はこちら
[記念の二部作]
[01]20周年記念 [10]25周年記念
[女性勇者二部作]
[02]装備品 買わない盗まない [09]いろいろやりすぎ
[三人旅三部作]
[03]水戸黄門 [04]腹でん!(パラディン)と美人姉妹 [05]まどろみ無双
[柔剛柔の三部作]
[06]クレバーカルテット [07]益荒男四人衆 [08]クレバーカルテットDS
[勇者役トルネコの二部作](の予定)
[11]百花繚乱 [12]進行中


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2014年11月17日
 気が付くと私は固い寝台の上に横たわっていた。体のあちらこちら傷だらけで痛みがある。痛みがあるということは、まだ死んではいないということらしい。難儀しつつも起き上がると、目の前に鉄格子が広がる。格子越しには兵士が1人立っていた。囚われの兵士であろうか……いや、逆だな。どう考えても囚われたのは私の方である。
 そういえばお嬢様方は?! と、ハッとした途端、隣からお声が聞こえてきた。
「もう! 絶対信じらんなーい! いきなり『ひいてはいけないカード』なんか引くなんて! しかもあたしにだけヒットとか……。あんた、あたしに恨みでもあんの?」
「だからさっきから謝ってるじゃない。それに結局こうやって生きているんだから良いでしょう?」
「良かない! せっかくの晴れ舞台にルカニしか見せ場が無かっただなんて、屈辱だわ!」
「だから、お詫びに羊喫茶に連れて行ってあげるから、そんなに怒らないでよ」
「ひつじじゃなくてしつじ! 執事喫茶だっつうの! 羊にお茶なんか淹れてもらっても嬉しかないわ!」
 うむ、お2人ともすこぶる元気そうである。これなら安心だ。

 しかし、私たちは囚われの身となってしまった。いくら怪力と自負する私でも鉄格子を破壊するほどの力を持ち合わせてはいない。キングレオ城の王座についていたバルザックに、瀕死の傷を負わせた私たちだ。このままでは処刑されてしまうに違いない。私はどうなっても構わないが、マーニャ様とミネア様だけは救わなくてはならない。それこそが今の私に出来うる唯一のことなのである。
 さてどうしたものか……。
 思い悩んでいると、どこからかか細い咳払いが聞こえた。マーニャ様やミネア様にしてはしゃがれ過ぎた咳払いである。改めて牢の中を見渡すと、なんと、私たちの他に1人、老いた囚人がいるではないか! やはり固い寝台の上で、力なく横たわっている。その体は痩せこけ、髭も伸び放題ではあるが、その顔立ちにはどこか気品が感じられた。どこかで見たような顔にも思えたが、誰であるかまでは分からなかった。老人はゆっくりとこちらを向き、かすれた小さな声で語りかけてきた。
「みな気が付いたようじゃな。わしの話をよく聞きなされ。……この奥の部屋に乗船券が置いてある。それをそなたたちに譲ろう」
 乗船券とは港町ハバリアを出航する船のチケットであろう。以前は比較的手に入れやすかったが、最近は国の取締りが厳しく入手困難な代物だ。その乗船券を手にした状態で牢屋に入れられているこの老人は一体何者なのであろうか。
「そなたたちはまだ若い。生きてさえすれば何とかなる。だからこの国から逃げるのじゃ」
「それなら、王様も一緒に逃げようよ!」
 マーニャ様の言葉にハッとした。そうだ、国王陛下……ここに横たわるご老人は、まさしくキングレオの国王様であったのだ。エドガン様がまだ健在だったときに、私も何度かお会いしたことがあった。エドガン様の研究に大変理解が深く、資金援助もしてくださった。とても聡明で穏やかな国王様だった。それがこんなことになってしまったとは……。
「たとえ何も出来なくなってしまっても、それでもわしは、この国を捨てて逃げるわけにはいかぬのじゃ。だからわしに構わず、そなたたちだけで行きなされ」
 陛下は決して首を縦に振ることはなかった。

 多くの人の運命を翻弄する進化の秘法……やはりあんなものは、二度と日の目を見ないように封印しなければならないのだ!

 我々がここを脱出するための手段を話しているにも関わらず、格子越しの兵士は全く動く気配を見せなかった。もしかしたら彼は陛下の忠実なる臣下なのかもしれない。私たちがいなくなったことが分かれば、彼もただでは済まなくなるかもしれないのに……。
 私は誇り高き忠臣に心の中で礼を言い、お2人と共に奥の隠し通路へと進んでいった。

 乗船券を手に入れ、さらに通路を進むと階段が見えてきた。城内の位置関係と、今辿ってきた通路を頭の中で描いてみる。……恐らく階段を上った先は正門からは死角の位置。ただ、見張りの兵士がどこにいるかは分からない。外に出るリスクは決して低くはないであろう。だが、出ないままであれば船は出航してしまう。
「一か八か、出るしかないわよね」
 マーニャ様の仰るとおりだ。私たちは覚悟を決めて地上へ出た。

「あっ! 脱獄だ!」
「あちゃー、いきなり見つかった」
 運悪く、すぐそばに兵士が1人いたのだ。しかし不幸中の幸いだったのは見た限り、見張りはその1人しかいないということだ。脱獄の知らせを受けた他の兵士が出てくるまで、うまくいけば時間を稼げる!
「うおおおおお!」
 私は渾身の力で兵士に襲い掛かった。こいつを殺してもいい――そのくらいの気持ちで拳をふるい、怯んだ相手を抱えて、頭から城壁へ力の限り叩きつけた。相手の骨が砕ける衝撃が、私の身体にも響いた。
「うっ、うわらばっ!」
 またも世紀末(*注 前世紀のですが)な断末魔をあげて兵士は散った。

