DQ4プレー記・ただ今のお題
<掃き溜めに鶴>

ルール
・4章はミネア(とオーリン)だけで進める
・5章、船取得までは勇者、ミネアのみで進める
・5章、船取得以降、トルネコ、ライアン、ブライ、ミネアで進める
・キングレオ戦、天空への塔のみ勇者使用可
・勇者は馬車内での生存状態可。アリーナ、クリフト、マーニャは棺桶
・ガーデンブルグでの棺桶人質可
・838861、8逃げ、透明気球等の裏ワザ禁止
・種や木の実類は使い切る


過去のプレー記(プレー記案内はこちら
[記念の二部作]
[01]20周年記念 [10]25周年記念
[女性勇者二部作]
[02]装備品 買わない盗まない [09]いろいろやりすぎ
[三人旅三部作]
[03]水戸黄門 [04]腹でん!(パラディン)と美人姉妹 [05]まどろみ無双
[柔剛柔の三部作]
[06]クレバーカルテット [07]益荒男四人衆 [08]クレバーカルテットDS
[勇者役トルネコの二部作](の予定)
[11]百花繚乱 [12]進行中


※当ブログで使用しているゲーム画像の著作権は株式会社スクウェア・エニックスが所有しています。当該画像の転載はご遠慮ください。

2014年11月03日
 私たちは火薬を求めてアッテムト鉱山へと入った。内部はガスが立ち込めているが、人は何人かいて、普通に仕事をしていた。とりあえず鼻と口を布で覆えば何とかなるレベルであろうか。だからといって長居したい場所ではない。さっさと用を済ませてしまいたいところではある。

 ところでふと思ったのだが、アッテムト鉱山では一体何が掘れるのであろうか。石炭、金属類、宝石の原石など、考えられる物は色々あるのだが、実は何が掘れるのかというのを聞いたことがないのである。ある鉱夫に話を聞くと「金を掘り当てるまでやめられない」と言う。ということは「いまだ金を掘り当ててはいないが金山である」のだろうか、それとも「元々別のものが採掘できるが金を掘り当てて一儲けしてみたい」のだろうか。あるいは「金があるかもしれないからとりあえず掘っている」のだろうか。
 ハバリアの宿屋にいた姉弟はアッテムトで働く父親に会いに来たと言っていた。残念ながら父親は既に他界していたが、姉弟ともまだ若い(弟の方は幼い)ことを考えると出稼ぎに来ていたのであろう。既に何かが採掘できるから出稼ぎに行っていたのか、一攫千金を求めたのか、その辺も謎である。
 ううむ、考えれば考えるほど深みにはまるようだ。この鉱山では一体何が掘れるというのだ?!

「オーリン、さっきから何か考え事をしているの?」
「ブツブツ言いながらトラ男をブン投げたり、コウモリを叩き落したり、器用よねぇ〜」
 お2人の言葉にハッとする。そうだった、今は火薬を探している最中。任務に集中しなくては……とはいえ、やはり気になる。
「実は、この鉱山では一体何が採掘されるのかが気になっておりまして……」
「なーんだ、そんなこと考えてたの? そんなの金銀財宝に決まってるじゃない。あたしもさっきからカケラかなんか落ちてやしないかと探してるんだけどさ。なかなかないわよねぇ」
 マーニャ様は肩をすくめられた。マーニャ様の妄想……もとい、推測に水をさすわけではないが、かつて恒常的に金銀財宝が掘れていたのであれば、町にはもう少し、過ぎし日の栄華をうかがい知れる「夢の跡」のようなものが散見されるはずである。しかし、アッテムトは到底そういう感じには見えない寂れた町並みである。
「だったら私が調べてみるわ。ちょうどさっき銀のタロットを見つけたことだし」
 い、いつのまに銀のタロットを拾われたのだろうか。全然気がつかなかった……。
「タロットカードをわざわざ銀で作ったということは、かつては銀が採れていたという可能性も捨てられないわね。そういう風には見えないけれど。それにしても何故作ったものがタロットカードだったのかしら。昔この町に高名な占い師でもいたのかしら……」
 ミネア様はそう仰りながら、カードをめくられた。
「これが答えみたい」

