DQ4プレー記・ただ今のお題
<掃き溜めに鶴>

ルール
・4章はミネア(とオーリン)だけで進める
・5章、船取得までは勇者、ミネアのみで進める
・5章、船取得以降、トルネコ、ライアン、ブライ、ミネアで進める
・キングレオ戦、天空への塔のみ勇者使用可
・勇者は馬車内での生存状態可。アリーナ、クリフト、マーニャは棺桶
・ガーデンブルグでの棺桶人質可
・838861、8逃げ、透明気球等の裏ワザ禁止
・種や木の実類は使い切る


過去のプレー記(プレー記案内はこちら
[記念の二部作]
[01]20周年記念 [10]25周年記念
[女性勇者二部作]
[02]装備品 買わない盗まない [09]いろいろやりすぎ
[三人旅三部作]
[03]水戸黄門 [04]腹でん!(パラディン)と美人姉妹 [05]まどろみ無双
[柔剛柔の三部作]
[06]クレバーカルテット [07]益荒男四人衆 [08]クレバーカルテットDS
[勇者役トルネコの二部作](の予定)
[11]百花繚乱 [12]進行中


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2010年10月23日
 最終回です。ようやくデスピサロを倒せました。あまりに長くなってしまったので分割投稿します。
 こちらが前編です。


  ◆◆◆

「ねえミネア、あんたの水晶球ってさ、割れたりすることってあるの?」
「この水晶球には特別な魔法がかかっているから、落として割れてしまうとか、そういうことはないわね」
「へえ、そうなんだ」
「でも……」
「?」


「……っ!?」
 あたしはそこで目が覚めた。どうやらゴツゴツした冷たい地面に仰向けになっていたようだった。視界には「空」と呼べるのかも怪しい、闇の世界のどんよりとした赤黒い空が広がっている。
 そうだ、あたしたちはデスピサロと戦っていた。てことは、今のは夢だったのか? そういえば、もう随分と前にミネアと今みたいな話をしたことがあったような気もしたけど、でもなんで今更そんな夢を? ……夢ってことは、もしかしてあたし、気絶してた?

 ……ううん。いや、違う。そんな生ヌルいモンじゃなかったはずだ。あたしはデスピサロの吐いた激しい炎をまともに食らったんだ。体中炎に包まれて、息を吸ったら肺まで焼けるようで、熱くて痛くて苦しくて、呼吸なんてできなくて……自分はもう死ぬと思ったんだ。
 なのに、今のあたしの体は信じられないほどにきれいだった。火傷なんてしてない、傷も全然ない、髪の毛だってチリヂリになってないし、呼吸も普通に出来てる。体の、どこも痛くない。
 もしかして既に死んでるってオチ? そう思って自分の頬っぺたをつねってみたら、あいたたた……。違う、死んでないんだ。

 あたしの左の方で、やっぱりひっくり返っていたオジサンもむっくりと起き上がって自分のお腹をキョロキョロ眺めてる。
「おかしい……デスピサロの爪に切り裂かれたはずの腹が、何ともないぞ!?」
 オジサンも自分の体の状態にビックリしているみたいだった。

 あたしもオジサンもすっかり傷が治ってるって、これって何? 奇跡が起きたってやつ? 凄い、凄すぎるよ!

 そうだ、ミネア。ミネアはどうした?

 ミネアを探すべく、もっと上体を起こそうとして、地面に右の掌を着いた。
 ――その右手に、何かが当たった。
 そのまま体を起こして、その何かを右手で掴んだ。それは、何かの破片だった。
 掌に収まるくらいの透明な破片は、割れて複雑な形になった断面がキラキラ輝いていた。それでいて、掌に当たっている面はすべらかで手に吸い付くように馴染む。
 これ、元は球状だったみたい。

 ……え? 透明で……球状?
 って、ねえ、こ、これってもしかして、

 水晶球の……破片?


