DQ4プレー記・ただ今のお題
<掃き溜めに鶴>

ルール
・4章はミネア(とオーリン)だけで進める
・5章、船取得までは勇者、ミネアのみで進める
・5章、船取得以降、トルネコ、ライアン、ブライ、ミネアで進める
・キングレオ戦、天空への塔のみ勇者使用可
・勇者は馬車内での生存状態可。アリーナ、クリフト、マーニャは棺桶
・ガーデンブルグでの棺桶人質可
・838861、8逃げ、透明気球等の裏ワザ禁止
・種や木の実類は使い切る


過去のプレー記(プレー記案内はこちら
[記念の二部作]
[01]20周年記念 [10]25周年記念
[女性勇者二部作]
[02]装備品 買わない盗まない [09]いろいろやりすぎ
[三人旅三部作]
[03]水戸黄門 [04]腹でん!(パラディン)と美人姉妹 [05]まどろみ無双
[柔剛柔の三部作]
[06]クレバーカルテット [07]益荒男四人衆 [08]クレバーカルテットDS
[勇者役トルネコの二部作](の予定)
[11]百花繚乱 [12]進行中


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2014年12月05日
 マーニャとロレンスによるステージの評判は瞬く間に街中に広がった。カジノに舞い降りた女神の踊りを一目見ようとカジノは連日の人だかり、普段遊技に興味を示さない者までもがカジノを訪れるようになったのだ。
 ステージにはたくさんの歓声と、そしてゴールドが煌びやかに乱舞した。それはまさに、マーニャたちの思い描いていた展開であった。
「ヤッホゥ! これなら好きなだけスロットを回せるわ!」
「マーニャ、ほどほどにしないとダメですよ」
「あははっ、分かってるって」

 そんなマーニャたちの噂は、もちろんスコットの耳にも入っていた。但し、彼女達がステージに立つ時間帯はちょうど仕事の時間帯と重なるため、自分の目で確かめたことはなかった。ミネアの占いの店も今や当たると評判、大盛況なのだ。
 スコットの耳に入っている、当然ミネアの耳にも入っているであろう。ところが、ミネアはそのことに一切触れることはなかった。ただ、何故かその表情が曇りがちであることはスコットの目にも明らかだった。
 何かあったのかと尋ねるも、ミネアは作ったような笑顔で首を横に振るだけだった。しかし察しがついているスコットはすぐには引き下がらなかった。
「あなたはいつも夜遅くまで働き、朝も早くから教会で働いている。身体に障っているのではないか?」
「いいえ、それは違います。こういうのは慣れていますから……」
 スコットの問いかけに否定しつつも、ミネアは一つ息をつく。
「実は……私には姉がいるのですが、最近全然教会へ戻ってこないのです」
 その口から初めて姉という言葉が出てきたのだ。
「お姉さんというのは、もしかしてカジノの……」
 ミネアは黙って頷いた。
「この時間ならまだステージをやっているはずだ。それならば今日はこの辺で切り上げて、様子を見に行ってみてはどうか?」
 スコットが助言するが、ミネアは無言でうつむいていた。暫くの間沈黙が続き、ようやく、ミネアは重い口を開いた。
「私、カジノに行くのが怖いのです」
 消え入るようなミネアの言葉にスコットは眉をひそめた。がたいの良いゴロツキたちに怯むことなく対応する度胸がありながら、カジノが怖い?
「その、怖いというか、人の多いところが凄く苦手で……」
「こんな繁華街で店を出しているのに、人が多いところが苦手なのか?」
「仕事中は集中しているので良いのです。でもそうでないときは息が詰まりそうで……だからむしろ長い時間働いていた方が気が楽なのです」
 ミネアはため息をついた。
 出会ってから今日まで、何事もソツなくこなし、それが却って堅苦しいとすら思わせていたミネアにもそんな一面があるのかと、スコットは思わず心の中でフッと笑った。
「ならば俺が一緒に行けば良いことだ。俺は今、あなたの用心棒なのだから。あなたが一人では心許なければ、その不安を解消するのが俺の仕事。もちろん、行く行かないを決めるのはあなただが」
 そう伝えた途端、ミネアの表情がぱぁっと明るくなった。
「良いのですか?」
「ああ、もちろん」
 スコットは笑顔で頷いた。