アッテムトは炭鉱

「えー? 炭鉱なのぉ〜。ちぇっ、平凡すぎてつまんないのー」
 本当は実際のゲーム画面を貼り付けたかったようだが、そのためにはDS版を最初からやりなおさなければならず(5章クリア時のデータでは炭鉱という言葉が出てこない)、当時(クレバカDSプレー時)の「ついーと」と呼ばれるものを貼るしかなかったようだ……って、自分でも何を言っているのかよく分からないが。
 それはともかく、なるほど、石炭が掘れるものの、もっと儲かるものを求めてなおも掘り続けているというわけか。彼らの想いはいつか報われるのであろうか……。

 火薬の壷は最深部にあった。今は湿ってしまって大きな音を出すことぐらいしか使い道がないらしい。だが爆発されては却って困る。あの臆病大臣を驚かせるだけなのだから爆音が出ればそれで十分なのである。
 最深部ではなおも2人の鉱夫が鉱山を掘り進めている。ガスの充満するこの状況では無謀とも思えるが、だからといって私たちは彼らに口出しすることは出来ないし、力添えすることも出来ない。2人の成功を祈りつつ、私たちは鉱山を後にした。

 この火薬壷をキングレオ大臣の部屋のそばで使えば、きっと新しい道が開けるはずである。その道の先には恐らく、あの憎きバルザックがいるだろう。進化の秘法を手に入れた奴は、一体どんな力を手に入れただろうか。魔法を封じる「静寂の玉」を手にしていないこの状況で、私たちに勝ち目はあるのだろうか。いや、私がこんな弱気でどうする。マーニャ様もミネア様もバルザックを討つことだけを考え、戦いに臨まれるはずだ。私もその気持ちは同じ。何があろうとも私は絶対にお2人をお守りして、バルザックを討ち果たし、エドガン様の無念を晴らさねばならぬのだ!

(ちょっとオーリン、あんた独り言多すぎ! あんまりブツブツ言ってると大臣に気づかれちゃうわよ。せっかくこの火薬壷であいつを驚かせたってんだから!)
(あ! 壁にボタンがあるみたい。隠し扉だわ!)

 ……いいっ?! いつの間にそこまでコトが進んでたのかっ?!

 −つづく−

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2014年11月13日
 隠し扉の向こう側、隠された王座にバルザックは座っていた。その姿はもはや人間のものではなかった。例えるのなら角の生えた熊である。やはりバルザックは自分自身に進化の秘法を使ったのだ。
「えー、昔は多少は見れたのに、もう全然ダメじゃん! まったくの守備範囲外!」
「なんていうか、人間離れしちゃったわね」
 お2人が評されるとおりの変貌ぶりである。しかしながら私としては、その外見よりもむしろ能力の変化具合が気になるのである。元々奴が得意としていた魔法の力に磨きをかけたのか、それとともに腕力も増強させたように思える。奴が人間の姿だったころは私の腕力の方がはるかに上であったが、果たして現時点ではどうなのであろうか。
 いやいや、あれこれ考えても仕方がない。今はこれから起こるであろう戦いに全神経を集中させねばならない。隙を見せては決して勝てないのだから!
「マーニャ様、ミネア様、行きましょう! 今こそ仇討ちのときです!」