『この水晶球には特別な魔法がかかっているから、落として割れてしまうとか、そういうことはないわね。でも……』
『? ……でも?』
『……あっ。ううん。なんでもない』
『えー? なんでもないって……何よそれ。へんなの』
『ごめんね。ほんと、なんでもないの』


 そうだ、たしかあのときミネアはそう話を続けたんだ。思い出した!
 でも、ミネアは本当は何を言おうとしたんだ?
 ……分からない。でも……どっちにしろ、ミネアが割れることはないと言っていた水晶球が、現に割れている。これは、ただごとじゃない!
 そう思うと急に物凄い不安に駆られた。背中に寒気が走って、嫌な胸騒ぎがした。

 ミネアを、早くミネアを見つけなきゃ!
 あたしは急いで辺りを見回した。

 そんなあたしの視界に、ミネアの姿が飛び込んできた。

「えっ……?!」
 自分の目に映ったミネアの姿に、絶句した。
 ミネアは、地面にうつ伏せになって倒れていた。そして周りには、水晶玉の破片と思われる透き通ったかけらが、大きいのから小さいのから散らばっていた。

 ちょっと……何よこれ。あたしとオジサンはピンピンしてるのに、なんであんただけぶっ倒れてんのさ……。
「ミネアっ!」
 急いで立ち上がってミネアのそばに駆け寄り、彼女の体を仰向けに起こした。
 倒れるときに、きっと顔から落ちたんだ。右の眉尻から頬骨のあたりにかけて痛々しい擦り傷があった。
 ……でも、でもそれ以上に、その固く閉ざされた瞳と、顔色のあまりの蒼白さに衝撃が走った。血の気がサーっと引くような思いだった。無我夢中でミネアの名前を叫びながら両肩を掴んで体を揺さぶったけど……ミネアの首が無抵抗にガクンガクンと振れただけで、それ以外に全く反応はなかった。頬を何度も叩いても、なんとでもない。
「ミネア! あたし、またカジノでスっちゃったのよ! ねえ、お金貸してよ!」
 耳元でそんなことを言ったら、怒って飛び起きるかもしれない。そう思ったのに、やはり何も反応がない。

「ねえ……オジサン、割れないはずの水晶球が割れちゃったんだよ。ミネアが……動かないんだよ。なんで……? 一体、どうなってるのさ……」
 あたしは振り絞るようにそうこぼした。
「ミネアさんの割れないはずの水晶球が……割れた。……!?」
 眉間にしわを寄せながら考え込んでいたオジサンが、急に目を見開いた。
「占い師……水晶球。まさか……まさか、そんな。だとしたらミネアさん、貴方はなんてことを! ……ああ、だからワタシたちは」
「ちょっとオジサン! 1人で納得してないでよ!!」
 オジサンの呟きに恐ろしく不安になって、つい怒鳴り散らしてしまった。
「ハッ! す、すみません。ワタシも人づてに聞いただけなのですが……水晶球を扱う占い師のみが詠唱し得るという禁忌呪文があるそうなのです」
「き……禁忌呪文?!」
 何よそれ……なんなのよ、そのいかにも恐ろしそうな呪文は。
 あたしの心臓がバクバクバクバク、体の中で激しく鳴り響いた。体中から汗が噴き出したような気がした。オジサンの話の続きを聞くのが……怖い。でも……。
「その呪文は……たしか『メガザル』と言いまして、またの名を『自己犠牲呪文』と……」


 自己犠牲……だって?


 何よ、それって。じゃあミネアは……自分の命と引き換えにあたしとオジサンの命を救ったってことなの? ウソでしょ?

 バカ! ……バカだよそんなの。何で自分ひとりで全てを背負い込もうとしちまったんだ!
 自分と同じ名前だからって、キラーアーマーに手もかけられなかったあんたが、何で自分のことは殺しちゃうんだよ……。
 何で自分1人、逃げてでも生き延びようって、生き延びてチャンスを窺おうって、……そういう風に思えなかったんだよ。
 器用に色んな呪文が出来て、剣だって鎧だって扱えるあんただったら、それが出来たはずだ! あたしはたとえ自分が死んでも、ミネアが生きていてさえくれれば、それで良かったのに。それなのに……何で!!
 悔しくて悲しくて、あたしはミネアの胸に顔を落とした。でも、ミネアの体からは鼓動も何も、聞こえてはこなかった……。
「ミ……ミネアァァァァァ!」



