DQ4プレー記・ただ今のお題
<掃き溜めに鶴>

ルール
・4章はミネア(とオーリン)だけで進める
・5章、船取得までは勇者、ミネアのみで進める
・5章、船取得以降、トルネコ、ライアン、ブライ、ミネアで進める
・キングレオ戦、天空への塔のみ勇者使用可
・勇者は馬車内での生存状態可。アリーナ、クリフト、マーニャは棺桶
・ガーデンブルグでの棺桶人質可
・838861、8逃げ、透明気球等の裏ワザ禁止
・種や木の実類は使い切る


過去のプレー記(プレー記案内はこちら
[記念の二部作]
[01]20周年記念 [10]25周年記念
[女性勇者二部作]
[02]装備品 買わない盗まない [09]いろいろやりすぎ
[三人旅三部作]
[03]水戸黄門 [04]腹でん!(パラディン)と美人姉妹 [05]まどろみ無双
[柔剛柔の三部作]
[06]クレバーカルテット [07]益荒男四人衆 [08]クレバーカルテットDS
[勇者役トルネコの二部作](の予定)
[11]百花繚乱 [12]進行中


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2014年02月11日

祝! DQ4 発売24周年
 2月11日はファミコンソフト・ドラゴンクエスト4の発売日です。1990年発売なので今年で24周年です。十二支を2周しました。来年で発売四半世紀、25周年を迎えます。時がたつのは早い!

 スマホ版ドラクエ、第三弾は4ということですがやっぱりリメイク版の移植……ですよね?? ついでにファミコン版も実装してくれればスマホ導入を考えちゃうかも?

 今年もオーケストラコンサートはバッチリ開催!(スギヤマ工房主催ではありませんが)
 東京シティ・フィル主催公演がすでに1月に2度開催された他に、3月にも長野であります。さらに今週末15日には南大沢(東京八王子)で市民オーケストラによるコンサートも開催されます!

 野猿フィルハーモニー管弦楽団 〜春のコンサート2014〜
 http://yaen-phil.blogspot.jp/

 楽しみは尽きないです!


 さて、すっかり放置状態のプレー記ですが、いい加減次回予告に行きます!

   ◇◇◇

プレー記次回予告[09]

 俺は用心棒スコット。エンドールではちょっとばかり名の知れた傭兵だ。
 ……って、アレ? また俺が予告担当? いいかげん予告よりも本編で活躍したいのだが……。

「スコット、嘆いている場合ではないですよ」

 ん? おまえは相変わらず営業努力ゼロの商売敵ロレンス!

「余計なお世話です。僕の本業は詩吟ですかラララ〜。そんなことより、今回はついに僕たちも(少しだけ)出番がある(かもしれない)のです!」

 おい、本当か? カッコの中身が若干気になるが、ついに俺もあの檜舞台に立てるってわけか!

「それだけじゃありません。僕たち同様いまいち出番に恵まれていなかったオーリンさんや、あっと言う間に出番の終わったルーシアさんも(多少)出番がある(と思われる)のです!
 そしてなにより今回は、2回目のプレー記でしか出番がなかった女性勇者の登場です! 棺桶ではないですよ。まさに影薄たちのオンパレード!」

 おおお! 俺もピチピチの天女&勇者と旅が出来るというのか?!

「いや、さすがにそれは無理です。僕たちは(おなかが)ピチピチのトルネコさんとしか旅できませんから」

 ちっ、分かってるよ。言ってみただけだよ。
 で、その俺たちが活躍するプレー記のタイトルはなんだ?

「ズバリ『いろいろやりすぎ』です。開始時期は未定です。なんせこの予告自体、無理やりDQ4発売24周年の今日に合わせただけですから」

 なんだよそりゃ……。それはともかくDQ4ももう24歳か……俺にもそんな時代があったなぁ。

「僕にはまだ未知の世界ですがね」

 え? おまえ、むかし隠密だった(「知られざる世界」より)わりには若いんだな。

 ◇◇◇

 スコットは30過ぎというイメージですが、ロレンスは何歳ぐらいですかね??

 それはさておき、久々のファミコン版プレー記は3章からスタートの予定です。詳しい中身は開始時に書きます。もう少し先のスタートになりますがまたどうぞよろしくお願いします!

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2014年09月06日
 今日もまた、いつもと同じ朝が来た。いつもと同じ、つまらない1日が始まる。
 ……と、ついさっきまでそう思っていた。
 いつもどおり宿での朝食を済ませ、部屋へ戻る。仕事のないいつもの1日。
 ふと、このまえ起きた事を思い出した。僕は詩人だから即興で詩をつくることができる。まだこの城で武術大会が開かれていた頃、サントハイムの王女とその一行に会ったことがあった。王女をひと目見て、ひらめくがままに歌った。