 今ならこの場所には私たち3人しかいない。しかしすぐに城から多くの兵士が出てくるであろう。
「マーニャ様、ミネア様、今です! 今のうちにお2人でハバリアへお行きなさい!」
「え?! どうして、今なら3人で逃げられるじゃないか!」
「ダメです。3人で逃げれば追われます。下手したら船が出航しなくなる。それではダメです! 私はここで追手を食い止めます。だから2人で行くのです!」
「でも……」
 マーニャ様はなかなか引き下がろうとはされなかった。だから私はミネア様に視線を移し、目で訴えた。ミネア様は唇をかみしめながら無言で頷かれた。
「姉さん、オーリンの言うとおり、2人で行きましょう。もう時間がない。私たちはここで共倒れするわけにはいかないの」
 いつもと同じような、冷静な声音でらっしゃった。
「ミネア、あんた、本当にそれでいいの? 3人で逃げ切れるかもしれないのに……そんなの冷たすぎるよ!」
「お説教だったら船の中でじっくり聞くわ。とにかく行くの」
「……オーリン!」
 ミネア様はマーニャ様の腕を引っ張ると、半ば引きずるようにして敷地の外へと向かわれた。決してこちらを振り返ることなく、ただひたすらに前へと進まれた。
 そしてついにお2人の姿は見えなくなった。
 ミネア様に損な役回りをお願いしてしまったことは些か心苦しい。もしまたお会いすることが出来たならお詫びをせねばなるまい。荷物持ちなど良いかも知れぬ。……再び会えればの話ではあるが。

 その直後、城門から数名の兵士が現れた。もっと大勢出てくるかと思っていたが、そうでもない。この程度の数なら何とかなるかもしれない。勝とう、勝ってハバリアへ行こう、などとは微塵も思ってはいない。とにかく今の私は時間稼ぎをすれば良いのだ。
「雑魚ども、あそこの兵士のようになりたければ相手をしよう。まとめてかかって来い!」

 私の最後の戦いが始まった。

   ◇◇◇

「くそ、なんて馬鹿力だ」
「こいつがアレだろ? バルザック様を叩きのめしたって奴だろ?」
「だがもう、さすがにくたばっただろう」
「あー疲れたな。こいつはココに晒し者にして、さっさとメシを食おうぜ」

 ……さすがに私1人ではどうにもならなかったようだ。「地面に大の字」とはまさに今の私のことを言うのであろう。
 だが、幸いなことにこいつらは脱獄したのが私だけだと思っているらしい。続々と城内へ引き上げていく。あのバルザックが王になっただけはある。兵士間の情報伝達も疎かであれば、統率もろくに取れてはいないようだ。

 もはや自分の身体をろくに動かすことも出来ない。私は兵士との戦いに敗れた。だが、奴らがハバリアへ向かう気配は皆無。
 きっと、大局的には私は勝ったのだ。
 最後の最後で、私はなんとかお嬢様方をお守りすることが出来た。我が生涯に一片の悔い無し……とは到底言えぬ。今に至るまで悔いが残ることばかりであった。だが、これでほんの少しだけ胸を張ってエドガン様のもとへ行けるであろう。
 目を閉じればまぶたの裏に、在りし日のエドガン様の姿が蘇った。その傍らには嬉々として習い始めた踊りを披露するマーニャ様と、お父上の後ろから恥ずかしそうにこちらを覗くミネア様の姿。
 マーニャ様、ミネア様、まだまだつらい道が続くかもしれませぬが、どうか姉妹仲良く、そして必ず、エドガン様のご無念を晴らしてください……。

「キャー! 助けてー!」

 恐らく人生最後であろう考え事をしていたとき、不意に女性の叫び声が聞こえたような気がした。これは幻聴であろうか?

「でへでへー。待てー、おじさん逃がさないぞぉー! ぐへへー」

 品性の欠片も感じられない男の声も聞こえる。……よりによって人生の最後にこんな男の幻聴とはあんまりではないか!
 そう思った途端、身体に力が入った。まるで何かのスイッチが入ったかのようであった。地面にしっかりと手を付いて身体を起こすと、逃げ惑う若い女性と、しまりのない口から唾液を垂れ流しながら女性を追い掛け回す大柄な男がそこには居た。どうも幻聴ではなかったようだ。
 2人とも私が既に屍になっていると思っていたのであろうか。起き上がると驚いたようにしてこちらを見た。
「ぐええええ、な、なんだオメェはぁ! 今イイトコロなんだよぅ! 腐った死体なら出る作品が違うだろぉがぁ! あぁ?」
 下品なだけでなく、たいそう失礼な男である。
「腐っているのはお前の性根の方だ!」
 私は立ち上がって、男の方へ一歩踏み込んだ。
「あーたたたたたたた! ぉあたぁ!」
 無我夢中であった。100発殴りつけたと言っても大げさでは無いほどの攻撃をお見舞いした。
「ひゃまはぁ〜 は、はろわっ!」
 まるで世紀末に職探しをするかのような断末魔であった。あまりに情けない叫びに思わず体中の力が抜け、私は再び地面に臥せた。こいつのおかげで長らえた生命は、ほんの数分のみであったようだ……。
「あ……ありがとうございます。あぁ……ひどいお怪我を」
 女性が駆け寄ってくれたようだが、もはやその言葉をよく聞き取ることも出来ず、言葉を返す力も残されてはいない。
「そ、そういえばわたし、確かキメラの翼を持っていたはず。ここならもうお城の外だから、きっと使えるわ。あの、わたし、前にサントハイムの小さな町に興行に行ったことがあるんです。だから、これを使ってあの町まで逃げれば大丈夫なはずです。だからわたしにつかまって……って言っても無理みたい。よいしょ、よいしょ……お、重い。わたしの力じゃ動かせないよ……どうしよう」
 女性は必死に何かをしているようだった。
「あ、そうだ! わたしの方がこの人につかまればいいんだ! ちょっとごめんなさいね、少しの間だけ我慢して。……じゃあいきます。それっ!」
 何かが身体にまとわり付いたかと思うと、急に身体が軽くなった気がした。なんだ? 宙に浮いているのか? 私はこれからどこかへ向かうのか? エドガン様の待つ天上か、それとも……。