 ミネアに命をもらったあたしたちは、ただがむしゃらにデスピサロへ向かっていった。
 ヤツの吐く炎や猛吹雪を紙一重でかわして、力の限りメラゾーマの呪文を放ち続けた。あたしの放つ炎の玉はまるで真空の波にでも乗ったかのように、いつもより鋭い勢いで唸りをあげ、デスピサロを襲った。それはあたしの火炎呪文が、ミネアが得意にしていた真空呪文と融合したかのようだった。
 オジサンの剣さばきも、それまでよりも力強く、軽やかで華麗だった。それはミネアの剣さばきのようだった。あの子はスタミナはからきしだったけど、華奢な体のわりに、何故か腕っ節は結構強かったんだ。取っ組み合いの姉妹喧嘩は遠慮したいと思ったほどにね。意外にも剣の扱いもオジサンより上手だった。そんなミネアの剣さばきを、あたしはオジサンの中に見た。

 間違いない。あたしたちの中に、ミネアはいる!
 この戦いは、絶対に負けられない!!

   ◆◆◆

デスピサロ戦 27回目
 決着は27戦目でした。もう少しかかると思ったけど、サントハイム組のバルザック戦よりも1回早い決着となりました。戦う前にダンジョンを抜けたり、形態変化がたくさんあったのでデスピサロ27回はバルザック28回よりとてつもなく長く感じましたが。
 これまでの度重なるデスピサロとの戦いから「最終形態はルカニでいく」という作戦にかけることにしました。ルカニはごく初期に覚えるのに、1回決まると守備力が0になるほどの凄い呪文です。そんな呪文がデスピサロに効くのです。守備力0とは、すなわちスライム以下。ミネアもトルネコもスライム相手なら余裕で100以上のダメージをたたき出します。だからデスピサロにルカニさえ決まれば、おそらくメラゾーマに頼る必要はありません。マーニャの非力な攻撃でさえそれなりのダメージを与えられるはず。
 ただ、ルカニを決めるためにはその前にAIトルネコが天空の剣を使って、なおかつAIマーニャにルカニを唱えさせないといけません。まあ、天空の剣はトルネコの持ち物を減らして「いろいろやろうぜ」にすれば何とかなりますが、様々な呪文を使うマーニャに「いろいろやろうぜ」でルカニを使わせるのはかなり難しい。
 ところが、これまでの戦いで、何故かマーニャは1人だけになるとルカニを唱えることが判明しています。理由はさっぱり分かりませんが。
 この辺を駆使して何とかならないだろうかと思いつつ、戦いに臨みました。
 マーニャにもそこそこ打撃を頑張って欲しいので理力の杖を装備させました。攻撃力が一番高いのはマグマの杖ですが、こちらだと道具として使う可能性もあるので、道具として使っても意味のない理力の杖を持たせました。まさかデスピサロ戦でこの杖を使うことになるとは思わなかったです。「全ての武器を集める」というルールのおかげで預かり所から引き取るだけ。調達は楽でした。