「右手に鉄の爪、ラララ……」

 ――王女は見事優勝を飾る。

 あれから何日経ったのか、毎日が休日なのでよく覚えていない。そろそろ手持ちも尽きてきた。この宿からもいよいよ出るようかな……などと考えながら、窓の外をふと覗いた。相変わらず賑やかな城下町に、よく知っている長身でがっしりした体格の男の姿。年季の入った青銅の鎧を身につけ、背中には同じく年季の入った鉄の槍を背負っていた。年季は入っているがくたびれてはいない。手入れの行き届いた武器と防具。それらを身につけ歩く男は、傭兵としての僕の同業者・スコットだった。
 そしてスコットのそばには口ひげをたくわえた恰幅の良い男性も歩いている。見た感じ商売人だろうか? ということは、スコットの新しいクライアントかもしれない。
 彼は腕のいい傭兵であるにも関わらず、5日で400ゴールドという安い報酬で傭兵業を営んでいる。彼曰く「最低限生活できる金があればそれでいい」のだそうだ。もっとも、最後にこう付け加えるのだけど。「時々おまえからも貰えるしな」

 2人がどこへ向かうのかをぼうっと眺めていると、彼らはこの宿屋が入っている建物へと入った。もしかして、スコットは僕のことを紹介してくれるのだろうか。だとしたら非常に助かる。まあ、いくらか紹介料は払うようだろうけど。恩を受ければ見返りを差し出す。それは僕たち用心棒仲間の掟でもあるから。

「よう、ロレンス。ろくに営業もしないで、相変わらず暇そうだな」
 相変わらずの酷い挨拶だった。むしろ彼の口癖といってもいいかもしれない。
 ――そう、僕の名はロレンス。詩人兼用心棒。どちらが本業なのかは微妙なところだけど、自分では詩人が本業だと思っている。だから自分から進んで傭兵の営業活動はしない。それでもたまにスコットの紹介で仕事にありつけることもある。
「おはよう、スコット」
 スコットには簡単に挨拶を済ませ、隣りの男性に顔を向ける。一応営業スマイルで。
「おはようございます。僕はロレンスといいます。以後お見知りおきを」
「はじめまして、ワタシはトルネコといいます。現在は雇われ武器屋といったところですかな」
 人の良さそうな笑顔だった。やはり商売人のようだ。でも雇われの身ということはお金はそれほど持っていないだろうと、下世話な推測を立ててみる。
「こいつはこんな見てくれですが、なかなか優秀な用心棒なんですよ」
 トルネコさんは「ほう」と言いながら、ふくよかなあごをさすっていた。
「僕は詩人ですが、修行を積み魔法も使えるようになりました。どうでしょう、5日600ゴールドで雇ってはみませんか?」
「ほほう、スコットさんより200ゴールド高いんですなぁ」
 スコットが連れてくるクライアントは必ずそう言うから、もう慣れている。
「一度に複数の敵を攻撃できるギラの魔法や、傷を回復するホイミの魔法も使えます。報酬に見合った働きを保証しましょう」
「ホイミを使えるんですか。それなら薬草を持ち歩かなくても済みますね。職業柄、荷物ががさばるもんで。じゃあお願いしましょうかな」
 トルネコさんはそう言うと、なめし革の財布から600ゴールドを取り出した。どうやら商談成立のようだ。傍らのスコットもニヤリと笑った。

 こうして僕はしばし、雇われ武器商人のトルネコさんに雇われる身となった。雇われの人に雇われたことなど初めてかもしれない。
 トルネコさんは自分のお店を持つことが差し当たっての目標とのことだった。そのために、雇われ武器屋での仕事もほどほどに、資金集めの旅に出たそうだ。しかもそのことは奥さんと子どもには内緒にしているらしい。驚きの無茶ぶりである。奥さんにバレないところがまた凄いというか……。
 資金集めの最中にエンドールとボンモールで勃発しそうだった戦争を回避させ、さらにボンモールのリック王子とエンドールのモニカ王女の縁結びまでしてしまったらしい。このエンドールで店を持つ前から王様に好かれてしまっているとは、とてもただの雇われ武器屋とは思えない。よほど世渡りが上手なのだろう。
「はっはっは、そんなことはないですよ。なんせワタシはこのトシにしていまだに非正規労働者ですからな」
「その活躍ぶりでは非正規労働者というよりむしろフリーランスと呼ぶ方がふさわしいかもしれないな」
「フリーランスですか、良い響きですな。そういえばスコットさんもフリーランスじゃないですか。槍使いだけにフリーランス! ……ぷぷぷっ」
「ははは、旦那、なかなかウマいことを言うな」
 ……若い僕にはオヤジギャグにはついていけない。普通にウケているスコットももう、オヤジに片足を突っ込んでいるようだ。
「それはさておき、店を持つにはどのくらいの金額が必要なのか?」
「1軒、35,000ゴールドで売ってくれるという物件がありましたな。それを狙っているところです」
 さすがに店を買い取るとなると途方もない金額だ。
「で、今現在いくら持ってるんですか?」
 人の懐を探るのもいささか野暮だろうとは思いつつ、尋ねてみた。
「4ゴールドです」
 トルネコさんはにっこり笑って答えた。それに対し、僕とスコットは思わず顔を見合わせてしまった。
「お金は4ゴールド。でも今、後ろに鎖かたびら2着、うろこの盾が1つ、ああ、あと、キツネからもらった鋼鉄の鎧もあったかな。武器屋のはずが、これでは防具屋ですな」
「ああ、それだけ防具を持っているのなら、売れば金にはなるな」
 スコットは苦笑いしながら言った。
「そう、売ればお金になるんです。今、ボンモールでは防具不足でしてね。交渉次第ではビックリするほど高く売れるんですよ」
 エンドールに戦争を仕掛けようとしていたのが原因なのだろうか。そんな事情も知らず、この街はいつも賑やかで、まるで戦争とは無縁な世界だ。もしトルネコさんが行動を起こしていなかったらと考えると、恐ろしいばかりである。僕はもしかしたらすごい人に雇われているのかもしれない。
「というわけで、あなた方を雇って4ゴールドしか持っていない今、キメラの翼すら買えません。ボンモールへは歩いていきますから、護衛をお願いします」
「よし、分かった!」
 僕もスコットも力強く頷いた。
 トルネコさんはボンモールで売る予定であろう鎖かたびらを1着取り出し、身につけだした。目の細かいはずの鎖も、恰幅の良いトルネコさんが着込むとまるでモンスター格闘場を囲むフェンスの金網のように目が粗くなる。果たしてこれで鎖かたびらとしての役割を果たすのだろうか。いや、それ以前にキツくないのだろうか。
「はっはっは、ワタシが着ると鎖かたびらも伸びてしまいそうですな。まあ、大柄な兵士向けの貴重な一品ですとでも言って、高く売りつけてしまいましょう」
 ……さすがに商魂たくましい。