  ◇◇◇

「バルザック! あたしの魔法でギッタンギッタンにしてやる!」
 そう仰ってマーニャ様が唱えた呪文はルカニであった。意外と堅実でいらっしゃる。思わず感心してしまった。
「ホントはイオでもぶっ放そうと思ったんだけどね、あたしまだ覚えてないのよ。レベル10だから」
 ううむ……静寂の玉なしでイオもなし。そう聞かされると堅実であるのか無謀であるのか微妙なところだ。
 そんなマーニャ様のお隣で、ミネア様が銀のタロットを引いた。銀のタロットとは使い手でも何が起こるのか分からないというある意味ギャンブル要素の強い代物である。堅実である(と思われる)ミネア様らしからぬ行動だ。
「……正義のカード。これであいつが素直に消え去るわけないじゃない。ボスにザキを唱えるようなものね」
 ブツブツと呟かれたその言葉通り、バルザックの身体は謎の霧に包まれたものの、結局は何も起こらなかった。
「ぶははは! 何だそのしょぼい攻撃は? 次はこっちの番だ! ギラ!」
 バルザックは低級の閃光呪文であるギラを唱える。低級呪文で攻めてくるとは、私たちをナメているのであろうか。この程度であればさほど痛手ではない。私は手にしている鉄の槍を振り回し、バルザックに斬りつけた。手ごたえは十分である。恐らく、先にマーニャ様が唱えられたルカニのおかげであろう。
 ミネア様はなおもタロットを引かれる。
「あ、しまった」
「あぁーれぇぇぇー」
 ミネア様が顔をしかめられた途端、マーニャ様がどこからか引っ張り出して来られた大きな箱(*注 ひつぎ)に入られ、ご自分で蓋を閉められた。
「……どうやら私は大丈夫だったみたいね。姉さんごめん、今度ほら、前に行ってみたいって言ってたお店……ええと、羊喫茶だっけ? そこに連れて行ってあげるから」
 ……どうやら「ひいてはいけないカード」というものを引いてしまったらしい。それにしても「ひつじきっさ」とは何のことであろうか。……いやいや、無用な考え事はならぬ! 魔法も占いも出来ない私は、ただこの槍で戦うのみなのである!

 不思議なことに、バルザックの輩も馬鹿の一つ覚えのようにギラしか唱えてはこない。お前の武器はそれだけなのか? 進化の秘法の力とは所詮その程度のものなのか。とはいえ、ギラの呪文によるダメージも蓄積されればいずれ脅威となる。しかしそこは治療術の心得もあるミネア様である。ある程度ダメージを負えばすかさずホイミの呪文で治療してくださる。そして少し手が空けばまたタロットカードを引くのである。
 3枚目のカードを引かれたとき、ミネア様はニヤリと笑われた。
「やっときた」
 そう仰るなり装備品であるモーニングスターを頭上でブンブンと振り回された。杖の先に鎖でつながれた鉄球が物凄いスピードで回転している。その勢いのまま鉄球を振り下ろされる。鉄球は大臣のすぐ横の床にめり込んだ。
「あわわわわ……ふがっ」
 臆病大臣は泡を吹きながら尻餅をついた。どうやら腰を抜かしてしまったようだ。
 それにしても恐ろしいパワーである。私ですらかなわないであろうそのパワー。確かにミネア様は華奢な体格のわりには重装備ではいらっしゃるが、そこまで力があるようには思えなかった。それなのにどういうことであろうか。
「ちからのカードの威力は想像以上ね」
 なるほど、引いたカードの影響であるようだ。

 ミネア様の振り回すモーニングスターの鉄球がバルザックを襲った。
「大臣とは違って、あなたには外さないわよ!」
「ぎょえぇぇぇーーー」
 一撃を受けてうずくまるバルザックに私も鉄の槍を突く。それでも何とかバルザックが仕掛けるのは「ギラ」だけであった。傷だらけの己の体に治療を施すわけでもなく、せっかく立派になった太い腕で攻撃してくるわけでもない。バルザックはあくまでも元から得意としていた魔法にこだわった。あるいはもはや思考が停止してしまっているのか……。

「バルザック……父さんと姉さんの仇!!」
 ミネア様はそう叫ばれると力任せにモーニングスターを振り回した。
 ……エドガン様はともかく、マーニャ様に関してはバルザックは何も悪くはないような気がするが、もちろんそれは言わずにおいた。球状の鉄球が歪んで見えるほどのスピードでバルザックに直撃した。
「ぎゃあああべしっ! ひっ、ひでぶっ!」

 人によっては懐かしく感じるかもしれない「おまえはもう死んでいる」テイストな叫びを上げ、バルザックはついに地面に崩れ落ちたのだった。

   ◆◆◆

というわけで、静寂の玉不使用によるバルザック攻略はマーニャ、ミネアともレベル10でまさかの一発勝利という結果でした。ビックリです。下手したらメラミ待ちかと思ったのに、イオさえ覚えずに済んだとは……。