 本題のデスピサロ27回戦。レベルはトルネコ72、マーニャ63、ミネア57。
 第三形態のザキでマーニャがやられるも、ザオラルが一発で決まり無事突破。トルネコは相変わらず無駄だらけ。子守唄の音楽が流れるとイライラする。なだめられるとこっちがいきり立つ。大声を出されると「黙れ」と言いたくなる。
 それでもなんとか3人生存の状態で最終形態突入。残りMP、マーニャ311、ミネア182。
 最終形態1ターン目で作戦を「いろいろやろうぜ」にし、ミネアを引っ込める。トルネコ、通常攻撃。天空の剣を使って欲しいのに、こういうときは真面目に攻撃するのね。マーニャ、イオナズンを唱える。跳ね返って自分に大ダメージ。いろいろやろうぜマーニャはいつも危険すぎる。
 2ターン目でマーニャも引っ込めてトルネコ1人体制。HPが高いから1人でも比較的安心。3ターン目ぐらいでやっと天空の剣を使う。
 トルネコのHPが結構減ったのでまずはミネアを戦列復帰させてトルネコ回復。続いてマーニャも復帰。さて、次はルカニをいかにして使わせるかだ。みんなのHPを回復させつつ、機会を伺う。ブレス攻撃で3人ともかなりHPが減ってしまったときに、一か八かで「いろいろやろうぜ」にしたら、狙い通りミネアが世界樹の雫を使ってくれた。しかし、先頭で攻撃を受けやすい&ブレス耐性ゼロのトルネコは次第にHPが削れていき、死亡。ザオラルも効かずに嫌な感じ。でもどうせ全滅するなら試すことを試さないと! と思い、ここで思い切ってミネアを引っ込めてマーニャ(と棺桶トルネコ)だけを出すことにした。作戦は「みんながんばれ」
 マーニャ、やはり1人になると最優先でルカニを唱える。不思議な行動ではあるけれど、有り難くもある。デスピサロが凍てつく波動を多用したこともありマーニャに立て続けに攻撃がいくこともなかった。これは幸運だった。ミネアを出し入れしつつマーニャの回復をさせ、ルカニ詠唱4回目で見事決まる。デスピサロの守備力を230下げて、恐らく守備力はゼロになったはず。この先は「いろいろやろうぜ」厳禁。
 しかし、喜んだのもつかの間、激しい炎でマーニャ死亡。ミネアだけが残る。うわー、やっぱり全滅か? でもどうせ全滅するにしても、1度は打撃を当ててダメージ量を調べなければと「じゅもんつかうな」にしてミネアに強制的に打撃攻撃をさせる。ミネアの攻撃で130超のダメージをデスピサロに与えた。
 これなら最終形態も戦えると確信。たとえ今回全滅でも次回以降で何とか出来る……そう思っていた矢先、トルネコにザオラルが決まって蘇生。そのトルネコの攻撃も100を優に超えるダメージ。さらにマーニャにもザオラルが決まりあれよあれよと全員復活。マーニャの非力攻撃ですら50程度のダメージ。いける! もうメラゾーマいらない!
 以降、状況によって「いのちだいじに」と「じゅもんせつやく」を使い分ける。最初はメラミを放っていたマーニャも、打撃の方が効率的と悟ったのか、途中から呪文をやめた。トルネコの無駄行動が減ったのも有り難い。商人軍団を呼んだときはニヤリ。これだけで300超のダメージだ。
 再びトルネコとマーニャが死ぬも、ミネアだけはやられることはなく、粘りに粘って2人を蘇生させる。ミネアすごい、神懸かってる……。デスピサロが凍てつく波動を多用してくれたのも助かった。
 3人に戻ってひたすらに打撃攻撃(と回復)。またもやマーニャが死に、ミネアのMPもスカスカになったが、最後はこの戦い2度目の商人召喚でデスピサロにとどめをさした。
 今考えれば「商人軍団がとどめかよ」って感じだけど、その時は思わずガッツポーズしちゃったよ。ちなみに会心の一撃発動はゼロ。

 「やっと終わった!」と「ついに終わってしまったか……」が交錯し複雑な心境でした。

 長かったです。この3人だけでも裏技なしでデスピサロを倒せると分かって良かった。
 トルネコのグングン伸びたHPは、ザオラルによりHP半分で蘇生したときでも250以上(ミネアの最大HP以上だな)を保ってくれて助かりました。無駄が非常に多かったけど、最終形態では会心の一撃に匹敵する商人召喚を2回も行ってくれてありがとう。足払いも地味に役に立った。ダジャレ共々、もっと多用してくれてもよかったんだけど、子守唄はいらないから。
 マーニャはデスピサロとの相性が最悪だったけれど、ルカニを覚えてくれていてありがとう。もしマーニャがルカニを覚えなかったらクリアはさらにずっと先だったかも。あと、見た目の派手さとは裏腹に堅実に賢者の石を使いまくってくれて助かりました。豊富なMPも心に余裕が持てて良かったです。
 ミネアは3人の中でダントツに少ないHPながら、ただの一度もやられることなく、最後まで戦い抜いてくれました。トルネコのHP、マーニャのMP&素早さのような突出した能力はなかったけれど、打撃攻撃、バギクロス、ベホマ、ザオラル、フバーハ、あらゆる手段をフル回転して戦い続けたその姿に感動しました。もう器用貧乏とは言いません。過去の戦いで仲間のためにメガザルを6回も使ったことも決して忘れません。あまり高くない能力値ながらもひたむきに戦い続けたその姿に心打たれました。大好きになりました。本当にありがとう。