   ◇◇◇

 カジノの奥の方には人だかりが出来ていた。スコットは過去に何度かカジノに足を運んだことがあったが、こんなにも人でごった返している光景は初めてであった。
 といっても、各遊技施設はそれほど混雑しているわけではない。混雑しているのは言うまでもなく特設ステージ近辺であった。カジノの常連客から普段カジノに縁がない者までがステージの見える場所に群がり、カジノの入口からはステージの様子が見えない程の人の壁である。その人壁の上がやけにきらきらと輝いている。特別な照明かとも思えたが、光のもとは宙を舞うゴールドやカジノのコインだった。
「凄まじい盛況ぶりだな……」
 スコットは唖然としつつ呟いた。隣りのミネアは口を固く結んで無言だった。どことなく緊張の色も見える。
 大丈夫かと声をかけられ、ようやくぎこちなく表情を崩すほどだった。
 ステージに向かって歩いていくと、歓声に混じって竪琴の音色が耳に入ってきた。
「あれはロレンスの竪琴か。面白い縁だな。あなたのお姉さんと組んでいるのは俺の商売仲間のようだ。まあ、俺は専業、あいつは兼業で、今やってるアレが本職みたいなものだが」
 いくらステージに近づいても、人だらけで肝心のステージ上の人物を見ることは出来ない。
「さすがに割り込むのはマズいかな」
 ミネアも頷いた次の瞬間、ステージから声が上がった。
「みなさーん! 今夜も来てくれてありがとね。今日もあっという間に最後の一曲になりました。いつものアレ、いくわよ!」
 それはマーニャの声であった。そして、その声に覆いかぶさるような大歓声。
「待ってました! 勝利の踊りだー!」
「こいつを見れば、今夜は大勝利間違いねぇ!」

 ――あぁ、きっとそうやって、毎日毎日根拠のない縁起を担いで、大金をみんなカジノで消してしまうのね。
 ミネアは深く溜息をついた。

「どうやら次でステージも終わるようですから、終わってから姉のもとへ行ってみます」
「それが良さそうだ」
 2人は熱狂渦巻くステージ一帯から少し離れた場所に立ち、終了を待つことにした。

 ステージが終わると観客はあっという間に散り散りになった。ロレンスとマーニャが楽屋へ入っていくのを確認し、ミネアたちも楽屋へと向かう。ドアをノックすると中からロレンスと思われる男の声が聞こえてきた。
「すみませんね、関係者以外立ち入り禁止なんです」
「俺だよ、スコットだよ」
 スコットが答えると、すぐにドアが開いた。久々に会った友を笑顔で迎え、斜め後ろの女性に驚きの表情を見せた。
「もしかして、マーニャの妹さん? うわ、やっぱ似てるなぁ」
 そんなロレンスの声が聞こえてか奥にいたマーニャもすぐにやって来て、久々に会った妹におどけた表情を見せた。
「これは驚きだわ。まさかあんたがカジノに来るなんて」
 相変わらずあっけらかんとしているマーニャに、ミネアは眉根を寄せつつ詰め寄った。
「驚きだわ、じゃないわよ! 一体どういうつもりなの、全然教会にも戻ってこないで」
「教会はあたしには居心地が悪い。今は自分で稼いで、宿屋に泊まってるの。でもさ、あんたを見て、あたしゃ安心したよ」
 マーニャの物言いにミネアはさらに眉をひそめた。
「あたしのいない間に、あんたもそうやってしっかりと男をつくったんだからね。正直ホッとしたわ」
 マーニャはニヤリと笑った。
「お、男をつくったって……違う、彼は、スコットさんは私の店で用心棒をしてくださっている方なのよ。そんなこと言ったらスコットさんに迷惑でしょ!」
 スコットには斜め前にいるミネアの表情はよく見えなかったが、流れるような髪からちらりと覗かせる耳が真っ赤だったことに気付いた。普段の冷静沈着な振る舞いとはまるで違っていた。
「えー? なんだ、ただの用心棒なの? つまんないのー。……まあ、確かにちょっとトシが離れすぎかなとは思ったんだけどさ。
 でもね、言っとくけど、あたしは別に金稼ぎのためだけにこのステージをやってるわけじゃない。人が集まってくれた方が捜している奴の手がかりを見つけやすいだろう?」
 マーニャが真顔になってそう言った途端、ガチガチに強張っていたミネアの肩の力が抜けた。
「え? そうだったの?! ……で、見つかった?」
「いんや、今んとこ見つかってない」
「……真面目に探してるのよね?」
 ミネアは半信半疑といった表情でじっとマーニャを見ていた。
「疑り深い子だねぇ。あんたよりちょっと若い子でしょ? ココの客層とは結構ズレてるから見ればすぐ分かるわよ。でも今のところそういう子は見てないわ」
「マーニャ、踊りながらお客さんの把握までしていたのかい? すごいなぁ」
「あったりまえでしょ! あたしゃプロなんだから」
 どんなに楽しそうに、情熱的に踊っても、心の中にはちゃんと冷静な部分を持つ。それがプロの踊り子……マーニャが常々口にしていたことを思い出した。姉の踊り子としての誇りをミネアは即座に感じ取った。
「ごめん……分かった。とりあえず元気そうだし安心したわ。でも、たまには教会にも顔を出してよ。姉さんにとって教会の居心地が悪い以上に、私にとってはこの場所がたまらなく苦手なんだから」
「分かったよ、たまには行くから。だからあんたは無理してココに来なくていいわよ」
 マーニャはミネアの肩をぽんぽんと叩いて、いつになく優しい笑顔を浮かべた。ミネアも照れくさそうにはにかんだ。
 そうして姉妹は別れた。男2人も軽く挨拶を交わし、スコットはミネアとともに楽屋を去った。
「マーニャが踊るのは人を捜すためでもあったんだ。初耳だったなぁ」
「そうよ。でも九割方はお金稼ぎ目的だけどね。コレはミネアには黙っててよ」
 ロレンスは苦笑いした。