 バルザック戦・1回目

4章のバルザックは最大HP240で毎ターン20の自動回復。静寂の玉を使わない場合、バルザックはギラとベホマを唱えるようです。その他に打撃と火の玉。
ベホマなんか使われたら厄介だな……と思っていたのですが。
こちらの攻撃力、オーリンは40程度のダメージ。ちからのカードでバイキルト状態のミネアは60を超えるダメージを与えました。ちなみに1ターン目にマーニャがルカニを決めたのでバルザックの守備力は0の状態です。

1ターン目
 マーニャ:ルカニ(成功) オーリン:打撃 バルザック:ギラ ミネア:正義のカード=ニフラム(無効)
2ターン目
 オーリン:打撃 ミネア:ひいてはいけないカード(マーニャ死亡) バルザック:ギラ
3ターン目
 ミネア:ホイミ(ミネア) オーリン:打撃 バルザック:ギラ
4ターン目
 オーリン:打撃 ミネア:ちからのカード=バイキルト(ミネア) バルザック:ギラ
5ターン目
 ミネア:ホイミ(オーリン) オーリン:打撃 バルザック:ギラ
6ターン目
 ミネア:ホイミ(ミネア) オーリン:打撃 バルザック:ギラ
7ターン目
 オーリン:打撃 ミネア:打撃 バルザック:ギラ
8ターン目
 ミネア:打撃 戦闘終了

こんな感じの戦闘でした。マーニャは残念なことになりましたが、1ターン目のルカニが最後まで良い影響を与えてくれたことを考えると相変わらず彼女は優等生です。ミネアは相変わらず行動がギャグです。プレー記は違えど今回も立派なネタ姉妹。オーリンがチマチマとバルザックのHPを削り、最後の2ターンでミネアがボコボコにしたという感じでしょうか。バルザックがギラしか使ってこなかったのが謎です。行動が完全ランダムなのか、あるいはもう少しチマチマとHPを削っているとベホマを使ってくるのか。
メラミ習得前に勝つとしたら「ちからのカード」しかないと思っていたので、そのとおりの展開になりましたが、まさか一発目でそういう展開になるとは思いませんでした。なので証拠写真も何もありません(´・ω・`)

レベル10でのクリアは通常プレーと殆ど差がありません。ちょっと運が良ければ静寂の玉は無くても全然構わないアイテムであるようです。

   ◆◆◆

「ちっ、ちくしょう……この俺様がまさかエドガンの娘ごときに敗れるとは……」
 自慢の角も折れ、瀕死の重傷を負ったバルザックが捨て台詞を吐き出した。あれだけの叫びを上げながらも、まだ生きていたことはむしろ驚きである。
「バルザック、あなたは自分の魔力を過信しすぎたようね。魔力自慢の姉さんでさえ最初にギラではなくルカニを唱えたのに、あなたはギラ一辺倒。……でもまだ終わっていないわ。その息の根を止めて初めて、父さんも姉さんもきっと浮かばれる。覚悟しなさい!」
 ミネア様は再びモーニングスターを振り上げ、鎖の先の鉄球をグルグルと回転させた。その鉄球が振り下ろされたときが恐らくバルザックの最期になるであろう。
「うわぁーやめてくれー! 助けてくれー! た、確かに俺はエドガンを手にかけた、それは悪かったと思ってる! だが、俺ぁマーニャには一切手出ししてねぇ! 濡れ衣だー」
 確かにバルザックはマーニャ様の件とは一切関係はない。しかし、まあいわゆる「勝てば官軍」というやつだ。もはや全てバルザックが悪いということになっているのである。

「命乞いに苦し紛れの弁明とは情けない……。こんなにも弱くて情けない人に父さんが殺されたなんて……」

 ミネア様の悲痛な言葉はそのまま私にも突き刺さった。
 そうである、こんなにも弱くて情けない奴にエドガン様は殺害され、私は大怪我を負ってしまった。こんな奴から私はエドガン様をお守りすることが出来なかったという、厳然たる事実が私には重くのしかかる。

 ――こんなに弱くて情けない奴から、あなたは父さんを守ることができなかったの?