天空城にて

 天空城にて。マーニャ先頭で記念撮影。えっと、後ろの3名様はどちら様でしたっけ状態(笑)
 トルネコとミネアを天空城内に招き入れたい気分でした。

   ◆◆◆

「うおおお!」
 ミネアばりの剣さばきでデスピサロに果敢に突進していったオジサンの一撃が、デスピサロのお腹の方の眉間に突き刺さった。デスピサロは轟音のような叫びをあげた。それまで緑色をしていた体が真っ白な灰のようになり、その姿はみるみるうちに進化の秘法を使う前の、人間のような容姿へと戻っていった。
 デスピサロは腹部から血を流し、もはやその場から動くことも出来ないようだった。あたしはそんなデスピサロに近づいた。
「人間は……あんたの目には身勝手で乱暴で、自分のことしか考えない愚か者に見えていたのかもしれない。でも、中には……仲間の為に、他の誰かの為に、自分の命を捧げるような……そんな人間だっているんだ!」
 涙声になりそうなのをぐっと堪えて、そう言った。
 デスピサロはじっと目を閉じて、無言だった。あたしの言葉に何か返すこともなく、暫く時は流れた。そして、
「私の……負け……だ」
 ヤツは最後にそう吐いて、事切れた。
 結局こいつとは永遠に、分かり合うことはなかったのか……。


 主を失った闇の世界に雷鳴が轟いた。地面もグラグラと揺れている。
「マーニャさん、ここに長居するのは危険です。早く地上へ戻りましょう」
「そうだね……」
 あたしはそう答えつつ、ミネアを見た。ミネアは、やっぱり今も微動だにせず、地面に倒れたままだった。オジサンはミネアを両腕で抱えあげた。
「ああ……ミネアさん、あなたはメガザルを唱えるために、一体どれだけ体力をすり減らしてしまっていたのですか。……こんなに、軽かったなんて」
 悲痛な面持ちでこぼしたオジサンのその言葉を、黙って聞いていることしか出来なかった。もしこの子に体力がなかったのは、メガザルを覚えたが為だったのだとしたら、なんでいつも一緒にいたあたしはそのことに気付いてあげられなかったのか……。
 オジサンはミネアの首が仰け反らないようにと、肘を張って彼女の首を支えてくれた。でも右腕だけはオジサンの太い腕からはみ出して地面に向かってだらりと下がっていたから、あたしは右腕を手に取り、その体の上にそっとのせた。ミネアの掌には、水晶球が割れたときについたのであろう小さな切り傷がたくさん残されていた。そして、この手に触れたミネアの腕は、さっきよりさらに冷たさを増しているように感じた。
 ああ……ミネア、顔も手も……こんなに傷だらけになってしまって、体力まですり減らして、そのうえ生命さえも……。
 あたしはもう、堪え切れなくて瞳から涙をこぼした。悲しくて、申し訳なくてミネアの顔を見てられなくて、咄嗟にしゃがんで、一心不乱に水晶の破片を拾い集めた。
「マーニャさん……」
 あたしの行動にオジサンはちょっと戸惑っていたようだったけど、
「ごめん。でも、これも、この水晶も……ミネアだから」
「……そうですね」


