モンバーバラの町から船で西に進み辿り着いたソレッタの城は、どう考えても先ほど訪れた城ではなかった。前の城は城下町から城にかけて船で移動したのに対し、こちらは畑だらけ。それに城下町というより村だった。突風が吹けば飛んでしまいそうな粗末な草葺の城の中に国王はおらず、なんと外で畑仕事に精を出しているではないか。
仕事中の国王に話を聞いてみると、元々ここはどんな病気でも治してしまう夢の植物、パデキアの産地だったという。それが数年前の干ばつで全滅し、先代が種を保管しておいた洞窟には恐ろしい魔物たちが巣食うようになり、とても取りに行くことは出来ないらしい。
国の生命線である特産品を失い、国王までもが汗水を流して働かなくてはいけないこの状況があまりにも気の毒に思えてきて、3人は南の洞窟へ行って保管してある種を取りに行こうということになった。
「こんなのどかで穏やかそうなお城なのに、大変ですねぇ」
畑の風景を眺めつつ、パノンがそう口にした。
また何か微妙なギャグが飛び出るのかもしれないと、ホフマンは身構えた。
「ソレッタだけに嵐は逸れった!」
やっぱり出たか、しかも予想通りすぎるギャグだなとホフマンが思った矢先……、
「でも干ばつは逸れなかったんですね、分かります」
ユンケルが呟いた。
「ノォォォ! 素晴らしい! 素晴らしいツッコミですよ! ユンケルさん! アナタとワタクシ、良いコンビになれる気がします」
いや、ユンケルのはツッコミじゃないから。素で言ってるんだから。
ホフマンは胸の中でそうツッコミを入れつつ、一行はパデキアの眠る洞窟へと向かっていった。
◆◆◆
というわけで、ミントスすっ飛ばしてソレッタです。
スタンシアラもソレッタも「タ」の付くお城でモンバーバラからほぼ一直線という位置取りなので良かったです(笑)
勿論ブライにはまだ会ってません。ブライに会わずにパデキア洞窟へと行くのは初めて。 リメイクだとアリーナが扉を蹴破らないから洞窟に入れないんでしたっけ??
パデキアの洞窟 1回目
並び順、ホフマン−棺−パノン−勇者。NPCは蘇生費用激安なので、ぶっちゃけ勇者さえ生き残れば問題なし。リレミトの分のMPまで使わないように棺に薬草を詰め込む。実は事前に奇跡の剣と天罰の杖を貰っているので勇者に持たせる。まどろみの剣は対ボス戦用。
さて、パデキアの洞窟攻略。
奇跡の剣装備の勇者、地獄の鎧をも一撃で倒せるほどの攻撃力。群れた敵には天罰バギマをお見舞いで余裕の進撃。ミントスイベントをすっ飛ばしたが、地下2階にはしっかりアリーナの姿。
パノンのまどろみの剣による眠らせ率が凄まじく高い。これはキングレオ戦が楽しみだ。
守備力の低いホフマンが途中で倒れたものの、パデキアと全てのお宝を回収し、無事一発クリア。勇者の装備が充実しているので余裕だった。
◆◆◆
洞窟で見事パデキアの種を手に入れたユンケルたちは早速ソレッタへと戻り、国王にその種を手渡した。国王は飛び上がる程に喜んで、早速種を畑にまいた。
すると、途端に畑から芽が出て葉が出て、茎はどんどん伸びていき、あっというまに辺り一面に赤い花を咲かせた。
その生長の早さもさることながら、一個の種から何本もの茎が出てきたことに3人は驚いた。なんという恐ろしい増殖能力。雑草の比じゃない。これが干ばつで全滅したなんてにわかには信じられなかった。
「驚いただろう? このパデキアの生長のスピード、増殖能力には目を見張るものがあるのだが、何故か乾燥にだけは滅法弱いのだ」
今まで目にしたことのない光景に目を丸くした3人に、国王はそう説明し、茎を1本引き抜いて、その根っこをユンケルに差し出した。
「これはささやかながらお礼じゃ。湿した布でも巻きつけて乾燥にさえ気を付ければ傷むことはない。この根は万能薬。万一重い病にでもかかったときには煎じて使うと良い」
3人は礼を述べ、国王のもとを後にした。
「国王様を喜ばせれば褒美をくれるお触れというのは、このパデキアのことだったのですか? ワタシが来た意味があまりなかったように思えますが」
「いや、それっぽい展開にはなってるけど、違うから。そもそも前に立ち寄った城、ここじゃないから」
農村のような城下町を歩きつつこぼしたパノンにホフマンがそう弁明した。
「あらら、そうだったのですか。場所を間違えたのですねぇ。……あっ! タの付くお城とは、もしかしてソレッタではなくスタンシアラ?」
「おお! そうだ、それだよそれ! スタンシアラだ! 間違いない。ソレッタとスタンシアラじゃ全然違うじゃないか……」