 まるでそう言われてしまったかのようで、もはや立つ瀬もない。錬金術の腕はまだまだ未熟で、力だけが取り柄だったのに……。

 私の頭の中は自責の念で満たされ、周りが見えなくなっていた。だから私は気がつかなかった。強大な獅子王が突如現れバルザックを逃がしたことに。
 考え出すと止まらなくなってしまうこの性格は戦場においては命取りとなる。判断の遅れた私はミネア様の盾になることすら出来ずに、獅子王の凄まじい攻撃の前になす術もなく敗れ去ってしまったのだ――。

 −つづく−



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2014年11月17日
 気が付くと私は固い寝台の上に横たわっていた。体のあちらこちら傷だらけで痛みがある。痛みがあるということは、まだ死んではいないということらしい。難儀しつつも起き上がると、目の前に鉄格子が広がる。格子越しには兵士が1人立っていた。囚われの兵士であろうか……いや、逆だな。どう考えても囚われたのは私の方である。
 そういえばお嬢様方は?! と、ハッとした途端、隣からお声が聞こえてきた。
「もう! 絶対信じらんなーい! いきなり『ひいてはいけないカード』なんか引くなんて! しかもあたしにだけヒットとか……。あんた、あたしに恨みでもあんの?」
「だからさっきから謝ってるじゃない。それに結局こうやって生きているんだから良いでしょう?」
「良かない! せっかくの晴れ舞台にルカニしか見せ場が無かっただなんて、屈辱だわ!」
「だから、お詫びに羊喫茶に連れて行ってあげるから、そんなに怒らないでよ」
「ひつじじゃなくてしつじ! 執事喫茶だっつうの! 羊にお茶なんか淹れてもらっても嬉しかないわ!」
 うむ、お2人ともすこぶる元気そうである。これなら安心だ。

 しかし、私たちは囚われの身となってしまった。いくら怪力と自負する私でも鉄格子を破壊するほどの力を持ち合わせてはいない。キングレオ城の王座についていたバルザックに、瀕死の傷を負わせた私たちだ。このままでは処刑されてしまうに違いない。私はどうなっても構わないが、マーニャ様とミネア様だけは救わなくてはならない。それこそが今の私に出来うる唯一のことなのである。
 さてどうしたものか……。
 思い悩んでいると、どこからかか細い咳払いが聞こえた。マーニャ様やミネア様にしてはしゃがれ過ぎた咳払いである。改めて牢の中を見渡すと、なんと、私たちの他に1人、老いた囚人がいるではないか! やはり固い寝台の上で、力なく横たわっている。その体は痩せこけ、髭も伸び放題ではあるが、その顔立ちにはどこか気品が感じられた。どこかで見たような顔にも思えたが、誰であるかまでは分からなかった。老人はゆっくりとこちらを向き、かすれた小さな声で語りかけてきた。
「みな気が付いたようじゃな。わしの話をよく聞きなされ。……この奥の部屋に乗船券が置いてある。それをそなたたちに譲ろう」
 乗船券とは港町ハバリアを出航する船のチケットであろう。以前は比較的手に入れやすかったが、最近は国の取締りが厳しく入手困難な代物だ。その乗船券を手にした状態で牢屋に入れられているこの老人は一体何者なのであろうか。
「そなたたちはまだ若い。生きてさえすれば何とかなる。だからこの国から逃げるのじゃ」
「それなら、王様も一緒に逃げようよ!」
 マーニャ様の言葉にハッとした。そうだ、国王陛下……ここに横たわるご老人は、まさしくキングレオの国王様であったのだ。エドガン様がまだ健在だったときに、私も何度かお会いしたことがあった。エドガン様の研究に大変理解が深く、資金援助もしてくださった。とても聡明で穏やかな国王様だった。それがこんなことになってしまったとは……。
「たとえ何も出来なくなってしまっても、それでもわしは、この国を捨てて逃げるわけにはいかぬのじゃ。だからわしに構わず、そなたたちだけで行きなされ」
 陛下は決して首を縦に振ることはなかった。

 多くの人の運命を翻弄する進化の秘法……やはりあんなものは、二度と日の目を見ないように封印しなければならないのだ!