 水晶の破片を粗方拾い上げ、あたしたちは地上へと向かうことにした。一言で「地上」とは言うけど、そこまでの道のりは遠い。まずこの山を下って、宮殿を抜けて、そしてあの長い長い洞窟を進んでいかなくてはいけない。
 地面の揺れはさらに激しさを増した。あたしたちは無言のまま急いで山を下った。
 もう少しで山を下りきり、宮殿への入口が見えてきたその時、闇に覆われていたあたりの景色が、急にまばゆい光に包まれた。
 あたしたちはもう、すっかりこの暗さに目が慣れていたから、その眩しさは半端ない。これじゃあ目が悪くなっちまう。
 ギュッと目を閉じると、どこからか聞いたことのある声が聞こえてきた。
「よくぞデスピサロを倒し、進化の秘法を闇に封じ込めてくれた! 礼を言おう」
 声の主は、天空城でドッカと座っていた竜の神、マスタードラゴンだった。
「この世界は、じきに崩れてなくなるだろう。そうなる前に、お前たちを地上へと送り届けてやろう」
 マスタードラゴンがそう言い終わるか終わらないかのうちに、あたりはますます眩しくなった。お、送り届けてくれるのは嬉しいんだけど、眩しすぎるっての! もっと照明落としてよ!
「それとお前たち…………おこう」
 カミサマはさらに何かを言っていたみたいだけど、あたしにはよく聞き取ることは出来なかった……。


 気が付くとあたしとオジサンは、どこかの原っぱの上にペタンと座ってた。
 上を見ると、それまでのとは違う、澄み切った青い空が広がっていた。てことは、地上なのね、ここ。
 地面に目を落とすと、辺りは若草に覆われていた。そしてところどころ、白や黄色の小さな花が咲き、その周りを蝶がパタパタと飛んでいた。そうか、もう、春を迎えたんだ。あたしたちが闇へと潜ろうとしたときは、まだ雪のちらつく冬だったのにね……。
「ここは、エンドール城下町の外れの原っぱみたいですね……」
 あたしと向かい合うように座っているオジサンが辺りを見回しながらそう言った。そっか、エンドールか……。
 ああ、この澄み渡った青い空。春の訪れとともに芽吹いた緑たち。可憐な花。あたしたちは見事デスピサロを倒して、進化の秘法は黄金の腕輪ごと地底深くに封じ込めた。あたしたちが世界に平和をもたらした……ってことになるのか。
 ……でも、あたしの心は、全然澄み渡ってなんかない。春なんか来ちゃいない。むしろどんより曇って、吹雪いてるよ……真冬のようにね。

「ねえ、オジサン。ミネアは……」
 オジサンの腕に抱えられていたはずのミネアの姿がどこにも見当たらなかった。そしてあたしが持っていたはずの水晶のかけらも、やはりどこにもない。
「……絶対、絶対ミネアさんのことを離すまいと、抱えていたのに……そんな」
 オジサンは自分の両手を見てガクガクと震えていた。

 きっと、オジサンは悪くない。あたしだって、絶対に離すまいと思っていた水晶のかけらをなくしてしまった。オジサンを責める資格なんて、多分ない。
 でもカミサマ……あたしはアンタには文句を言うよ。なんで、どうしてミネアも一緒に連れてきてくれなかったんだ! カミサマならそれくらい出来たはずでしょ? こんなのって、ミネアが可哀そうすぎるよ。せめて、しっかりと供養して亡骸を父さんの隣りに埋めて、お墓を建ててあげたかったのに……それさえも許されないわけなの? そんなの酷すぎる。

 ミネア……どこに行っちゃったんだよ。


 ミネアは、一体どういう気持ちで、メガザルなんて呪文を覚えようと思ったのだろう。
 覚えたとき、何を考えたのだろう。
 もしかしたら、いつか自分がこの呪文を唱えるときがくると、予見していたのだろうか。
 あたしたちがやられて、あの子が1人残ったとき、何を思ったのだろう。
 どういう気持ちで、メガザルの呪文を詠唱したのだろう。
 これから確実に自分は死を迎えると分かる……それはどんな心境だったのだろう。
 あの子は、あたしたちの傷が癒えるのを見届けてから力尽きたのか、それとも唱えた瞬間に……。