 ボンモールへの道中、モンスターはほとんど姿を現さなかった。城で武術大会が開かれていた頃は結構強いモンスターが出没していたようだったが、大会が終わった途端、その姿はパタリと消えてしまった。最近になってまたポツポツと姿を現すようになったが、以前ほどの手ごわいモンスターはいないようだ。
 半日ほど歩いて、ボンモールへと到着した。ボンモールの城下町はエンドールほど広くはなく、賑わいもない。これでは観光客はそれほど見込めないかもしれない。なるほど、ボンモール王もエンドールを羨むわけだ。
「防具の買い取りというのは、どこで行っているのか?」
「城内に専門の担当者がいるのですよ。まあ、ワタシの見立てではさほど防具に詳しいようにも見えませんがね」
 スコットの問いにそう答えながら、トルネコさんは城内へと入った。
「おや、トルネコさんではないですか」
 城内の一室から出てきた若い男性が声をかけてきた。上品な顔立ちでいかにも高貴そうな雰囲気を醸し出していた。
「これはこれはリック王子。ご結婚が決まったそうで、おめでとうございます」
「これも全てあなたのおかげです。あなたには感謝してもしきれない」
「はっはっは、あなたのお手紙を受け取ったのが、たまたまワタシだったというだけですよ」
 なるほど、彼がこの国の王子、エンドールのモニカ王女の結婚相手であるリック王子か。エンドールのみならず、ボンモールの王族にも一目置かれているとは、やはりトルネコさんはただ者ではない。
「さてさて、見えてきましたよ。あの人が買い取り担当です」
 トルネコさんの目の色が変わった。商品売買の交渉ごとは僕たちの専門外。僕たちは黙ってトルネコさんを見守ることにした。

−つづく−




******

というわけで、やっと新しいプレー記を始めました。
今までスポットの当たらなかった人たちに活躍してもらうため、暫くはこの形式で進みます。退屈かもしれませんがお付き合いいただければ幸いです。
ちなみに↑は実際のプレーの流れに基づいて、脚色を交えつつ書いています。例えば「二人を雇った時点で4Gしか残ってない」あたりは実話です。

本格稼動は5章で勇者と姉妹が出会うところからになります。ルールはそのときに載せますのでしばらくお待ちください。

ちなみにプレーの方は現在4章に入ったばかりなので、更新頻度はゆっくりになると思います。年内完結が目標です。

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2014年09月09日
 ボンモール城の防具担当者と相対したトルネコさんは、背負っていた鋼鉄の鎧を静かにカウンターに置いた。
「どうです、この鋼鉄の鎧。ここらじゃ滅多に手に入らない代物ですよ。エンドールにだってありません」
「ほう、それはすごいのう。では1,940ゴールドで買い取ろうかのう」
「何を仰る! この全身を覆う鋼鉄の鎧……鉄の鎧よりはるかに価値がありますぞ! どんな攻撃だってはね返してしまいましょう」
「ほう、それはすごいのう。では2,875ゴールドで買い取ろうかのう」
「何を仰る! この全身を覆う鋼鉄の鎧。これはまさしく命を守る鎧ですぞ。命の値段に匹敵しますぞ」
「ほう、それはすごいのう。ちなみにわしの命の値段は838,861ゴールドと決めておる。じゃが、そんな大金は出せんぞ」
「分かっておりますとも。お国の事情もありましょう。どうです、4,456ゴールドでいかがでしょう」
「ほう、そんなもんでええんか。じゃあ4,456ゴールドで買い取ろう。得した気分じゃのう」
「商談成立ですな」