 今の私にはこの先のことなど、うかがい知る由もなかったのである――

 −第4章・おわり−



   ◆◆◆

4章は3回ぐらいで終わるかなと思っていたら、とんでもなかったです(´・ω・`)
書き進めているうちにオーリンが考え事が多い性格になってしまったり、断末魔が世紀末な悲鳴になったり、色々と思いがけない展開になってしまいました。最も思いがけない展開だったのは静寂の玉を使わなかったのにレベル10でクリアできてしまったことですが。
最後、オーリンと姉妹が別れる場面。リメイク版の会話システムでは確かマーニャがミネアを引っ張っていく形になっていたと思います。しかし今回のパターンはそれとは逆になっています(腹姉妹のときも逆でした)
リメイクでそうなっている以上、マーニャが引っ張っていくのが公式なのでしょうが、個人的にはリメイクが出るより前からずっとミネアが引っ張っていく形を想像していました。なのであえて公式とは逆の展開にしています。

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2014年11月24日
スローペースながら4章まで終わった「いろいろやりすぎ」ですが、この辺でルールを発表したいと思います。
ルールはズバリ、

あ り ま せ ん \(^o^)/

何でもOKでいきます。
(ただし冒険の書が消えるような無茶はしない!)

当初作戦を「いろいろやろうぜ」で固定したプレー記を…と考えたのですが、「いろいろやろうぜ」のプレー状況をつらつらと文字で説明してもあまり面白くないのではないかと(愚痴が多くなりそう……)
その手のプレーはむしろ動画向きなんじゃないかなと思います。実際、某所に「いろいろやろうぜ」固定のプレー動画があって、大変面白いです。文章での表現では敵いそうにありません。もっとも、文章表現力に優れた人が書くのなら面白いものが出来るのかもしれませんが、私には無理そうです。
なので、作戦は固定せず、裏技小技、色々アリという方向での「いろいろやりすぎ」にすることに決めました。冒険の書が消えない程度に試していきたいです(´д`;)
文章的にもフリーダムに色々と出来たら良いかなと思ってます。

というわけで、4章が終わって次は5章…と行きたいところですが、その前に前々からチョビチョビと書いていたものを「4.5章」として6回ほど載せる予定です。スコット&ロレンス再登場?

当初の計画では年内完結を目論んでいたのですが、もしかしたら間に合わないかも(´・ω・`)

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2014年11月27日
 ここは世界経済の中心地・エンドール。
 城下町はいつでも多くの人々で賑わい、活気付いている。城下町の南に構える2階建ての宿屋の地下には世界最大の遊技施設・カジノがあり、多くの者が遊技に興じ、勝負の行方に一喜一憂している。
 そんなカジノに最近、ほぼ毎日入り浸っている妖艶な女の噂は、その界隈の者たちの間にみるみるうちに広まった。宿屋の2階、ある一室を生活拠点としているロレンスという男の耳にもまた、その女の噂が入ってきた。
 ロレンスは細身で碧の長髪、端正な顔立ちの詩人である。ただし彼の紡ぐ詩は、多くの者の心を打つ、とはいかなかった。しかし横笛や竪琴など、楽器の演奏にかけてはなかなかのもので、むしろそちらで日銭を稼いでいると言っても過言ではない。
 ロレンスは部屋を出て、カジノへと降りていった。カジノの遊技はスロット、ポーカー、モンスター格闘場。その一通りに目をやる。格闘場に立てられた闘技場と客席を隔てる金網に噛り付く者、ポーカーの席で顔を紅潮させトランプを凝視する者、そしてスロット台に食いつくように立っている、1人の女。腰の辺りまで伸びた滝のような紫の髪。しなやかで程よい肉付きのスタイル。そのうえ纏う衣装は、なんとも際どい。下着同然とも言える格好だ。あれでは男であれば、いや、女であろうとも嫌でも目がいってしまうかもしれない。
 あのような衣装は見覚えがあると、ロレンスは思った。異国の地で見た踊り子たち。彼女たちの衣装は、たしかああいう感じであったと。
 踊り子であるのなら好都合。上手くいけば新しい食い扶持に繋がるかもしれない――
 ロレンスはさり気なく女の隣りへ向かい、遊技を始める。そしてさり気なく話しかける。
「いかがですか? 調子の方は」
 女はロレンスの方を見ることもせず、スロットを睨んだまま答えた。
「見れば分かるでしょ。全然よ」
「それは失礼。今日は朝から?」
「……うるさいわね。あまり話しかけないでくれる? 気が散るでしょ」
 女は睨み顔のままロレンスを向いた。多少化粧が濃いが、目鼻立ちがはっきりしている。際どい衣装と抜群のプロポーションもさることながら、顔の方もまたかなりの美貌の持ち主だ。
 ほう、横顔も美しいが、正面を向いた顔もまた美しい。いかにも気が強そうなお嬢さんだ。ロレンスはそう思いながら女に謝った。しかし話はなおも続ける。
「あなたは随分とこの場所がお気に召したようですね。『カジノに女神が降臨した。きっと勝利の女神だ』と噂になっていますよ」
「あんた、随分口が巧いわね。まあ、そう言われて悪い気はしないけどさ。でも残念ながら勝利の女神ではないわね」
「そのようですね」
 かなり寂しいコイン受けを見ながらクスっと笑うロレンスに、女はあからさまに不快な表情を見せる。
「遊技はあくまで遊びです。のめり込みすぎは身を滅ぼすこともある。気を付けた方が良い」
「フン、余計なお世話よ。なんで赤の他人にまで妹と同じこと言われなきゃいけないのさ」
 女は不貞腐れた顔をしたまま、再びスロットを始めた。
「ご存じですか? このカジノには特設ステージを組める場所があるんですよ」
 どれだけ疎まれても、ロレンスは懲りずに話を続ける。
「あなた、踊り子でしょう?」
「わお! よく分かったわね……って言うと思った? このカッコなら分かって当然。ところで何なのアンタ。もしかしてナンパ? だったらお断りよ」
 あまりにつれない返事にロレンスは苦笑いした。
「いえいえ、ナンパではないですよ。まあ、確かにあなたはナンパしたくなるほど魅力的ですけどね。でもそうではなくてですね、ズバリ言いますが、僕と組みませんか?」
 突然の発言に、女はさすがにあっ気に取られた。
「僕は楽器の演奏が得意なんです。どのくらいかと言うと、その気になればこの体ひとつで同時に二つの楽器を演奏できるくらいに。そしてあなたは、人を惹きつける力を持った踊り子だ。さっきステージを組める場所があると言ったでしょう? そこで僕が演奏して、それに合わせてあなたが踊るんですよ。
 ここに来るような人たちは宵越しのお金を持たないような者ばかり。良いモノを見せれば、それなりの対価を得ることができるでしょう。そうすればあなたはここで遊ぶ為のお金を稼げるし、僕も日銭を稼げる。悪い話じゃないと思いますが」
「へえ……それはいいわね。でも、ここで勝手にそんなことしていいわけ?」
 女は関心を示しつつも、すぐには乗ってこない。しかしその辺はロレンスも織り込み済みであった。
「このカジノは国営です。何かをするには国の承諾が必要ですが、ご存じのとおり、今は王女殿下の結婚式が行われていて、国全体がお祭り騒ぎ。城内や式場の警備こそ厳重ですが、出来るだけ多くの人に集まってもらいたいのも本音。承諾は簡単に取れると思いますよ。城下町では今までになく露店の出店ラッシュも続いている。それが証拠ですよ。もちろん、そういう手続は僕が全てやります。僕はここの住民、まずハネられない。さぁ、いかがですか?」
「なるほどね。……でも1つ確認したいことがある。すごく大事なこと」
 女はこれまでになく眼光鋭い、真剣な表情を見せた。
「それは、あんたの音楽とあたしの踊りがマッチするかってことね。合わなければ、いくら他の条件が整っても無理。あたし、これでも踊りに関しては物凄くこだわりがあるのよ」
「たしかにそれは大事なことですね。じゃあ一度合わせてみましょう。城下町から少し外れた空地なら人通りも少ない。そこで試してみましょうか」
 ロレンスは爽やかな笑顔で町の外を指差した。
「いいけど、町の外じゃ魔物が出るんじゃない? あんたみたいなヤサ男じゃ手に負えないかもしれないわよ」
 女は意地悪な笑みを浮かべてそう言ったが、ロレンスは微塵も笑顔を崩さない。
「心配には及びませんよ。僕はこう見えて副業で傭兵もやってるくらいですからね」
「その出で立ちで? それはオドロキ」
 女は思わず肩をすくめた。