 我々がここを脱出するための手段を話しているにも関わらず、格子越しの兵士は全く動く気配を見せなかった。もしかしたら彼は陛下の忠実なる臣下なのかもしれない。私たちがいなくなったことが分かれば、彼もただでは済まなくなるかもしれないのに……。
 私は誇り高き忠臣に心の中で礼を言い、お2人と共に奥の隠し通路へと進んでいった。

 乗船券を手に入れ、さらに通路を進むと階段が見えてきた。城内の位置関係と、今辿ってきた通路を頭の中で描いてみる。……恐らく階段を上った先は正門からは死角の位置。ただ、見張りの兵士がどこにいるかは分からない。外に出るリスクは決して低くはないであろう。だが、出ないままであれば船は出航してしまう。
「一か八か、出るしかないわよね」
 マーニャ様の仰るとおりだ。私たちは覚悟を決めて地上へ出た。

「あっ! 脱獄だ!」
「あちゃー、いきなり見つかった」
 運悪く、すぐそばに兵士が1人いたのだ。しかし不幸中の幸いだったのは見た限り、見張りはその1人しかいないということだ。脱獄の知らせを受けた他の兵士が出てくるまで、うまくいけば時間を稼げる!
「うおおおおお!」
 私は渾身の力で兵士に襲い掛かった。こいつを殺してもいい――そのくらいの気持ちで拳をふるい、怯んだ相手を抱えて、頭から城壁へ力の限り叩きつけた。相手の骨が砕ける衝撃が、私の身体にも響いた。
「うっ、うわらばっ!」
 またも世紀末(*注 前世紀のですが)な断末魔をあげて兵士は散った。

 今ならこの場所には私たち3人しかいない。しかしすぐに城から多くの兵士が出てくるであろう。
「マーニャ様、ミネア様、今です! 今のうちにお2人でハバリアへお行きなさい!」
「え?! どうして、今なら3人で逃げられるじゃないか!」
「ダメです。3人で逃げれば追われます。下手したら船が出航しなくなる。それではダメです! 私はここで追手を食い止めます。だから2人で行くのです!」
「でも……」
 マーニャ様はなかなか引き下がろうとはされなかった。だから私はミネア様に視線を移し、目で訴えた。ミネア様は唇をかみしめながら無言で頷かれた。
「姉さん、オーリンの言うとおり、2人で行きましょう。もう時間がない。私たちはここで共倒れするわけにはいかないの」
 いつもと同じような、冷静な声音でらっしゃった。
「ミネア、あんた、本当にそれでいいの? 3人で逃げ切れるかもしれないのに……そんなの冷たすぎるよ!」
「お説教だったら船の中でじっくり聞くわ。とにかく行くの」
「……オーリン!」
 ミネア様はマーニャ様の腕を引っ張ると、半ば引きずるようにして敷地の外へと向かわれた。決してこちらを振り返ることなく、ただひたすらに前へと進まれた。
 そしてついにお2人の姿は見えなくなった。
 ミネア様に損な役回りをお願いしてしまったことは些か心苦しい。もしまたお会いすることが出来たならお詫びをせねばなるまい。荷物持ちなど良いかも知れぬ。……再び会えればの話ではあるが。

 その直後、城門から数名の兵士が現れた。もっと大勢出てくるかと思っていたが、そうでもない。この程度の数なら何とかなるかもしれない。勝とう、勝ってハバリアへ行こう、などとは微塵も思ってはいない。とにかく今の私は時間稼ぎをすれば良いのだ。
「雑魚ども、あそこの兵士のようになりたければ相手をしよう。まとめてかかって来い!」

 私の最後の戦いが始まった。

   ◇◇◇

「くそ、なんて馬鹿力だ」
「こいつがアレだろ? バルザック様を叩きのめしたって奴だろ?」
「だがもう、さすがにくたばっただろう」
「あー疲れたな。こいつはココに晒し者にして、さっさとメシを食おうぜ」

 ……さすがに私1人ではどうにもならなかったようだ。「地面に大の字」とはまさに今の私のことを言うのであろう。
 だが、幸いなことにこいつらは脱獄したのが私だけだと思っているらしい。続々と城内へ引き上げていく。あのバルザックが王になっただけはある。兵士間の情報伝達も疎かであれば、統率もろくに取れてはいないようだ。