 なんとも微妙なやり取りで商談は成立した。トルネコさんはその後、2着の鎖かたびらとうろこの盾もアレコレと御託を並べて買い取らせていった。しめて5,618ゴールドの売り上げだ。
「スコットさん、ロレンスさん、今売った防具、普通のお店で売ったらいくらになると思いますか?」
 手に入れたお金の勘定をしつつ、トルネコさんが問いかける。僕もスコットも「さぁ……」と首をかしげた。
「2,384ゴールドにしかならないんですよ」
 トルネコさんはニヤっと笑った。
「なんと、半分以下ではないか! あの担当者は大丈夫なのか? 税金で買い取っているんだろう?」
 僕が思ったことを、スコットが代弁した。
「確かにおっしゃるとおり。ですが、お国が定めた制度なんですから、一般庶民はありがたく利用させてもらえば良いのです。この制度が存在するうちに……ね」
 トルネコさんはしれっと答える。いやはや、なんとも手軽な錬金術である。

 僕たちはキメラの翼で一瞬にしてエンドールへ戻った。
「それだけの金になったんだ。武器と防具を揃え、女神像の洞窟へ行くのだろう? 銀の女神像の方がよほど高く売れるだろう。そんな面倒な金策をする必要もなくなる」
 憮然とした表情でスコットは言った。彼にとっては防具転売による金策は気に入らない方法のようだ。良く言えば真面目、悪く言えば堅物なスコットらしい。
 でも、僕としてはトルネコさんの方法は悪くないと思っている。魔物の巣食う洞窟に潜って銀の女神像を取る。リターンは大きいかもしれないが、命のリスクも高い。いわゆるハイリスク・ハイリターン。一方の防具転売はどうだろう。あの防具買取担当を見ている限り、こっちが買った値段より高く売りつけるのは難しくない。キメラの翼でエンドールとボンモールを往復すればモンスターに遭遇する危険性もゼロ。極めてリスクが小さいわりに、それなりに儲けられる。ローリスク・ミドルリターンといったところか。スコットほど腕の立つ戦士であれば洞窟探検も悪くないけれど、トルネコさんの職業を考えれば命のリスクは低い方が良いに決まっている。
 ……でも1つ疑問がある。トルネコさんが最初から防具の転売で金策をすると決めていたとしたら、なぜ僕とスコットをわざわざ雇ったのだろうか。
「そりゃあ、ここで雇わないとあなたとスコットさんのでば……ゲフゲフ。いや、なんでも」
 何かを言おうとして、トルネコさんはあわてて口をつぐんだ。「僕とスコットのでば」って何だ??

「確かに、しばらくは洞窟に行く予定はありません。ですがワタシは伊達や酔狂であなた方を雇ったわけではありません。あなた方には防具運びを手伝ってもらおうと思ったのです。ワタシ1人では1度に持てる数も限られますが、3人いれば3倍持てますからな。転売も効率よくできるというものです」
 そう言いながら防具屋へ足を運ぶトルネコさん。しかしすぐに、世の中はそう甘くないと彼は知ることになる。

スコットはもちたくないようだ

ロレンスはもちたくないようだ

「な、なんと! 持ちたくないとは奇怪な」
「すまないな、俺は用心棒として雇われたが、その任務の中に荷物持ちは含まれていないんだ。契約書の3ページ目にも書かれている。旦那も商売人なら契約書の持つ意味が分かるだろう?」
 すまないと言いつつ、スコットの顔は微妙に笑っていた。そう、「エンドール傭兵組合様式」の契約書には確かにそういう条項が書かれている。読むのもうんざりするような細かい文字ではあるけれど。
「はっはっは! こいつは一本取られましたな。良い勉強になりましたわい! それでは荷物持ちの件は承知しました。ですが、たとえ洞窟へ行かないとしても、5日間はワタシの護衛をしてくれるんですよね?」
「ああ、それは勿論だ」
 僕も同じくうなずいた。それにしても、荷物持ちを拒否されても怒ることなくふるまうトルネコさんはなんと懐の深い人なのだろう……思わず感心してしまうほどだ。