 カジノを後にして、2人は町の外れの空地へやって来た。昼夜問わず魔物が出没するようになり久しいが、幸い、今この場所では魔物の気配は感じられない。
「で、どんな曲を演奏してくれるのかしら?」
 女はウォーミングアップしながらロレンスに問うた。
「どのような曲がお好みで?」
「へえ、即興で作るってやつ? じゃあね、カジノで負けた虚しさの中にも次は勝つという情熱を秘めた曲がいいわね」
 女はニヤリと笑いながら少し意地の悪いリクエストをしたが、ロレンスは涼しい顔で頷き、手にした竪琴を弾きはじめた。
 その演奏ぶりに女は目を見張った。色白の細い指を流れるように動かし音を奏でる。哀愁の中にも力強さが垣間見えるような音色。女はしばしその音色を聴き入った。
「さあ、あなたも踊ってくださいよ。相性を確かめるんでしょう?」
 ロレンスの言葉に我に返り、女も踊り始めた。その表情から気の強さは消え、悲しみを帯びた表情。かと思えば瞳に力強さを湛え、勇ましい表情も見せる。指の先から足の先まで体中に感情を込めて、虚しさ、悲しさ、情熱に満ちた力強さを余すことなく表現した。音楽と踊りが見事に絡まりあい、2つは1つの芸術へと昇華した。
「おお! さすがです。素晴らしいダンスです……」
「いや、あんたの演奏も凄いよ。メチャクチャ気持ちよく踊れる!」
 2人して感嘆の声をあげ、
「これならいける!」
 声を揃えた。
「そういえばあたしたち、コンビを組むのにまだお互い名前すら知らないね。あたしはマーニャ。モンバーバラでずっと舞台に立っていた踊り子さ。まあワケありで今はココにいるわけだけどね。どうぞよろしく」
「マーニャさんですか。僕はロレンスと言います。一応詩人なんですけど、もっぱら音楽で食ってるってとこですね。たまに傭兵として洞窟に潜ったりもしてますけど」
 互いに自己紹介し、握手を交わしたのだった。

「では僕はお城へ行き、許可をとってきます」
「せっかくだからあたしも行くよ」
 2人は空き地を後にして、城へと向かった。
「これで自分で遊ぶお金を自分で稼げるようになりそうで、良かったよ」
 マーニャは頭の後ろで手を組みながら言った。
「今まではどうやってお金を工面していたんですか?」
「妹の稼ぎを持ち出してたの」
 あっけらかんとしたマーニャの答えにロレンスはさすがに驚きの表情をみせる。
「妹さんは、何をされているのですか?」
「教会で手伝いしてる。あの子、治療術の心得があるんだ。あと最近お店を始めたみたい。あんたさっき言ってたじゃない? 露店の出店ラッシュが続いているって。そのラッシュに乗っかったんだよ。知らないかな、占いの店なんだけど。あの子の占いはよく当たるのよ。元々治療よりソッチが本職だから」
 ――占いの店だって? てことは、スコットの?