   ◇◇◇

 ミネアたちはカジノを出た。カジノの上の階は宿屋のロビーと酒場があり、やはり多くの人で賑わっている。
「スコットさん、どうもありがとうございました。お店の用心棒というお約束なのに、カジノにまで……ご迷惑をおかけしてごめんなさい」
「そんなの気にすることないですよ。俺は全然迷惑じゃない。ついでに、あなた方がさっき言っていたことも、全然、迷惑じゃない。むしろ光栄なくらいだ」
 スコットは屈託なく笑った。ミネアは思わず顔を赤くして、スコットを見た。
「……ごめんなさい。姉は私のことをからかってばかりなので」
「お姉さんにとって、あなたはとても可愛い妹なのでしょう。俺に妹はいないが、もしあなたのような妹がいたらと考えれば、お姉さんの気持ちはよく分かる」
 いたずらっぽく笑ってそう話すと、ミネアはさらに顔を赤くした。
「スコットさんは、意外とお上手なんですね……」
「そんなことはないさ。……さて、もう夜も遅いし、教会まで送っていきましょう」
 ミネアははにかみながら頷いた。
 こうして2人は星空のもと、教会へと歩いていった。

 −つづく−

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2014年12月08日
 数日後、スコットは週に1度の礼拝のために教会へと向かっていた。早朝で人もまばらな城下町一番の大通りを歩いていると、前方から女性が一人近づいてくる。それはミネアの姉・マーニャであった。
「あら、あんたはミネアの用心棒」
「おはようございます。ミネアさんに顔を見せに行ったんですか?」
「そうよ。あの子心配性だから。そしたら、朝も早くからせっせと働いてたわ。ホント、馬鹿がつくほど真面目なんだから」
 苦笑いするスコットの顔を下から覗き上げるようにして、マーニャは話を続けた。
「用心棒、仕事は昼からだろ? こんな朝っぱらからミネアに会いに行くの?」
「今日は週に一度の礼拝の日でしてね」
 さらりとかわすスコットにマーニャはつまらなそうな顔を見せた。
「へえ、見かけによらず信心深いのね。ところで用心棒、ミネアってさぁ、いい女でしょ?」
「ええ。ミネアさんは大変魅力的な女性だと思いますよ」
 突然の質問にもスコットは笑顔で答える。
「まあ、あたしの妹だから当然なんだけどね。で、アンタ的にどうよ?」
「毎晩食事まで用意してくれる。彼女は素晴らしいクライアントです」
 あくまでサラッと、スコットは答える。
「ふぅん。あんた意外と食わせ者なんだね」
「伊達にロレンスの腐れ縁はやってませんよ」
 2人でケラケラ笑った。まだ静かな城下町に笑い声だけが響いた。