 そんなことが、グルグルと頭の中を巡った。
 こんなことになるのなら、あの子が占い師になると言ったときに止めるべきだった。あたしと一緒に踊り子になろうって、無理やり勧めれば良かった。
 順番逆でしょ? 妹が姉さんより早く死んでどうするのさ。
 あたしたちは、もっとずっとずっと一緒にいられると思っていたのに。
 いつかお互いにいい人が出来て、それぞれに家族を持つことになっても、それでもずっとずっと、天寿を全うするまでって、思っていたのに……。

「ミネア……あたしは、あんたに何てお詫びを言えばいいんだ。元はと言えば、あたしが不用意にデスピサロの攻撃を食らっちまったから、こんなことになってしまったんだ! ミネアがこんなことになってしまったのは、あたしのせいだ! あたしの不注意が、ミネアの、たった一度しかない人生を台無しにしてしまった……。ミネアには、こんなあたしのことより、もっと自分のことを大事にして欲しかった……大事にして欲しかったのに! ごめん……ごめんよ……ミネアァァ!」
 あたしは地面に突っ伏して号泣した。額を地面に擦りつけて、芽吹いたばかりの草を土ごと掻き毟って、小さな子どものように、人目もはばからずに泣きじゃくった。


  姉さんお願い、泣かないで! 私は……


 そんなミネアの声が、聞こえた気がした。
 ああ、これは、ミネアが天国から最後の言葉を届けに来たってやつなのか? ならばあたしは、ミネアの最後の声をしっかりと聞き届けなければいけない!
 そう思って、腕で涙をぬぐって空を見上げようとした……が、その途中に目に入ったオジサンの表情に、うっかり釘付けになってしまった。オジサン……なにその顔。目ん玉ひん剥けそうなほど見開いて、口もポッカリ開けちゃって。怖すぎるよ。一体何を見たらそんな顔になるんだかと、あたしもオジサンの視線の先を追った。

 ……え?

 オジサン、ごめん。きっとあたしも今、オジサンと同じような顔になってるかもしれない。

「やだ、姉さんもトルネコさんも、まるでお化けでも見たかのような顔をして……」
 いや、悪いけど、ホントにお化けを見たのかと思ったんだよ。

 そう、あたしたちの視線の先には、ミネアが立ってたんだ! 手には、割れていないきれいな球状の水晶を持って。顔も傷1つ無くきれいだ。足も、勿論ちゃんとある!
「ミ、ミネア?」
 あたしはわき目もふらずにミネアの方へ駆け寄って、顔とか肩とか腕とか体とか、ペタペタ触ってみた。すり抜けない! 温かい! 確かにここに、生きて、ミネアがいる!
「ちょ、ちょっと姉さん、何してるの?! くすぐったいわよ」
 ミネアはそう言って身じろいだ。
「ミネアさん……無事だったのですね」
 オジサンの問いかけに、ミネアははにかみながら深々と頭を下げた。

 ミネアは、生きていたんだ! 

「ああ! ミネア……よかった」
 あたしは思わずミネアに飛びついた。
「姉さん……私のせいで辛い思いをさせてしまって、そこまで思い詰めさせてしまって、本当にごめんなさい」
 ミネアの声もまた、涙まじりだった。
「わたしは……わたしはまだ、姉さんと同じ世界にいることが、できるみたい」
 そう言ってミネアも、あたしにしがみついた。
「何言ってんだい! 当たり前だろう。ミネア……あたしが今、ここでこうしていられるのは間違いなくミネアのおかげだから、それは凄く、感謝しきれないほど感謝してる。でもこれからは、あたしは絶対自分の身を自分でちゃんと守れるようにするから、……だからもう二度と、メガザルなんて唱えようと思わないでよね。今度唱えたら、あんたのこと、どこまでも追いかけてって、とっ捕まえて、たっぷりこってりと説教するんだからね! だから絶対、唱えないでよね……」
「わかった……もう、唱えない。絶対に唱えないって、約束する」

 ミネアの手からこぼれて生い茂る若草の上に転がった水晶球は、太陽の光を浴びて眩しく輝いていた。



後編へつづく。

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