 以後、トルネコさんは防具屋で鉄の前掛けを7着購入し、キメラの翼でボンモールへ飛び、転売。またキメラの翼を購入してエンドールへ帰るという作業を延々と続けた。1着1,500ゴールドの鉄の前掛けを1,750ゴールド以上で売却することがノルマのようだ。買取担当はまれに2,000ゴールド以上の高額で引き取る。
 いくら防具が必要だとはいえ、鉄の前掛けのみを大量に買い取るというのはどうなのだろう。しかもこの防具は元来、兵士よりも商人向けの物である。
「王様からとにかく防具を集めろという命令を受け、その命令どおりに防具を集めている。そういうことなのでしょう。王様が防具と言ったのですから、あの人にとっては防具なら何でも良いのです。おそらく布の服ですら高額で買い取ると思いますよ。アレだって立派な防具ですからな。まあ、ワタシにとっては極めてありがたい制度ですよ」
 普段背負っている荷台に7着の鉄の前掛けを固定しつつ、トルネコさんは答えた。スコットはその傍らで黙って愛用の鉄の槍を磨いている。
 何を買い取ったのかを王様に報告した後のあの担当者の処遇が少々気になるところだが、まあ、僕たちには関係ないことだ。
「さて、ボンモールへ行きますよ。なんだかもう、キメラの翼を放りまくりで腕が痛くなりますな。スコットさん、放るのを代わってくれませんかな」
「すまないな、旦那の荷物を持たない以上、旦那の道具を使うことはできないんだ」
「はいはい、そうでしたね」
 トルネコさんはさっさとキメラの翼を放り投げた。
 もう、何度目のボンモールだろうか。両手で数え切れないほど来た気がする。それなのに、いっこうに日が傾く気配がない。防具を買うにしろ売るにしろ、それなりに時間がかかっているはずなのに、全く時間の経過を感じることができない。これって一体どういうことなのだろう? もしかしたら、キメラの翼には空間だけでなく時間をも歪める力があるのだろうか。
 もし僕の推測が当たっているとするならば、トルネコさんがこの運用を続けている限り僕らはずっと「1日目」としてトルネコさんに雇われ続けることになる。無限回廊のごとく……。スコットはこのことに気づいているのだろうか。
「スコット、なんか、時間の流れがおかしいと思わないか?」
 そっと耳打ちすると、スコットも静かに頷いた。
「確かにおかしい。もう2日ぐらい経っているような感覚なのに、実際には全然時間が進んでいない」
 僕は続いてキメラの翼に関する考察を述べた。
「なるほど。となると、いつまでもエンドールとボンモールを往復するのは厄介だな。やはり俺たちも荷物持ちをして、さっさとこの往復を終わらせるべきなのかもしれないな……」
 でも、あれだけ頑なに道具を持つことを拒んできたのに、今更やはり持ちますというのもいかがなものだろう。
「あれぇ? 荷物は持たないんじゃなかったんですかぁ」などと、ニヤニヤ顔で言われるのが関の山だ。それはそれで、ちょっと悔しい。
 スコットも同じ考えなのだろう。僕たちは互いに顔を見合わせ、眉間にしわを寄せた。
 そのとき、
「よしっ! これでノルマ達成だ」
 トルネコさんはギュッと拳を握り締め、笑顔を見せた。
「つ、ついに35,000ゴールド貯まったのか?」
「ええ、おかげ様で。これでついに、店を買うことができます!」
 僕もスコットも、思わず笑みを漏らした。トルネコさんとは違う意味で。

−つづく−

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2014年09月19日
 こうして、トルネコさんはついにエンドール城下町に自分の店を持つこととなった。彼ははるか北のレイクナバから奥さんと息子さんを呼び寄せた。どうやって呼び寄せたのかは分からないけれど、すでにエンドールの店には奥さんと子どもがいた。ちなみに、まだ僕らが雇われてから1日と経過していない。この時間の感覚は本当に不思議だ。
 お店のカウンターには奥さんのネネさんが立っていた。金髪の美しい女性だ。トルネコさんよりは多少若そうに見えるが、そこまで歳が離れているようには見えない。決して30歳の年の差があるような感じではない。
「私はここで店番をするから、あなたは商品を仕入れてきてね!」
 ネネさんは手作り弁当をトルネコさんに渡した。
 さて、順調に店を持ったトルネコさん。これからどうするのだろうか。仕入れとやらをどうやって行うのだろうか。というか、僕たちはトルネコさんを護衛する意味があるのだろうか。もちろん契約は契約だから、5日間はお供をしなければならないけれど。
「旦那、この先どうされるつもりなのかな?」
「そうですな。まずは王様に開店の挨拶をしなければ」
 そう言って城へと歩き始めた。僕たちもトルネコさんに続く。エンドールの城はとても開放的で基本的に誰でも自由に出入りできるけれど、一般人がそうそう城に入る理由も無い。僕だって、個人事業の開業届を出したときに行ったぐらいだ。そのときチラッと王様を見かけた、王様を直接見たのはそのときぐらいだろうか。こうやって謁見の間でまじまじと王様を見るのはこれが初めてだ。まだ50歳にはなっていないぐらいの年齢だ。椅子にどっかと腰を下ろし、その表情は自信に満ち溢れているように見える。あまりに自信に満ちたその姿からは考えなしに事を進めてしまうという性格も浮かび上がる。
「おお! トルネコ! ついに店を出したそうじゃな。めでたいことだ」
 王様のありがたい言葉に、トルネコさんは深々と頭を下げた。
「ではわしからの祝いじゃ! 早速そなたに注文をだそう! 詳しくは1階の奥の部屋にいる担当者に話を聞いてくれ」
 その言葉にはさすがのトルネコさんもびっくりしたようで、ペコペコと何度も頭を下げていた。王様の隣りに座るモニカ姫もまた、溢れんばかりの笑顔でトルネコを見ていた。まあ、トルネコさんのおかげで結婚が決まったようなものだ、そうなるのも無理はないか。