「ところで用心棒、あんたがミネアと組んでからさ、あの子、お店休んだことある?」
 スコットは静かに首を振った。
「やっぱりねぇ。あたしに似て働き者だから」
「働く理由は随分と違うようだが」
「働くことに貴賎なんかないでしょ?」
 おどけるスコットに、マーニャもしれっと返す。
「ごもっとも。それにしても、ミネアさんの働きぶりには頭が下がる思いだ。あなたもカジノで売れっ子になった今、あそこまで働く必要もないだろうに」
「は? それ、どういう意味?」
 ――しまった。このことはシスターから口止めされていたんだった!
 そう思ってももはや後の祭り。スコットは素直に答えることにした。
「あなたはミネアさんが稼いだお金を持ち出してカジノで散財していたのだろう? そのために彼女は早朝は教会、昼からは占いの店でずっと働いていた。でも今はもう、その必要も無いはずだ。……そういう意味です」
「えー? 何それー! ミネアがそう言ったの?」
「いや、ミネアさんは一言もそんなことは言っていません。言ったのは……」
 あっけらかんとした口調で答えるマーニャに、スコットは教会のシスターから聞いたことを告げた。
「あのシスターか。まったく、大人しそうな顔してあるコトないコトベラベラ喋って……。いい? 用心棒、それはちょっと違う! まったくとは言わないけど、ちょっと違うんだからね」
 次から次へと言葉を繰り出すマーニャは実に表情豊かで、滅多に表情を崩さないミネアとはまるで対照的だ。夜さえも四方八方ギラギラと照らす太陽と、進む道をほのかに照らす月、まさしく好対照な姉妹だと、眼前で手足をばたつかせながら主張するマーニャを見ながら、スコットは考えていた。
「なるほど、ちょっとどう違うのか、お聞かせ願いたいものだ」
 ニヤリと笑うスコットに下唇を突き出しつつ、マーニャは答えた。
「たしかにあたしはあの子のお金を持ち出したよ。だからその分のお金を稼ぐって意味も、少しはあったかもしれない。でも、本当の理由は人捜しさ」
 ――人捜し、そう言えばあのときもそんな話をしていたな。
 スコットは無言でマーニャの話に耳を傾けた。
「ワケあって、あたしたちはとある人物を探してる。ココにいればその人物に会えることは、ミネアの占いで出ているんだけど、だからってロレンスみたいに悠然と構えるだけじゃあ、見つかるモノだってなかなか見つからないだろう?」
 スコットは思わず笑みを漏らした。今頃ロレンスはくしゃみでもしていることだろう。
「でもって、こっちから探し回るのも骨が折れる。ならば、多くの人がコッチに集まるように仕組めば楽ってもんさ」
 姉妹がエンドールへやって来た当初、王女の結婚式はまだ始まってはいなかったため、何かの店を出す条件は厳しかった。だからミネアはまず教会での仕事に就いたのだった。教会には祈りを捧げる者、懺悔をする者、体調が思わしくない者、さまざまな人間が集まる。教会で神父の手伝いをしていれば、目的の人物を巡り合える可能性も高まると踏んでいた。
「でもさ、あたしはあの子みたいに治療術の心得もないし、教会は退屈でね」
「それでついついカジノに入り浸ったというわけか……」
 マーニャは唇を固く結びながら頷いた。
 しかし、結婚式の詳細が決まると、露店の出店条件は緩くなった。教会にも確かに人は集まるが、占いの店の方がもっと多種多様の人間が集まる。それでミネアは占いの店を出すことに決めたというのだ。
「なるべく多くの人間に集まって欲しい。なるほど、だから評判になるほどの腕前にも関わらず1回10Gという安価で占っていたわけか」と、スコットは納得したが、
「それは半分正解、半分ハズレ。あの子は人ごみが大嫌い。嫌いだけど、人がいないところでは占いは出来ない。占うこと自体は好きみたいだからね、働くことで気を紛らわすんだ。つまり、仕事時間中は絶えず占っていたいわけ。高いと客足が減って空き時間が増えるでしょ? あの子はそれがイヤなんだよ」
「……それはまた随分と凄い理由だ。でもそれでは体は休まらないだろうに」
 だが、たとえ休んでも、その場所が繁華街ならば真の休息は得られないであろう。たとえ教会の中で過ごしたとしても、教会はそれこそ年中無休で開いている。ミネアのことである、神父やシスターが働いている中、自分だけが休むという選択を取るとも思いにくい。
「そこでだ、用心棒、今あんたはミネアの用心棒なワケでしょ? ミネアを守るのが今のあんたの仕事ってワケよね?」
 スコットは勿論だとばかりに頷いた。
「だったらあの子を休ませて、身体のことも守ってあげてよ。あたしの言うことはきかなくても、あんたの言うことなら聞いてくれるかもしれないしね」
「……そうだろうか?」
「そうさせるのがあんたの仕事だろ。ひとつアドバイスしとくよ。あの子は人ごみは嫌い。逆に、人ごみの少ないひっそりとした場所は好き。自然に囲まれたトコとかね。でもあたしたち、ここらの地理には疎い。あんたはここで暮らしてるんだから、少しは詳しいだろう? だからそういうトコ案内して、休ませてあげてよ」
 ――この姉上殿、適当そうに見えて妹に対して並々ならぬ愛情を持っているようだ。そんな思いをマーニャに告げると、彼女は少し照れくさそうにした。
「当たり前だろう。あの子とあたしは世界で2人だけの肉親なんだから……」
「承知した。それではミネアさんに話してみよう」
「あたしはね、ミネアの用心棒があんただからこそこんなお願いをしたんだからね。あんたは食わせ者だけど、きっと誠実だ。あたしは男を見る目には自信がある。頼んだよ、スコット」
 初めてスコットの名を呼んだマーニャはニヤリと笑いながら肩でスコットを横から突付いた。
「お任せください。姉上殿」
「わお! あたしゃもう、あんたの姉さんかいっ!」
 またもや2人で大笑いしたのだった。