 ロレンスは腐れ縁の傭兵仲間のことを思い出した。

 −つづく−

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2014年11月30日
「ようよう、お嬢さん。俺たちに無断でここで商売を始めようってのかい? そいつぁいただけねえなぁ。だったらちゃんとショバ代を払ってもらわねえとな」
「……ショバ代?」

 これは、ロレンスとマーニャが組むようになる少し前の話。
 ボンモール王子・リックとエンドール王女・モニカの結婚式も始まり、エンドールの城下町は連日多くの人々で賑わい、普段以上に活気付いていた。そんな城下町の一角、西部に位置する教会の脇で、日に焼けた赤茶の髪を短く刈った頑強な男数人、紫の髪を腰まで伸ばした華奢な女一人、ただならぬ空気が流れていた。
「私は無断で商売を始めるわけではありません。お城の方にはちゃんとお話をして、出店許可を得ています。そしてここは教会の敷地の一部。つまり国で管理している土地で、国に賃借料を支払った上での出店です。教会は勿論、周辺の店舗への挨拶も済ませています。なのにそれ以上、誰の承諾が必要だというのですか?」
 脅しを利かせて言い寄る男たちに怯むことなく、女は至極冷静にそう答えた。整った顔を少しも崩すことなく、切れ長の目に冷たく光る瞳を宿す。脅しに屈しないその態度は男たちをますますいきり立たせる。
「人が大人しく接していればお高くとまりやがって。どうやら少々痛い目に遭わないと分かってもらえねえみたいだな。いっとくが、女だからって容赦はしねえぜ」
 男たちはニタニタと笑い、乱杭歯をむき出しにする。胸の前で手をバキバキ鳴らし始めたが、女はなおも顔色1つ変えることなく男たちを見ていた。

 ――まったく、この手の輩はどこにでもいるのね。この程度の相手ならモーニングスターひと振りで追い払えそうだけど、ここへやって来て早々騒動を起こすわけにもいかないわ。半ば故郷から逃げるようにしてやって来たのだから……。
 さてどうしよう。ラリホーで眠らせて、紐で縛ってこっそりと川に流してしまおうかしら。そうすればもう、二度と言いがかりをつけてくる事もないわね。

 そんな恐ろしいことを考えながら女は長い袖に潜めた左手でこっそり印を切りはじめた。
 そのとき。
「おい貴様ら、大の男数人で女性一人を脅しにかかるとは、男の風上にもおけないな」
 青銅の鎧に身を包み、腰に一振りの剣を提げた三十路前後の頑強な男が彼らの前に現れた。
「て、てめえは……用心棒のスコット」
「こちらの女性の言うとおり、貴様らが場所代を取る道理はないはずだ。さっさと消えろ。拒むのなら俺が相手をするぞ。この真新しい鋼鉄の剣が、ちょうど血を欲しているところなのだ」
 スコットと呼ばれた男はニヤリと笑うと、剣の柄に手をかけた。
「……く、くそっ。野郎ども、今日のところは引き上げだ!」
 ボス格の男は歯軋りをし、仲間と共に走ってその場を去って行った。

「お嬢さん、大丈夫でしたか? とんだ災難でしたね」
 スコットは表情を緩め、女に声をかけた。女は礼を述べ丁寧に頭を下げた。
「奴らはここらでは有名なゴロツキどもだ。面倒事は御免だと、カネを支払う者も少なくないようだが、貴方は若い女性でありながら勇気がある」
「そんなことはありません。ただ私は、楽してお金を得ようとする行為が嫌いなのです。だからああいう奴らの言いなりにはなりたくないのです」
 女は実に生真面目な顔で答えた。
 これはまた随分とお堅そうな女だとスコットは心の中で呟いた。

「……でも、奴らはきっと、これからもしつこくやって来ますよね」
 そう口にしながら、女は考える。商売をするうえで、あんな厳つい男たちにしょっちゅう来られては明らかに迷惑。既に祖国でお尋ね者になっているであろうこの身では、下手に騒ぎも起こせない。でも場所代だけは意地でも払いたくない。お金が惜しいのではなく、あんな男たちには絶対に屈したくないから。
 殊更険しい表情を見せる女に、スコットはふと商機を見出した。
「もし不安なら、俺を雇わぬか?」
 女は怪訝な表情を浮かべた。
「申し遅れたが、俺は用心棒のスコット。洞窟探検のサポートから店の見張りまで幅広く手がけている。洞窟探検のお供だったら出張費も込みで5日400Gを頂いているが、町の中での仕事ならば5日300Gで結構。いかがかな?」
 たしかに用心棒を雇えば、自分は仕事に集中出来る。5日300G程度の支払いなら、地代を合わせても利益をそこそこ上げられるはずだから、金銭的には問題はない。でも……。
 女はスコットの顔をジッと見た。ゴロツキがやって来て、その直後にこの男がやって来た。あまりにタイミングが良すぎる。ゴロツキとこの男が、もしグルだとしたら……。
「もしかして、俺が奴らとグルだと思っているのかな?」
 女の心の中を見透かしたかのようにスコットは言った。女は表情を変えることもなく、ただ黙っていた。
「まあ、このタイミングでは疑われても無理もないが、俺は自分の仕事にプライドを持っている。俺も濡れ手で粟というのは嫌いなんだ。だから断じて奴らとは組んでいない。何なら、この命を賭けても良い」
 スコットもまた真剣な眼差しで女を見たが、女の方は目を閉じると、一つ大きく息を吐き、
「そうですね。5日300Gでは数人で山分けなんて出来ないし、何よりその瞳は嘘をついている瞳ではないですもの……。疑ったりして申し訳ございません」
 頭を深々と下げた。
「あいつらが近づかないように見張ってくださるのなら、私も自分の仕事に集中できます。それでは用心棒をお願いできますか?」
「ああ、ありがとう。お任せください。あなたの用心棒となったからには、怪しい奴は一歩たりとも近づけないと約束いたしましょう。
 ところで、お名前を教えていただいて良いかな? 貴方は俺の雇い主となる方ですからね」
 そう言われ、女はハッとする。
「大変失礼しました。私はミネアと申します。占い師をしております」
「そうか、貴方は占い師なのか。ということは、ここでは占いの店を?」
「はい」
 ミネアと名乗った女は硬かった表情をようやく緩め、にっこりと微笑んだ。