 もはや自分の身体をろくに動かすことも出来ない。私は兵士との戦いに敗れた。だが、奴らがハバリアへ向かう気配は皆無。
 きっと、大局的には私は勝ったのだ。
 最後の最後で、私はなんとかお嬢様方をお守りすることが出来た。我が生涯に一片の悔い無し……とは到底言えぬ。今に至るまで悔いが残ることばかりであった。だが、これでほんの少しだけ胸を張ってエドガン様のもとへ行けるであろう。
 目を閉じればまぶたの裏に、在りし日のエドガン様の姿が蘇った。その傍らには嬉々として習い始めた踊りを披露するマーニャ様と、お父上の後ろから恥ずかしそうにこちらを覗くミネア様の姿。
 マーニャ様、ミネア様、まだまだつらい道が続くかもしれませぬが、どうか姉妹仲良く、そして必ず、エドガン様のご無念を晴らしてください……。

「キャー! 助けてー!」

 恐らく人生最後であろう考え事をしていたとき、不意に女性の叫び声が聞こえたような気がした。これは幻聴であろうか?

「でへでへー。待てー、おじさん逃がさないぞぉー! ぐへへー」

 品性の欠片も感じられない男の声も聞こえる。……よりによって人生の最後にこんな男の幻聴とはあんまりではないか!
 そう思った途端、身体に力が入った。まるで何かのスイッチが入ったかのようであった。地面にしっかりと手を付いて身体を起こすと、逃げ惑う若い女性と、しまりのない口から唾液を垂れ流しながら女性を追い掛け回す大柄な男がそこには居た。どうも幻聴ではなかったようだ。
 2人とも私が既に屍になっていると思っていたのであろうか。起き上がると驚いたようにしてこちらを見た。
「ぐええええ、な、なんだオメェはぁ! 今イイトコロなんだよぅ! 腐った死体なら出る作品が違うだろぉがぁ! あぁ?」
 下品なだけでなく、たいそう失礼な男である。
「腐っているのはお前の性根の方だ!」
 私は立ち上がって、男の方へ一歩踏み込んだ。
「あーたたたたたたた! ぉあたぁ!」
 無我夢中であった。100発殴りつけたと言っても大げさでは無いほどの攻撃をお見舞いした。
「ひゃまはぁ〜 は、はろわっ!」
 まるで世紀末に職探しをするかのような断末魔であった。あまりに情けない叫びに思わず体中の力が抜け、私は再び地面に臥せた。こいつのおかげで長らえた生命は、ほんの数分のみであったようだ……。
「あ……ありがとうございます。あぁ……ひどいお怪我を」
 女性が駆け寄ってくれたようだが、もはやその言葉をよく聞き取ることも出来ず、言葉を返す力も残されてはいない。
「そ、そういえばわたし、確かキメラの翼を持っていたはず。ここならもうお城の外だから、きっと使えるわ。あの、わたし、前にサントハイムの小さな町に興行に行ったことがあるんです。だから、これを使ってあの町まで逃げれば大丈夫なはずです。だからわたしにつかまって……って言っても無理みたい。よいしょ、よいしょ……お、重い。わたしの力じゃ動かせないよ……どうしよう」
 女性は必死に何かをしているようだった。
「あ、そうだ! わたしの方がこの人につかまればいいんだ! ちょっとごめんなさいね、少しの間だけ我慢して。……じゃあいきます。それっ!」
 何かが身体にまとわり付いたかと思うと、急に身体が軽くなった気がした。なんだ? 宙に浮いているのか? 私はこれからどこかへ向かうのか? エドガン様の待つ天上か、それとも……。

 今の私にはこの先のことなど、うかがい知る由もなかったのである――

 −第4章・おわり−



   ◆◆◆

4章は3回ぐらいで終わるかなと思っていたら、とんでもなかったです(´・ω・`)
書き進めているうちにオーリンが考え事が多い性格になってしまったり、断末魔が世紀末な悲鳴になったり、色々と思いがけない展開になってしまいました。最も思いがけない展開だったのは静寂の玉を使わなかったのにレベル10でクリアできてしまったことですが。
最後、オーリンと姉妹が別れる場面。リメイク版の会話システムでは確かマーニャがミネアを引っ張っていく形になっていたと思います。しかし今回のパターンはそれとは逆になっています(腹姉妹のときも逆でした)
リメイクでそうなっている以上、マーニャが引っ張っていくのが公式なのでしょうが、個人的にはリメイクが出るより前からずっとミネアが引っ張っていく形を想像していました。なのであえて公式とは逆の展開にしています。

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2014年11月24日
スローペースながら4章まで終わった「いろいろやりすぎ」ですが、この辺でルールを発表したいと思います。
ルールはズバリ、

あ り ま せ ん \(^o^)/

何でもOKでいきます。
(ただし冒険の書が消えるような無茶はしない!)