 −つづく−

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2014年12月16日
 その日の午後も、ミネアの店は大盛況。相変わらず露店の前には長蛇の列が出来ていた。ミネアはテキパキと的確に、かつ丁寧に客をさばき、スコットもまたゴロツキどもが近寄ってこないか、露店の前を歩いたり、ときに木立に寄りかかりつつ、さり気なく穏やかにふるまいながらも、眼光は鋭く辺りを見張った。スコットがいることで、最近ゴロツキたちもすっかり近寄らなくなったが、隙を見せればすぐさま姿を現し、ミネアの邪魔をするであろう。油断は禁物である。
 城内で連日続く結婚の儀式は今日も終わり、街に昼間に劣らず賑やかな夜が訪れた頃、珍しくミネアの店に客足が途絶えた。客をさばき続けることで街の喧騒を忘れることが出来るというマーニャの言葉を思い出したスコットは、あたりにゴロツキが隠れていないかを確認しつつ、露店へと入った。ミネアはどこか落ち着かない様子で椅子に座っている。
「客足が途絶えるなんて珍しい」
「そうですね。何かのめぐり合わせなのか、ときどきこういうこともありますよね。でも、ちょっとした休憩になって良いのかも」
 そうは言うものの、ミネアの表情は冴えなかった。そんなミネアを見て、スコットはあることが頭に浮かんだ。
「そうだミネアさん、休憩が済んだら、俺を占っていただけないだろうか?」
 スコットの言葉に驚きを見せたミネアだったが、すぐに笑顔になった。
「勿論です。今すぐでも構いませんよ」
 ミネアに促され、スコットは客用の椅子に座り、ミネアと相対した。2人の間にはミネアがいつも大事にしている水晶球が専用の台の上に鎮座している。初めて占いというものを受けるスコットはにわかに緊張してきた。
「それでは、どのようなことをお知りになりたいですか?」
「俺は今のこの用心棒という仕事を気に入っている。だが、三十路を過ぎた今、果たして生涯続けられる職業であるのだろうかと悩むこともあるのです」
 用心棒の仕事は今のような街中での仕事だけではない。ときには洞窟に潜ったり、凶悪な魔物と戦うこともある。今はまだ若く、気力も体力も充実している。剣の腕も、咄嗟の判断力も、他の同業者より上であるという自負もある。しかし、ある程度の年齢がきて体力が衰えてきたときに、どのくらい経験でカバーできるのか、今と同じような働きが出来るのかと考えることも少なくはない。だからミネアが占い師だと知ったときに、いつか見てもらえればと、スコットは思っていた。
「わかりました」
 ミネアは一言答え、水晶球に視線を移した。手をかざすと水晶は鈍く輝きだし、ミネアの顔を光が照らした。真剣な眼差しと相まって、それは鬼気迫る表情にすら見え、スコットは思わず息を飲んだ。水晶には何かが映し出されているのだろうかと視線を移すも、スコットにはただ光を放つ水晶の球にしか見えない。一体ミネアには何が見えているのか、心臓がドキドキと高鳴った。どんな魔物と相対するよりも緊張するような感覚。自然と強く握られた掌がじっとりと汗に濡れた。
 暫くすると水晶の光はおさまり、ミネアの表情も穏やかなものに戻っていた。
「あなたは以前、右肩に深い傷を負っていますね」
 スコットは思わず目を見開いた。