 その日の晩、スコットは宿屋1階の酒場で1人酒を飲んでいた。そんなスコットのそばに男が1人寄ってきた。長髪の優男。腕には大切そうに竪琴を抱えている。詩人のような風情の男……ロレンスだった。
「やあスコット、聞きましたよ。新しいクライアントが見つかったそうですね」
「なんだロレンス、もうかぎ付けてきたのか」
 ロレンスはスコットの隣りに腰掛け、コーミズ産の葡萄酒をオーダーした。
「まあ、城下町で店の見張りだ。それほど面白味はないがな」
「でも、仕事が入るだけ良いじゃないですか。僕なんて傭兵の仕事の方はトルネコさん以来、サッパリ」
「お前は別の稼ぎ口があるじゃないか。トルネコの旦那からたんまりと詩の仕事をもらったのだろう?」
「たんまりと言っても、限度というものが……。結婚式は続いても、僕の仕事はそこまで続きません」
「ふん、もし用心棒をやりたいならもっとちゃんと営業活動しろよ。1日宿屋の2階にいて仕事が入ってくるわけがない」
 図星を突かれ、ロレンスは思わず苦笑いを浮かべた。
「クライアントは若い女性みたいじゃないですか。いいなぁ」
「占い師だそうだ。まあ俺としては報酬さえ貰えれば雇い主が男だろうが女だろうが、若かろうが年寄りだろうが関係ないがな」
「ははは、あなたらしい、つれないセリフだ」
 ロレンスは肩をすくめながら笑い、やって来た酒に口をつけた。
「ところでスコットさん、ロレンスさん、知ってますか?」
 つまみの炒った木の実を器に盛りながら、マスターが話しかけた。
「最近地下のカジノに、それはそれは艶かしい格好をした女性が入り浸っているという話を」
 スコットもロレンスも首を横に振る。
「その艶かしい女性、マスターは見たことあるんですか?」
「いや、今日の日中行ってみたんですけど、生憎いませんでしたよ。明日また行ってみようかと思ってるんですけどね」
「へぇ、詩吟の仕事もひと段落ついたし、僕も行ってみようかな。スコットは?」
「俺は明日から早速仕事だよ。店は午後から夜半にかけての営業だそうだ。暫くここでの酒もお預けさ。お前はいいな。その気になればここだろうとカジノだろうと一日中入り浸れる」
「凄いイヤミだなぁ」
 マスターを交え、3人で大笑いした。


 翌日の昼前、スコットは約束の時間より少し早くにミネアの店を訪ねた。開店前の露店に掲げられた看板に、スコットは驚くことになる。

 料金 1回10G

 ――1回10Gだと? 安すぎるだろう。俺の報酬の分を賄うだけで最低6人。地代も払うとか言っていたから、さらに相手をしないと利益は上がらないぞ。それぐらい相手に出来るという自信があるのか? いや、腕に自信があるのなら、むしろ価格は強気に設定するはずだ。一体何を考えているんだ……。
 看板を睨みながら考え込んでいると、背後からミネアがやって来て挨拶をしてきた。スコットは普通の表情に戻し、挨拶を返した。
「ミネアさん。随分と良心的な金額設定なんですね」
「そうですか? 以前からずっとこの値段なので」
 ほう、以前もどこかで店を持っていたのか。まあ、とにかくは様子を見ればよいか。報酬を貰えないのなら契約を解除するまでの話だ。
「では俺は店の営業中、不審な輩が近づかないようにさり気なく見張っていよう」
「はい、よろしくお願い致しますね」

 こうしてミネアの店の営業が始まった。最初の頃はまばらだった客も、手頃な値段が手伝ってか、夕方を迎える頃にはそこそこの順番待ちができるようになった。スコットはときには周辺をぷらぷらと歩き、ときには木立に寄りかかりながら、店に不審な輩が近づかないか、さり気なく見張っていた。

 すっかり夜も更けた頃、ようやく初日の営業が終わった。終わってみればかれこれ20人近くの客がやって来たことになる。
 ミネアはスコットのもとへ行き、労をねぎらった。
「長時間どうもお疲れ様でした。不審な奴らは来ませんでしたか?」
「通りかかったことは通りかかったが、俺の姿を見るなり去っていったよ」
「そうでしたか。ありがとうございます。おかげで仕事に集中できて助かります」
「もう夜も遅い。差し支えなければお住まいの近くまで送ろう」
 スコットの申し出にミネアは笑顔で首を横に振った。
「実は私、今教会の方に住まわせていただいているのです」
 なるほど、だからこの店も教会の敷地で開いているのか。教会に間借りしているのなら送る必要もない――スコットはその場から立ち去ろうとしたが、
「スコットさん、遅くなりましたが夕食を召し上がっていきませんか?」
 食事は教会で用意するとのことだった。ミネアがスコットの話をしたところ、2人分用意することになったのである。食費が浮けば自由に使える金も増えることになる。スコットは厚意に甘えることにした。

 教会での遅い夕食を終えて家路につき、翌朝。
 スコットは再び教会へやって来た。ミネアに会いに来たわけではない。彼は週に1回、教会に礼拝する習慣があったからである。外ではシスターが掃除をしていたため、スコットは昨晩の礼を述べ、教会へと入っていった。中には神父とミネアの姿があった。スコットに気付いたミネアが笑顔で挨拶をしてきたので、ミネアも礼拝なのかと尋ねると、
「午前中はこちらで神父様のお手伝いをしているのです。私も多少なら治療術の心得がありますので」
「早朝は意外と体調を崩された方が多く訪れて慌しいのですよ。だから教会としては大助かりなのです」
 神父はいつもどおりの愛想の良さでそう話した。