 王様への挨拶を終え、1階の注文担当者の部屋へ立ち寄った。そこで依頼された注文は、驚くべきものであった。
「兵士用の武器・防具を納めて欲しい。注文は鋼鉄の剣7本、鉄の鎧7着だ。全ての納品が済んだら代金として60,000ゴールドを支払おう」
 トルネコさんは一瞬ポカーンとした表情を見せた後、すぐに笑顔になって、揉み手をしながらその注文を受けていた。60,000ゴールド……僕が500日働いて得る収入と同じだ。スコットだと750日。前にトルネコさんから聞いた「トムじいさんの背中押し」だと20,000日前後。ついさっきまで延々と買い続けていた鉄の前掛けは40着買える。
 ……ん? おかしくないか? 鉄の鎧7着と言っていたけれど、鉄の鎧は確か前掛けよりも安い値段で売っていたぞ。確か、1,200ゴールド。7着買っても8,400ゴールドだ。ということは、鋼鉄の剣が相当な高級品なのだろうか。

 僕は城を出てから、トルネコさんに剣の値段を聞いてみた。
「鋼鉄の剣は確かボンモールで販売してましたな。1本2,000ゴールド、7本で14,000ゴールド。鎧と合わせて22,400ゴールドあれば注文の品は揃います。それが60,000ゴールドに化けるのですから、いやはや、王様は太っ腹ですなぁ。このワタシ以上の腹の太さですよ。はっはっは!」
「笑い事ではない! その金は、つまり俺たちが納めている税金から出るのだろう? 無駄遣いもいいところだ。大体、武器や防具が必要なら城の奴らが直接店で購入すれば良いことだろう!」
 スコットは語気を荒げた。スコットの気持ちはよく分かる。ボンモールといい、エンドールといい、無駄遣いが多すぎる。もともとそこに住む人たちが納めたお金だというのに。
「まあ、あなたの考えも分かりますが、それを言ってはおしまいですよ。何もお城が出しているのは武器や防具代だけではありません。城内の設備の修理、生活必需品の購入を通じて、様々な商売人にお金を分配する。時に病気や怪我で働けない人の援助をする。集まった税金をそうやって一般庶民に分配する。良いことではないですか。出し惜しみして城勤めの人たちの間だけで分け合うよりよっぽど良いことです。ワタシたち一般人はいつでも色んな方向にアンテナを張って、自分にとってオイシイ制度があればとことん利用してやればいいんです。持ちつ持たれつというやつです」
 そう言われてみれば、傭兵業だって城に届出を行えば、まれに城から依頼がくることもある。届出の日から2年毎、命を落とすことなく傭兵業を続けている場合「生存祝い金」の給付も受けることができる。確かに僕もそうやって城の制度の恩恵を受けていることになる。
「……確かに、一理あるな」
 スコットも仏頂面ながらそう答えた。
「本当は分配のさじ加減が絶妙な人が政を行うのが一番なのでしょうが、あいにくそちら方面はワタシの能力を超えてますからな。ですから、その話題はひとまず置くとして……」
 トルネコさんはなめし革の財布から1,000ゴールド札を数枚取り出した。いよいよ商品の仕入れに行くのだろうか。
「このお金で正義のそろばんを買って、女神像の洞窟へ行きましょう!」
 トルネコさんの行動はいつも予想の斜め上を行く。まさかこの時点で洞窟に行くとは思わなかった。まあ、僕たちを雇った時点で、トルネコさんの中には洞窟に行くという構想があったのだろうけど。
「おお! ついに洞窟に行くのか。……それは大いに結構なのだが、旦那、店の方はどうするのだ? せっかく開店したばかりだというのに」
「店は妻に任せておけば大丈夫です」
 あっけらかんと答えるトルネコさんに、僕らはあっ気に取られてしまった。
「実は、お恥ずかしいですが、ネネはワタシよりよっぽど商才があるのですよ。もともと商家の娘ですからな。とにかく交渉が驚くほどに上手いのです。もしネネがボンモールに防具を持って行けば、ワタシの倍以上の早さで35,000ゴールドを稼ぎ出したかもしれません。それなのに決して出しゃばらず、ひたすらワタシのことを立ててくれるのです。こうやって毎日美味しい弁当も作ってくれますし、いやはや、本当にワタシには出来すぎた女房です。それにネネは……」
「そうか、素晴らしい奥方で羨ましい限りだ。ならば安心して洞窟へ行けるな」
 スコットは「のろ気の気配」でも嗅ぎ取ったのだろうか、トルネコさんの会話を遮るように武器屋へ向かって歩き出した。僕はもう少し聞いてみたかったんだけど……。
「トルネコさん、あとでその話の続き、僕に聞かせてください」
 そう耳打ちした途端、トルネコさんは目を輝かせて頷いた。