 ――たしかに、俺の右肩には傷がある。

 スコットはかつて、用心棒としてとある洞窟に潜ったときに、悪霊の乗り移った剣・人食いサーベルの攻撃を受け、右肩に大怪我を負った。やはり同行していたロレンスの治療呪文により命を落とすことはなかったが、肩には今も傷跡が残っている。もちろん普段は衣服に隠れているのでミネアも見ようがなかったし、右腕も不自由なく動かせている。しかし、それをいとも簡単に見抜かれてしまった。スコットは恐怖さえ覚え、思わず左手で右肩に触れた。
「今現在、腕を動かすこと、剣を握って戦うことに特に支障はないようですが、しかし、時々傷が疼いたりしませんか?」
「確かに……」
「おそらく当時の治療が不完全だったのでしょう」
 たしかにロレンスは治療の専門家ではないから、あり得ない話ではない。あのときはあくまで応急処置だった。本当はその後に専門家にしっかりと治療してもらえば良かったのだろうが、あの頃は忙しかったし、若かったこともあり、動くのだから問題ないと甘く見ていた面もあった。実際数年経った今でも、腕は普通に動かせている。やはり問題はあったのか……スコットは頭の中であれこれと思案をめぐらせた。
「俺の右肩は、この先どうなるのだろうか」
 視線を落としながら吐き出した問いかけに、ミネアは暫く間をおき、言葉を選びつつ、答えを出した。
「今すぐどう……ということはありません。この先、ある程度の時期までは今までどおりの任務もこなせるはずです。でもやはり、年齢を重ねるにつれ、その傷はネックになっていくでしょう。そうなると洞窟探検や魔物と渡り合うような激しい任務は厳しくなるかもしれません」
「そうですか……」
 スコットは少なからずショックを受けた。同時に、最大の商売道具である己の身体のメンテナンスを怠ったことが腹立たしかった。
 口には出さずとも落胆の表情を滲み出すスコットを見て、ミネアは再び水晶を覗きつつ思案を巡らせた。そして、何かの糸口を見つけ出したのか、スコットに視線を戻して話し出した。
「スコットさんのご実家は農業を営んでいらっしゃるのですね。スコットさんはそちらの経験は?」
 これまたズバリ言い当てられた。しかしスコットは農家として一生を終えるのが嫌で、城の兵士になることを夢見て家を飛び出した。城の兵士の夢も破れ、傭兵稼業をしているわけだが、傭兵という仕事には誇りを持っていた。
 ――まさか農家にでもなれというのか。今更、どの面下げて実家へ戻れようか。
「ガキの頃、親父に散々手伝わされましたよ」
 スコットは半ばぶっきらぼうに答えた。
「なるほど。それでは同じ用心棒でも、一個人ではなく、一度に大勢を守ることを仕事としてみてはいかがでしょう?」
 ミネアの提案は、スコットが想像していたものと全く違った。というより、ミネアが何を言っているのかよく分からなかった。
「エンドールのような立派なお城の城下町でしたら、城の兵士が町を守ってくれますが、お城から離れた小さな町や村になると、なかなかお城の目が届かないでしょう。そんな村全体を守れるような仕組みを作るのです。人々のいざこざを仲裁したり、犯罪が起きないように見回ったり、今あなたが行っている仕事に比べると地味かもしれません。でも、誰かを守るということに変わりはないと思うのです。
 もちろん、あなた1人でそれを行うのは大変かもしれません。でも、普段は仕事をしている若い人たちと組織を作るなどの手段はあります。その方があなたの身体への負担も和らぐでしょうし。
 どうやってお金を稼ぎ出すかというのも問題になると思うのですが、用心棒の組織が軌道に乗って、村からいざこざや犯罪が減れば、村の方たちから費用を負担してもらう仕組みも作りやすくなると思います。ただ、こちらはそう簡単には軌道に乗らないかもしれません。そんなときこそ、農業の経験が生きてくるのではないでしょうか?」
「つまり、兼業ということか?」
 ミネアは頷いた。
「この方法でしたら、魔物が村にまで入ってこない限りは右肩に過度な負担がかかるようなこともなく、長く続けられると思うのです。あなたの目標であった『お城の兵士』とはいきませんが、言うなれば『町の兵士』……でしょうか。
 もちろん、この話は単に私の提案ですので、参考程度に聞いていただければ良いのですが」
 ――城の兵士になりたいという俺の夢をも、ズバリ当てられてしまったか。
 スコットは思わず舌を巻いた。
「これは連日長蛇の列が出来るわけだ。将来起こるであろうことを告げるだけではなく、そういう提案までして貰えるとは……」
 スコットは目を輝かせ、これまでにない柔らかな笑顔を見せた。そんなスコットを見て、ミネアは占い師冥利につきると喜んだ。
「占い師にとって未来を見通すという力は、勿論一番大切なことです。でもその未来をただ告げるだけでなく、それが思わしくない未来だったときに、力になれることもまた大切だと思うのです。良くない未来を告げて落ち込ませるだけだったら、それは占い師としてどうなのでしょうか。
 ただその助言は、人生経験が豊かでないとなかなか上手にいきません。だから私は、もっと上の世代の同業の方から見れば、まだまだ未熟です。そういう点から見ても、この仕事はまさに一生向上心をもって続けられると思っています」
 ミネアはそこまで話すと、一旦目を閉じて1つ息をつき、再び目を開くと今度は伏目がちに視線を落とした。
「それでも、私自身も将来のことについては悩むことがあるのです」
 スコットは眉をひそめた。
「この商売を始めてもう何年も経つのに、いまだにこの賑やかな雰囲気に慣れない。もしこの性格がずっと直らなかったら、いつかこの息苦しさに押し潰されてしまうのではないかと、不安になるのです」
 瞳に暗い影を落とすミネアを見て、スコットは今度は自分が力を貸さないといけないと強く思った。
「ならばあなたも、一個人ではなく、一度に大勢を占えば良いのさ」
 思いがけず提案を受けたミネアは、あっ気に取られた。
「あなたの言うとおり、俺は農家のせがれだ。だから小さい頃よく見てきた。精魂込めて育てた作物が、収穫直前の大嵐で一瞬にして荒らされてしまったときの親父の落胆ぶりを。もしあのときあなたのような占い師がいて、先の天候を知ることができたら、いくらでも対処のしようはあったかもしれない。村を救ってくれる、みんなの悩みを聞いてくれる占い師、確かに1人幾らで見るより稼ぎは少なくなるかもしれないが……」
 今度はミネアが瞳を輝かせた。
「私は……人にそういう提案をしておきながら、自分のことには全然気付かなかったのですね」
「お役に立てて良かった。でもあなたのことだから、自分のことはとっくに占っていたのかと思っていたよ」
「私は、自分のことは余計な雑念が混ざってしまって冷静に客観的に占うことができないのです」
「なるほど、そういうものなのか。世の中なかなかうまくはいかないってことだ」
 2人、顔を見合わせて笑った。そんな和やかな雰囲気。スコットは今が良いだろうと考え、切り出した。
「ミネアさん、明日俺と一緒に出かけないか?」

 −つづく−

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2014年12月28日
「ミネアさん、明日俺と一緒に出かけないか?」
 突然の誘いに、ミネアは唖然として言葉を失った。
「あなたは店を始めてからまだ一度も休んでいない。しかも、朝は教会でも仕事をしている。それではそのうち身体を壊すといけない。たまには休んだ方が良い」
 スコットは笑顔で語った。
「でも、休みをこの街の中で過ごしたら、あなたの身体はあまり休まらない。だからもう少し静かなところへ一緒に行きませんか?」
 エンドール城の東には大きな川が流れており、河川敷が遊歩道になっていた。遊歩道は人通りが多くも少なくもなく、緑豊かでボンモール地方へと繋がっている。
「ちょうど5日ごとの契約は今日までです。更新は明後日にして、明日1日はお互い仕事を忘れてゆったりと過ごすのも悪くないと思うが」
 ミネアはちょっと考えて、笑顔で頷いた。
「そういう場所なら、心も体もゆっくりと休まりそうです。スコットさんにとっても久々の休みになるのに……気遣ってくださってありがとうございます」
「あなたのお役に立てるのなら、俺にとってもよい休日になるであろう」
 それは「ミネアの用心棒」としての思いと、ビジネスを度外視したスコットの思いだった。ミネアは顔をほのかに赤らめ、ぎこちなく笑みを浮かべた。