 ――ああ、つまり前日に飲み過ぎた奴らが来るわけか……。しかし午前中、しかも今の神父の話によれば早朝から教会で働き、午後から夜遅くまで占いの店。随分長時間働くものだ。そんなに稼いでどうするつもりなのか。
 そんなことを考えながら礼拝を済ませ、外へ出た。シスターはまだ掃除をしている。スコットはシスターに近寄り、さり気なく尋ねてみた。
「ミネアさんは随分と働き者ですね」
 その言葉に、シスターはわずかに表情を曇らせた。
「彼女は……最初はエンドールで占いの仕事をするつもりはなかったようなのです。ですから、暫くはこちらで神父様のお手伝いしかされていませんでした」
 シスターはきょろきょろと辺りを見回し、小声で続けた。
「これは内緒にして欲しいのですが、ミネアさんにはお姉さんがいるのです。故郷では踊り子をされていたようなのですが、こちらにやって来てからカジノにハマってしまったみたいで……。で、カジノのためにミネアさんのお金を持ち出してしまったのです。教会から出るお礼の額はそれほど多くもないので、それで恐らく占いのお店を出さざるを得なかったのではないかと」
 スコットは唖然として返す言葉が見つからなかった。同時に、先日の酒場でのマスターの言葉を思い出す。

『ところでスコットさん、ロレンスさん、知ってますか? 最近地下のカジノに、それはそれは艶かしい格好をした女性が入り浸っているという話を』

 ――艶かしい女というのが、彼女の姉なのか?

 −つづく−

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2014年12月05日
 マーニャとロレンスによるステージの評判は瞬く間に街中に広がった。カジノに舞い降りた女神の踊りを一目見ようとカジノは連日の人だかり、普段遊技に興味を示さない者までもがカジノを訪れるようになったのだ。
 ステージにはたくさんの歓声と、そしてゴールドが煌びやかに乱舞した。それはまさに、マーニャたちの思い描いていた展開であった。
「ヤッホゥ! これなら好きなだけスロットを回せるわ!」
「マーニャ、ほどほどにしないとダメですよ」
「あははっ、分かってるって」

 そんなマーニャたちの噂は、もちろんスコットの耳にも入っていた。但し、彼女達がステージに立つ時間帯はちょうど仕事の時間帯と重なるため、自分の目で確かめたことはなかった。ミネアの占いの店も今や当たると評判、大盛況なのだ。
 スコットの耳に入っている、当然ミネアの耳にも入っているであろう。ところが、ミネアはそのことに一切触れることはなかった。ただ、何故かその表情が曇りがちであることはスコットの目にも明らかだった。
 何かあったのかと尋ねるも、ミネアは作ったような笑顔で首を横に振るだけだった。しかし察しがついているスコットはすぐには引き下がらなかった。
「あなたはいつも夜遅くまで働き、朝も早くから教会で働いている。身体に障っているのではないか?」
「いいえ、それは違います。こういうのは慣れていますから……」
 スコットの問いかけに否定しつつも、ミネアは一つ息をつく。
「実は……私には姉がいるのですが、最近全然教会へ戻ってこないのです」
 その口から初めて姉という言葉が出てきたのだ。
「お姉さんというのは、もしかしてカジノの……」
 ミネアは黙って頷いた。
「この時間ならまだステージをやっているはずだ。それならば今日はこの辺で切り上げて、様子を見に行ってみてはどうか?」
 スコットが助言するが、ミネアは無言でうつむいていた。暫くの間沈黙が続き、ようやく、ミネアは重い口を開いた。
「私、カジノに行くのが怖いのです」
 消え入るようなミネアの言葉にスコットは眉をひそめた。がたいの良いゴロツキたちに怯むことなく対応する度胸がありながら、カジノが怖い?
「その、怖いというか、人の多いところが凄く苦手で……」
「こんな繁華街で店を出しているのに、人が多いところが苦手なのか?」
「仕事中は集中しているので良いのです。でもそうでないときは息が詰まりそうで……だからむしろ長い時間働いていた方が気が楽なのです」
 ミネアはため息をついた。
 出会ってから今日まで、何事もソツなくこなし、それが却って堅苦しいとすら思わせていたミネアにもそんな一面があるのかと、スコットは思わず心の中でフッと笑った。
「ならば俺が一緒に行けば良いことだ。俺は今、あなたの用心棒なのだから。あなたが一人では心許なければ、その不安を解消するのが俺の仕事。もちろん、行く行かないを決めるのはあなただが」
 そう伝えた途端、ミネアの表情がぱぁっと明るくなった。
「良いのですか?」
「ああ、もちろん」
 スコットは笑顔で頷いた。

   ◇◇◇

 カジノの奥の方には人だかりが出来ていた。スコットは過去に何度かカジノに足を運んだことがあったが、こんなにも人でごった返している光景は初めてであった。
 といっても、各遊技施設はそれほど混雑しているわけではない。混雑しているのは言うまでもなく特設ステージ近辺であった。カジノの常連客から普段カジノに縁がない者までがステージの見える場所に群がり、カジノの入口からはステージの様子が見えない程の人の壁である。その人壁の上がやけにきらきらと輝いている。特別な照明かとも思えたが、光のもとは宙を舞うゴールドやカジノのコインだった。
「凄まじい盛況ぶりだな……」
 スコットは唖然としつつ呟いた。隣りのミネアは口を固く結んで無言だった。どことなく緊張の色も見える。
 大丈夫かと声をかけられ、ようやくぎこちなく表情を崩すほどだった。
 ステージに向かって歩いていくと、歓声に混じって竪琴の音色が耳に入ってきた。
「あれはロレンスの竪琴か。面白い縁だな。あなたのお姉さんと組んでいるのは俺の商売仲間のようだ。まあ、俺は専業、あいつは兼業で、今やってるアレが本職みたいなものだが」
 いくらステージに近づいても、人だらけで肝心のステージ上の人物を見ることは出来ない。
「さすがに割り込むのはマズいかな」
 ミネアも頷いた次の瞬間、ステージから声が上がった。
「みなさーん! 今夜も来てくれてありがとね。今日もあっという間に最後の一曲になりました。いつものアレ、いくわよ!」
 それはマーニャの声であった。そして、その声に覆いかぶさるような大歓声。
「待ってました! 勝利の踊りだー!」
「こいつを見れば、今夜は大勝利間違いねぇ!」