 トルネコさんは売らずに残しておいた鉄の前掛け1着を身につけ、武器屋で購入した正義のそろばんを手にした。
「本当は破邪の剣を装備したいところですが、レイクナバでのバイトをサボり気味だったせいでお目にかかる機会がなかったんですよ。まあ、あなた方と一緒ですし、このそろばんでも十分でしょう」
 そう言ってそろばんをじゃらじゃらと振ると、周りの空気が澄みわたるような気がする。まるで周囲の邪気が消え去ったようだ。このそろばんには何か不思議な力があるのだろうか。
「破邪の剣か……俺もいつかはそんな武器を使ってみたいものだ。まあ、せめて鋼鉄の剣ぐらいは生きているうちにもう一度振るってみたいものだな」
「ほう、スコットさん、鋼鉄の剣を扱えるんですか」
「こう見えてもかつて城の志願兵だったんだ。剣は一通り使える。まあ、今は価格的に手ごろなこの鉄の槍を使っているわけだが」
 二人で武器を話をあれこれしている。僕にはイマイチついていけない話題だった。しかし、1つ気になることがある。トルネコさんが何故か道具屋で聖水を1つ購入したということだ。一体何に使うつもりなのだろう。

 城下町から出ると、トルネコさんは早速その聖水を振り撒いた。
「あなた方と一緒のときに聖水を振り撒くと、地上では魔物が全く出なくなるんですよ。凄い暮らしの知恵でしょう? 本当は洞窟内でもこの効果が持続すれば完璧なんですがね」
 なんと、そういうことだったのか。そんな効果があるとは僕も知らなかった。でも……
「何故俺たちが一緒だとそうなるんだ?」
「そりゃあ、聖水を振ることで、魔物たちもあなた達にあやかって出番がなくなるんですよ! ……あ、しまった。口が滑った」
 ……「僕たちのでば」って、「僕たちの出番」のことだったのかー!
(*NPCが仲間になった状態で一度戦闘をこなしてから聖水やトヘロスを使うとフィールド上で魔物と一切遭遇しなくなるという小技)
「なるほど。しかし洞窟内では効果がないんだな。それは好都合。せっかく旦那の護衛になったのに全く戦えないのでは腕が鈍ってしまうからな」
 スコットはニヤッと笑った。トルネコさんの痛恨の一言を大人の対応でスルーしたのか、それとも、そもそも言っている意味が分かっていないのか、僕にはよく分からないけれど。

 そんなやりとりをしているうちに、僕たちはあっという間に女神像の洞窟へとやって来たのだった。

−つづく−

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2014年09月28日
 僕たちは銀の女神像を求めて女神像の洞窟へとやって来た。エンドールからの道中全く魔物が姿を見せなかったものの、洞窟の中ではそうはいかなかった。出番が少ない僕らの神通力も洞窟の中までは力が及ばないらしい。つまり、出番が少ないという神通力はそこまで大したものではなく、「僕らの出番の少なさ」というのも実際は大したことではない。つまり神格化されるほど出番が少ないというわけではないわけだ。そもそも僕たちには「ロレンス」「スコット」という立派な名前が付けられている。一般市民扱いで名前が付いているのはほんの一握りだ。バトランドのアレクスとフレア、イムルのププル、テンペのニーナ、偽王女のメイなどなど。トルネコさんの息子にすらファミコン版だと名前はない。後付ネームであるポポロなんて、イムル宿屋の息子・ププルの名前を下に2つずらしただけだ。パパラ、ピピリ、ププル、ペペレ、ポポロてな感じでね。そう考えると、僕たちは明らかに選ばれた側の人間なんだ! 出番が少ないだなんてとんでもない!
 しかもスコットなど、どこかの世界に「スコットランド」なる地域があって、もしかしたら独立国家になっていたかもしれないらしい。スコットの国か……どこかにロレンスランドとかないかな。スコットがちょっと羨ましい……。
「おい、ロレンス! 何さっきから1人でブツブツ言ってるんだ。ここは戦場だぞ。お前も真面目に戦え!」

 スコットの言葉で我に返った。そうだ、今はスコットランドとか言っている場合ではない。戦いに集中しなければ! トルネコさんに雇われて数日……経っているような気がするけどまだ1日目、ようやく得意の魔法を披露できるときがきた! 僕の戦闘における得意魔法はギラとラリホー。え? どこかの姉妹が合わさったようだって? ということは、僕は1人で2倍の戦力ということだ。
「ラリホー!」
 呪文を唱えると同時に砂漠の砂のような色をしたミミズの大群が眠りこけた。スコットが愛用の鉄の槍を振り回し、ひと薙ぎする。トルネコさんも正義のそろばんをじゃらじゃら鳴らしながら、スコットが仕留め損なったミミズを叩き潰した。