 そんなとき、露店の入口前で誰かがうろうろしていることに気が付いた。露店はテントのようになっていて、入口の幕の下半分が左右に開かれた状態なので、その人物の下半身のみが見えていた。ところどころ泥のついたブーツから伸びる脚の線を見るに、人物は女であるようだった。スコットとミネアがゆっくりと外に出てみると、その人物はもじもじしながら2人を見た。まだ少女であるように見える。比較的新しいなめし革の鎧と、ちょっとくたびれた革の帽子、腰には使い古された銅の剣を下げていた。どうも冒険者のようである。緑色の豊かな巻き毛は帽子から溢れるかのようだ。腕も脚も、その大部分は日焼けした素肌が露出していて、皮の手袋をはめた左手には羽根の付いた何かがギュッと握られている。
 明らかに冒険者の出で立ちをした1人の少女、大きな瞳に深く悲しい蒼をたたえていた。そんな少女に、ミネアは優しく語りかけた。
「占いはいかがですか? 1回10ゴールドであなたの未来を占って差し上げます」
 未来という言葉に少女は目を見開いた。しかし、占ってもらうか否か、決めかねているようだった。
「この方の占いはよく当たる、良かったらあなたも占ってもらうといい」
 スコットの言葉が背中を押したのか、少女はミネアに10ゴールドを手渡した。その様子を見届けたスコットは露店から離れ、ミネアは少女を連れて店へと入った。

 それから暫く経ったとき、露店からミネアの驚くような声が聞こえてきた。今までにミネアが仕事中にそんな声を上げたことはなかった。一体何が起きたのか、あの少女は一体何者だったのか。スコットににわかに緊張が走った。いざというときに、すぐに剣を抜けるように準備を整え、静かに露店に近づく。すると、ミネアが店から飛び出し、大急ぎで教会へ入っていった。一瞬の出来事であったが、見た限りケガなどはないようであった。スコットは剣の柄に手を当てつつ、露店を覗いた。中では少女が呆然と立っていた。
「一体何があった」
 スコットは鋭く少女に問うた。少女は首を横に振りながら答えた。
「占い師さんが、わたしの顔と水晶球を見るなり驚いて……教会の神父さんに事情を説明しないといけないからここでちょっと待っててと言われたの」
 ミネアは彼女に一体何を見たのだろうか。
「ほかに何か言われなかったのか?」
「わたしの背後に、いくつもの小さな光があって、その光がどう……とか言っていたみたい。でもわたしには意味がよく分からなくて」
 スコットと少女が会話をしているうちにミネアは小走りで戻ってきた。
「ああスコットさん、ごめんなさい。せっかく休みのお誘いをいただいたのに、私は、旅立たなくてはいけなくなりました」
 ミネアは申し訳なさそうにスコットに告げた。あまりに突然のことに、スコットは事態を飲み込むことが出来なかった。
「私はずっと、人を捜すためにこの地で占いの店を出していました。それが、こちらの方なのです」
 ミネアとマーニャが誰かを捜していたという話はスコットも知っていた。でも誰を捜しているのかまでは聞いていなかった。それが、こんな幼い少女だったとは、想像もしていなかった。
「あなたには、事前にしっかりとお話しておくべきでした。私たち姉妹は、父の敵討ちのために故郷を離れ旅をしていました。一度は仇を追い詰めたのですが、討ち果たすこと叶わず、故郷を逃れてこのエンドールへやってきたのです。父の仇の背後には得体の知れない巨悪がついていて、私たちだけでは到底太刀打ちできない。でも同時に、そんな巨悪を打ち破る者もまた存在するのです。だから私たちは、ずっとその方……さだめの勇者様を捜していました」
「その勇者というのが、彼女だというのか」
 ミネアは力強く頷いた。少女は2人のやりとりをきょとんとした表情で見ていた。
「勇者様に導かれる者は、私たち以外にもまだ複数います。だから私たちは彼らを探さないといけません。スコットさん、短い間でしたが、本当にありがとうございました。あなたのおかげで、安心して仕事に専念することが出来ました。私に色々と気を使ってくださって、とても嬉しかった。唐突に、こんな形でお別れすることになってしまい、なんとお詫びすれば良いか……」
「……そんなこと、気にしてはダメだ」
 心の準備など出来ているわけでもなく、様々な思いが去来していたスコットだったが、ここでミネアの足止めをするようなことは絶対に出来ない。スコットはそう割り切るしかなかった。
「探していた人が見つかったんだ、良かったではないか! さあ、早くお姉さんのもとへ行きなさい。露店のテントは俺が片付けておこう」
「え……でも、契約書の3ページに依頼主の持ち物には一切関与しない……って」
 困惑気味のミネアを見て、スコットは思わず笑ってしまった。
「あの文面を全部読んだのか? そんなクライアントは多分あなたが初めてだ。以前すこぶる頭の切れる、したたかな商人の用心棒をしたことがあったが、彼でさえそこまで読んではいなかったな。
 とにかく、今はそれどころではない。そんなこと気にすることはない。早く行きなさい。多分マーニャさんは今日もカジノのステージでしょう。勇者殿、ミネアさんはカジノが苦手です。しっかり守ってあげてください」
 少女はにっこりと笑って頷いた。大きな瞳から悲しみの色が薄らいでいる様子にミネアも表情を和らげた。そしてミネアはスコットに向かって深々と頭を下げ勇者とともにカジノへ向かって歩き始めたが、10歩くらい進んだ後、勇者をその場へ待たせて、スコットのもとへ戻ってきた。
「スコットさん、もし、私がやるべきことを成し遂げ、無事生きて戻ることが出来たなら、そのときに……川辺の散歩に連れて行ってくれますか?」
 ミネアの言葉に、スコットは一瞬呆然としたが、すぐに笑顔を見せ、力強く頷いた。
「ああ、勿論だ。約束する。だからミネアさんも、絶対無事に戻ってきてください」
「分かりました。私もお約束します」
 ミネアはそう言うと、スコットの前に小指を立てた右手を差し出した。しかし、その意味をスコットは分かりかねた。
「やはりエンドールの方にも馴染みはないのですね。前に、ソレッタから来たというお客さんから聞いたことがあるのですが、『指きり』という、互いの小指を絡めあって約束を誓う儀式みたいなものがあるそうなのです。私は必ず、生きて帰ってくると約束します」
 その意味を知ったスコットも、右手を差し出し、ミネアの小指に自分の小指を絡めた。
「あなたが命を賭して戦っている間、俺も自分の仕事を全うして、あなたを迎えられるように約束する」
 その儀式はただ小指と小指が触れ合うだけのものだった。しかしスコットはその儀式を通じて、もっと深くミネアと触れ合っているように感じられたのであった。
「俺はこれからずっと、教会での礼拝のたびに、あなたの旅の無事を祈ることにしよう」