 ――あぁ、きっとそうやって、毎日毎日根拠のない縁起を担いで、大金をみんなカジノで消してしまうのね。
 ミネアは深く溜息をついた。

「どうやら次でステージも終わるようですから、終わってから姉のもとへ行ってみます」
「それが良さそうだ」
 2人は熱狂渦巻くステージ一帯から少し離れた場所に立ち、終了を待つことにした。

 ステージが終わると観客はあっという間に散り散りになった。ロレンスとマーニャが楽屋へ入っていくのを確認し、ミネアたちも楽屋へと向かう。ドアをノックすると中からロレンスと思われる男の声が聞こえてきた。
「すみませんね、関係者以外立ち入り禁止なんです」
「俺だよ、スコットだよ」
 スコットが答えると、すぐにドアが開いた。久々に会った友を笑顔で迎え、斜め後ろの女性に驚きの表情を見せた。
「もしかして、マーニャの妹さん? うわ、やっぱ似てるなぁ」
 そんなロレンスの声が聞こえてか奥にいたマーニャもすぐにやって来て、久々に会った妹におどけた表情を見せた。
「これは驚きだわ。まさかあんたがカジノに来るなんて」
 相変わらずあっけらかんとしているマーニャに、ミネアは眉根を寄せつつ詰め寄った。
「驚きだわ、じゃないわよ! 一体どういうつもりなの、全然教会にも戻ってこないで」
「教会はあたしには居心地が悪い。今は自分で稼いで、宿屋に泊まってるの。でもさ、あんたを見て、あたしゃ安心したよ」
 マーニャの物言いにミネアはさらに眉をひそめた。
「あたしのいない間に、あんたもそうやってしっかりと男をつくったんだからね。正直ホッとしたわ」
 マーニャはニヤリと笑った。
「お、男をつくったって……違う、彼は、スコットさんは私の店で用心棒をしてくださっている方なのよ。そんなこと言ったらスコットさんに迷惑でしょ!」
 スコットには斜め前にいるミネアの表情はよく見えなかったが、流れるような髪からちらりと覗かせる耳が真っ赤だったことに気付いた。普段の冷静沈着な振る舞いとはまるで違っていた。
「えー? なんだ、ただの用心棒なの? つまんないのー。……まあ、確かにちょっとトシが離れすぎかなとは思ったんだけどさ。
 でもね、言っとくけど、あたしは別に金稼ぎのためだけにこのステージをやってるわけじゃない。人が集まってくれた方が捜している奴の手がかりを見つけやすいだろう?」
 マーニャが真顔になってそう言った途端、ガチガチに強張っていたミネアの肩の力が抜けた。
「え? そうだったの?! ……で、見つかった?」
「いんや、今んとこ見つかってない」
「……真面目に探してるのよね?」
 ミネアは半信半疑といった表情でじっとマーニャを見ていた。
「疑り深い子だねぇ。あんたよりちょっと若い子でしょ? ココの客層とは結構ズレてるから見ればすぐ分かるわよ。でも今のところそういう子は見てないわ」
「マーニャ、踊りながらお客さんの把握までしていたのかい? すごいなぁ」
「あったりまえでしょ! あたしゃプロなんだから」
 どんなに楽しそうに、情熱的に踊っても、心の中にはちゃんと冷静な部分を持つ。それがプロの踊り子……マーニャが常々口にしていたことを思い出した。姉の踊り子としての誇りをミネアは即座に感じ取った。
「ごめん……分かった。とりあえず元気そうだし安心したわ。でも、たまには教会にも顔を出してよ。姉さんにとって教会の居心地が悪い以上に、私にとってはこの場所がたまらなく苦手なんだから」
「分かったよ、たまには行くから。だからあんたは無理してココに来なくていいわよ」
 マーニャはミネアの肩をぽんぽんと叩いて、いつになく優しい笑顔を浮かべた。ミネアも照れくさそうにはにかんだ。
 そうして姉妹は別れた。男2人も軽く挨拶を交わし、スコットはミネアとともに楽屋を去った。
「マーニャが踊るのは人を捜すためでもあったんだ。初耳だったなぁ」
「そうよ。でも九割方はお金稼ぎ目的だけどね。コレはミネアには黙っててよ」
 ロレンスは苦笑いした。

   ◇◇◇

 ミネアたちはカジノを出た。カジノの上の階は宿屋のロビーと酒場があり、やはり多くの人で賑わっている。
「スコットさん、どうもありがとうございました。お店の用心棒というお約束なのに、カジノにまで……ご迷惑をおかけしてごめんなさい」
「そんなの気にすることないですよ。俺は全然迷惑じゃない。ついでに、あなた方がさっき言っていたことも、全然、迷惑じゃない。むしろ光栄なくらいだ」
 スコットは屈託なく笑った。ミネアは思わず顔を赤くして、スコットを見た。
「……ごめんなさい。姉は私のことをからかってばかりなので」
「お姉さんにとって、あなたはとても可愛い妹なのでしょう。俺に妹はいないが、もしあなたのような妹がいたらと考えれば、お姉さんの気持ちはよく分かる」
 いたずらっぽく笑ってそう話すと、ミネアはさらに顔を赤くした。
「スコットさんは、意外とお上手なんですね……」
「そんなことはないさ。……さて、もう夜も遅いし、教会まで送っていきましょう」
 ミネアははにかみながら頷いた。
 こうして2人は星空のもと、教会へと歩いていった。

 −つづく−

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