そんな話をしていると、1人の老人がゆっくりと近づいてきた。ユンケルがしげしげと眺めていたパデキアの根っこに気付いてやって来たようだ。
「もしや、全滅したパデキアが復活したのですかな?」
「そうです。僕たちが洞窟から種を持って来て、王様が蒔いたんです」
ユンケルがそう説明すると、老人は懐かしそうな顔をして遠くを見つめた。
「ミントスに嫁いだ娘がまだ小さかった頃、ひどい熱が出てのう。パデキアを煎じて飲ませたことがあったんじゃ。懐かしいのう。パデキアが全滅したと知ったときはひどく不安になったもんじゃが、復活して良かったのう」
「ミントス?」
老人の言葉にホフマンが反応した。
「そうじゃ、ミントスじゃよ。ここから西の海岸沿いを1日くらい歩いた先にあるのがミントスの町じゃ。娘はそこへ嫁いでいったんじゃよ」
「なあ、ユンケル、パノン。オレ、ミントスの町に行ってみたいんだけど、いいかな?」
ソレッタの宿屋の一室、お世辞にもきれいとは言いがたい部屋の中でのくつろぎの時間の最中にホフマンはそう口にした。
「え? ミントスですか? スタンシアラに行くんじゃないんですか?」
パノンがそう言ったが、ホフマンはとりあえずまずミントスに行ってみたいと言い張った。
「まあ、ワタシは気ままな旅芸人。寄り道は芸の肥やしになりますし、構いませんですが、何故またミントスへ行こうとお思いで?」
「ミントスにはさ、世界一立派な宿屋を興したヒルタンという大商人がいるんだ。ほら、オレ、宿屋の息子だろ。だから、一体どんな宿屋なのかを見てみたいと思ってさ……」
「なるほど! 将来のための参考にですね。でしたら行くべきですよ。ねえ、ユンケルさん」
「そうだね。町の場所も分かっているし、じゃあ明日はミントスへ行こう」
「ありがとう。まあ、参考に出来るのかどうかは分からないけどね」
「明日はミントスへ行ってみんとすー!」
イマイチ意味の分からないギャグで、一日を締めくくったのだった……。
翌日、3人はソレッタからミントスへ向かった。船で行ったため、思ったよりも早く到着し、町へと入った。
ミントスはソレッタとは大違いで、とても賑やかな町だ。道具屋、防具屋、武器屋が軒を連ね、町の中央部にはソレッタ城より立派な宿屋、道を挟んで南側には大商人ヒルタンによる青空教室が開かれていた。
あまりに立派な宿屋にホフマンは興奮した。少しではあったがヒルタンとも話す機会を持てた。
町に着いたのが夕方少し前だったこともあり、3人はこの立派な宿屋で一泊することにした。ソレッタの宿屋とは大違いのご馳走に舌鼓を打ち、心も腹も大満足。決して高い料金ではないのに、何故これほどのサービスなのか、ホフマンは不思議で仕方なかった。ここで働けばその仕組みも分かるのかなと、ふと思った。
そしてその晩。
「なあ、ユンケル」
「なんだい?」
「ユンケルはさ、もしかしたら伝説の勇者なんじゃないか?」
ホフマンは突然、そんなことを尋ねてきた。突然の質問に驚きの表情を見せたユンケルに、ホフマンはさらに話を続けた。
「つい最近こんな話を耳にしたんだ。ブランカ城の北の山奥に天女が舞い降りて、木こりの若者と恋に落ち、子どもを身ごもった……って」
ユンケルは無言だった。いつもは饒舌なパノンも黙ってホフマンの話を聞いていた。
「まあ、この話はおとぎ話だとも言われてたんだけど、でも君はブランカの北にある村に住んでいたって言ってたし、村のみんなが君のことを助けてくれたって言っていたから、それはおとぎ話じゃなくて、ユンケルのことかなって思ったんだ」
そこまで話を聞いて、ユンケルは重い口を開いた。
「たしかにあの日、村のみんなには僕は勇者だって言われた。父さんの手紙にもそう書いてあった。でも僕は、自分が本当に勇者なのかは分からない。ホフマンが聞いたという話も、僕のことを言っているのかは分からないし」
「いや、きっと君は勇者なんだよ。だから君はそれほどの辛い目に遭ったにも関わらず、オレの心を開いてくれるほどにきれいな目をしていたんだ。そのことが、ようやく分かったよ」
ホフマンは窓際まで行き、星空を眺めた。
「オレは……そんな、世界を救っちまうかもしれないユンケルと短い間だったけど、一緒に旅が出来たんだな」
「え?」
ホフマンの言う「短い間」の意味がユンケルには分からなかった。
「オレはどうしようもないダメ息子で、親父に心配ばかりかけてきた。でももう、オレは今までのオレじゃないんだ! 親父に少しでも楽させてやりたい、そう思うようになった。だからオレ、親父の跡を継ぐためにこの町に残って修行しようと思う。もう一度スタンシアラには行ってみたかったし、名残惜しくはあるけど、君とはこの町でお別れだ」