 2人は絡めた指をほどき、お互いに笑顔を見せ、それぞれの道へと歩き出した。

   ◇◇◇

 スコットがテントをばらし終えた頃、彼のもとにロレンスがやって来た。
「2人とも、行っちゃいましたね」
「そうだな」
「お互い、明日からまた職探しですね」
「そうだな……。ところでお前、マーニャさんにちゃんと別れの挨拶はしたのか」
「やだなぁ、そんなの当然じゃないですか。まさかスコットはし損なったとか?」
「バーカ、そんなわけないだろう」
 スコットはロレンスに背を向けて、ばらしたテントを畳みはじめた。
「スコット、背中が泣いてますよ。よほどショックだったんですねぇ」
「そりゃ、失業すれば誰だってショックだろうよ」
「そういう意味ですか。僕はてっきりデートに誘って玉砕……とかだと思いましたよ」
「彼女はただのクライアントだ。お前、くだらないことを言っているヒマがあったら手伝えよ」
 ムッとした声のスコットにロレンスはニヤッと笑みを漏らしながらテントの片づけを手伝った。
「ロレンスはマーニャさんと再会の約束とかしたのか?」
「ええ、ぜひまた一緒に仕事したいって言ってくれました。無事戻ったらモンバーバラ劇場の座長さんに話をつけてくれるって。僕も将来はモンバーバラに移住かなぁ」
 ロレンスは満更でもないような表情をしていた。
「指きりはしたか?」
「は? ゆびきり? 何ですかそれは」
「……いや、分からなきゃいいよ」
「なんですかそれ、気になるなぁ」
 あれは、ロレンスたちも知らない自分と彼女の儀式、そう思うと自然に顔がほころんだ。ミネアに指きりを教えたソレッタの人間に感謝すらしたくなる思いだった。
「で、スコットはミネアさんと何か約束したんですか?」
「それは言えないな」
「えー!? 人から聞きだしておいて、それはひどい」
「俺が思うに、聞かれたままにペラペラ喋るお前が悪い」
 煌びやかな夜の繁華街で男2人、屈託なく笑った。
「ロレンス、久々に一杯やるか。俺はこいつを片付けてから行く。お前は先に行っててくれ」
 ロレンスは頷き、酒場へと歩き出した。
 そしてスコットもまた、テントの束を肩に担ぎ、城下町の雑踏の中へと消えていったのだった。

 −おわり−


   ◆◆◆

 というわけで、4.5章終了です。最後までお付き合いくださりありがとうございました。
 4章終了から5章での勇者と姉妹の合流まで、(プレー時間的に)ほんの少しの間ですが、その間エンドールで起こったかもしれないエピソードを勝手に想像してみました。エンドールへやって来たモンバーバラ姉妹と、トルネコを見送りエンドールへとどまった用心棒2人にこんな接点があったら面白いかな……と思いつつ。ミネアとスコットに関してはゲーム内でも明らかに接点があるので、そこから想像を膨らませてみました。書いていて楽しかったです。また機会があれば何かSSを書いてみたいです。

 目標は年内プレー記終了でしたが、全然達成できてません(´・ω・`) ゲームもまだ船を取ったところまでしか進んでいません。来年はDQ4発売25周年記念でもあるので頑張って進ませたいとは思っています(´д`;) とりあえず25周年のうちに「25周年記念プレー記」が出来るようにしたいです(笑)

 それでは今年も1年お付き合いくださりありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
 良い新年をお迎えください。

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