 ところどころ浸水している洞窟内はイカダに乗って移動する必要があった。さすがにお宝の眠る洞窟だ。誰かが用意したイカダだったのだろう。でも未だ女神像が誰かの手に入ったという情報はない。イカダの持ち主はこの洞窟探検においてどういう末路をたどったのだろうか。
 イカダで移動中も魔物は容赦なく襲ってくる。水棲のタコやら空を飛んで向かってくる巨大なハエやらがまとわりつく。特にハエはこちらの魔法を封じるマホトーンの呪文を唱えてくるので厄介だ。でも所詮僕の敵じゃない。タコはラリホーで水中に沈め、ハエはギラで焼却処分だ。安定の悪いイカダの上でもスコットの槍さばきは冴えている。さすがは歴戦の戦士といったところか。重量のあるトルネコさんが行動するたびにいかだは大きく揺れたが、そんなことはお構いなしに次々と魔物たちを切り裂いていった。
「スコットさん、さすがですなぁ。見事な武器さばきです。惚れ惚れします。一度剣を振るっている姿も見てみたいものです」
「ありがたい言葉だが、おだてても道具持ちはやらないぞ」
 スコットはニヤッと笑いながらそう言った。
「はっはっは、分かってますとも。ですが、そのせいで余計な薬草は持ってきてませんからな。怪我にはくれぐれも注意してくださいよ」
「そうですよ、スコット。あなたは前に一度大怪我をしているのだから」
「大丈夫だ。お前のホイミがあれば問題ない」
 そんなやりとりをしながら洞窟の深部へと進んでいく。
 しかしこの洞窟、浸水の具合が好ましくない。地下2階は水浸しでいかだ無しでは思うように進めないのに対し、地下3階は水が干上がっていて段差が激しい。僕やスコットだったらどうにかよじ登れそうな段差だけど、上背も無くおなか周りが立派なトルネコさんにとっては登るのは困難だろう。
「どうもこの階層は浸水していることが前提の造りをしているようだな」
「そうですなぁ。水が張っていて、いかだで進むことが出来れば、段差の上に何があるか分かりそうです」
 銀の女神像というお宝をやすやすと盗られないような仕掛けがなされているということなのだろうか。ならばどこかに謎を解く鍵があるはず。
 僕らは魔物たちを蹴散らしつつ、念入りに壁や床を調べながら足を進めた。
 地下3階を歩いていても特に何もなかったので地下2階へ戻り、注意深く奥へ奥へと進んでいく。するとついに行き止まりになってしまった。しかし、その地面にはボタンのようなものがある。そして横には風化した石版があり、何かが書かれていた。あちこち欠けていて非常に読みづらかったが、何とか解読した。

『このボタン 押すべからず』

「これは……意味深なボタンですなぁ」
 一体押したらどうなるのだろうか。宝を盗られたくないという意味での押すべからずなのか、押すと本当に危険だから押すべからずなのか。僕もトルネコさんも腕を組んで考え込んだ。しかし
「ここで迷っても仕方ないだろう」
 スコットはそう言うと、ボタンを思い切り踏みつけた。
「ちょっとスコット、押すべからずと書いてあるのに」
「押したんじゃない、踏んだんだ」
 それはただの屁理屈というものだ。しかしもう遅い。ボタンは確かに押されてしまった。あたりに轟音が鳴り響く。このままこの洞窟、崩れてしまうのではないだろうか……そんな不安に襲われた。いつも飄々としているトルネコさんも明らかにうろたえている。スコットだけは悠然と構えていた。
「この程度ならここが崩れるということもあるまい」
 確かに、音は鳴っているが、地面が激しく揺れているわけでもない。さすがに僕より百戦錬磨の傭兵、スコットである。
 やがて音は鳴り止んだ。幸い洞窟は崩れてはいない。ならば一体何が起きたのか、僕たちはもと来た道を戻った。するとそこには意外な光景が広がっていた。あちこち浸水していたはずのこの階層から、ほとんど水が消えていたのだ。あれほどあった水は一体どこへ消えたのか。ここは地下2階だ、さすがに地下1階へ移動したとは思えない。つまり、普通に考えれば水はさらに下の階層、地下3階へと消えたはずだ。うまい具合に地下3階が浸水していれば、段差の上へも移動できるはず。
 なるほど、あの『押すべからず』は宝を盗って欲しくないためのものだったようだ。
「スコット、こうなるって分かっていたのですか?」
「別に分かってたわけじゃないさ。だがな、このただ者じゃないトルネコの旦那が一緒なんだ、悪いことが起こるわけがないと思ったのさ」
 スコットがそう言うとトルネコさんは照れ笑いのようなものを浮かべていた。

 早速地下3階へと進むと、予想通り今度はこちらが浸水状態となっていた。地下3階へ降りてすぐ、かつて段差の上部だった場所に古びたイカダがあったのでそちらを拝借し、奥へと進んでいく。ついさっきまで干上がっていたこの階層にも早速タコの魔物が巣食っていた。水と一緒に上の階から流れてきただけだろうけど。
 さっきまで行くことが出来なかった段差の上部には宝箱がいくつかあったが、中身はすでに空だった。まさかすでに先陣がいて女神像を取られてしまったのかという不安もよぎったが、それは杞憂に終わる。
「あそこに下へ降りる階段が見えますぞ!」
 トルネコさんが指差す先に確かに階段があった。僕たちはなおも襲い掛かってくる魔物たちを撃退しつつ階段を下りた。降りた先には宝箱が1つ。トルネコさんが重い体を揺すりながら宝箱へと走る。僕たちも軽やかに走る。
「これだ! ついに見つけましたぞ! 銀の女神像を!」

 トルネコさんが手にした女神像は神々しい輝きを放っていた。

−つづく−

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