「ホフマン……」
「ハハハ、決意表明しちまったぜ。もう後には引けないな」
「ホフマンさん、カッコイイです! 男前です! ホフマンの抱負満点!」
「いや、無理にダジャレにしようとしなくていいから……」
この晩、3人は夜遅くまで談笑しながら過ごしたのだった。
翌朝、町の入口に3人は立っていた。ユンケル、パノンの2人とホフマンが向かい合うようにして。
「いよいよお別れだな。ユンケルには世話になっちまって、本当にありがとう。パノンもまぁ……少しありがとう」
「ホフマン、君と旅したことは忘れない。君は僕の初めての男友達だから」
「へへへ、オレのこと友達って言ってくれるのか。ありがとよ」
「修行、頑張ってね」
「ああ」
ユンケルとホフマンはガッチリと握手を交わした。
「ホフマンさんの手厳しいツッコミが聞けなくなると思うと寂しいですが、お父さんの跡を継げるよう頑張ってくださいね」
「ああ。パノンも、次に会うときはオレを唸らせるようなギャグを頼むよ」
ホフマンはパノンとも握手を交わした。
「馬車は引き続き使ってくれて構わないから。パトリシア、みんなのことを頼んだぞ!」
「ヒヒーン!」
「ユンケル、君がみんなの仇が討てることをオレも祈ってるから」
「ありがとう」
「じゃあな」
こうしてユンケルはホフマンと別れ、パノンと2人で旅を続けることになった。
「では次はいよいよ、スタンシアラですね。ヒルタンさんから地図も貰いましたし、もう迷うこともないでしょう」
「そうだね」
次の目的地の相談をしながら船へと歩いていると、背後から男性が呼ぶ声が聞こえてきた。
「あれ? ホフマンさんですかね? まさかもう修行を終えたとか」
「それはないんじゃないかな」
あまりに真面目に返事をされると返す言葉もなく、パノンは苦笑いするしかない。近寄ってきた男は勿論ホフマンではなかった。姿を見るに詩人のような格好をしているが……、
「あの……実は、私、昨晩あなた方と同じ宿に泊まっていた者ですが、その、偶然あなた方の会話が耳に入ってきて、悪いと思いつつ聞いてしまったのです」
いきなり盗み聞きを告白され、2人とも怪訝な表情を見せた。
「ユンケルさんは伝説の勇者様でいらっしゃるとのことで……」
勇者という言葉に、ユンケルはさらに顔をこわばらせた。
「実は先日までこの宿に泊まっていたライアンという戦士が、勇者様を探しているという話をされていたのです。その方は結局、ここからはるか西のキングレオに行くと言って出て行ってしまったのですが」
僕を探している人がいる? 戦士ライアン?
全く聞いたことのない名前ではあったが、ユンケルは何故か、そのライアンという戦士には会わないといけないように思えてきた。理屈ではなく、ただ「会わなくてはいけない」と無性にそう思えてきたのだ。
「教えてくれてありがとう」
ユンケルは短く礼をいい、そのまま船へと向かっていった。パノンも男に愛想笑いをしつつ、ユンケルの後を追った。
「パノン、キングレオに行っていいかな。僕、ライアンという人に会ってみたいんだ」
「ははは、また寄り道ですかぁ? まぁ、ワタシは旅芸人。ワタシには特別なステージはいりません。人がいればそこが舞台。良いですよ。あなたと一緒なら色んな国を回れそうですし。トコトンお付き合いしますよ!」
2人は次の目的地をキングレオと定め、船に乗り込んだのであった。
◆◆◆
話の中では姫様一行完全スルーですが、今回初めてブライを仲間にしないままパデキアを手に入れたので、根っこ入手後のミントスでは宿屋の一室に3人待機状態。ブライに話しかけると「このご恩は一生忘れません」と言われました。ある意味レアセリフ?
さて、次回からいよいよキングレオ編ですが、勇者とパノンの2人だけですんなりキングレオを倒せるのか、不安。
なまえ | Lv | HP | MP | 攻 | 守 | 早 | そうび |
ゆんける | 14 | 94 | 47 | 143 | 112 | 24 | 奇跡の剣 ドラゴンメイル ドラゴンシールド 鉄仮面 |
パノン | ? | 85 | 24 | 88 | 53 | 38 | まどろみの剣 身かわしの服 木の帽子 |
<携帯閲覧用>
ゆんける LV14 H94 M47 攻143 守112 早24
奇跡の剣 ドラゴンメイル ドラゴンシールド 鉄仮面
パノン LV? H85 M24 攻88 守53 早38
まどろみの剣 身かわしの服 木の帽子

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