当初作戦を「いろいろやろうぜ」で固定したプレー記を…と考えたのですが、「いろいろやろうぜ」のプレー状況をつらつらと文字で説明してもあまり面白くないのではないかと(愚痴が多くなりそう……)
その手のプレーはむしろ動画向きなんじゃないかなと思います。実際、某所に「いろいろやろうぜ」固定のプレー動画があって、大変面白いです。文章での表現では敵いそうにありません。もっとも、文章表現力に優れた人が書くのなら面白いものが出来るのかもしれませんが、私には無理そうです。
なので、作戦は固定せず、裏技小技、色々アリという方向での「いろいろやりすぎ」にすることに決めました。冒険の書が消えない程度に試していきたいです(´д`;)
文章的にもフリーダムに色々と出来たら良いかなと思ってます。

というわけで、4章が終わって次は5章…と行きたいところですが、その前に前々からチョビチョビと書いていたものを「4.5章」として6回ほど載せる予定です。スコット&ロレンス再登場?

当初の計画では年内完結を目論んでいたのですが、もしかしたら間に合わないかも(´・ω・`)

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2014年11月27日
 ここは世界経済の中心地・エンドール。
 城下町はいつでも多くの人々で賑わい、活気付いている。城下町の南に構える2階建ての宿屋の地下には世界最大の遊技施設・カジノがあり、多くの者が遊技に興じ、勝負の行方に一喜一憂している。
 そんなカジノに最近、ほぼ毎日入り浸っている妖艶な女の噂は、その界隈の者たちの間にみるみるうちに広まった。宿屋の2階、ある一室を生活拠点としているロレンスという男の耳にもまた、その女の噂が入ってきた。
 ロレンスは細身で碧の長髪、端正な顔立ちの詩人である。ただし彼の紡ぐ詩は、多くの者の心を打つ、とはいかなかった。しかし横笛や竪琴など、楽器の演奏にかけてはなかなかのもので、むしろそちらで日銭を稼いでいると言っても過言ではない。
 ロレンスは部屋を出て、カジノへと降りていった。カジノの遊技はスロット、ポーカー、モンスター格闘場。その一通りに目をやる。格闘場に立てられた闘技場と客席を隔てる金網に噛り付く者、ポーカーの席で顔を紅潮させトランプを凝視する者、そしてスロット台に食いつくように立っている、1人の女。腰の辺りまで伸びた滝のような紫の髪。しなやかで程よい肉付きのスタイル。そのうえ纏う衣装は、なんとも際どい。下着同然とも言える格好だ。あれでは男であれば、いや、女であろうとも嫌でも目がいってしまうかもしれない。
 あのような衣装は見覚えがあると、ロレンスは思った。異国の地で見た踊り子たち。彼女たちの衣装は、たしかああいう感じであったと。
 踊り子であるのなら好都合。上手くいけば新しい食い扶持に繋がるかもしれない――
 ロレンスはさり気なく女の隣りへ向かい、遊技を始める。そしてさり気なく話しかける。
「いかがですか? 調子の方は」
 女はロレンスの方を見ることもせず、スロットを睨んだまま答えた。
「見れば分かるでしょ。全然よ」
「それは失礼。今日は朝から?」
「……うるさいわね。あまり話しかけないでくれる? 気が散るでしょ」
 女は睨み顔のままロレンスを向いた。多少化粧が濃いが、目鼻立ちがはっきりしている。際どい衣装と抜群のプロポーションもさることながら、顔の方もまたかなりの美貌の持ち主だ。
 ほう、横顔も美しいが、正面を向いた顔もまた美しい。いかにも気が強そうなお嬢さんだ。ロレンスはそう思いながら女に謝った。しかし話はなおも続ける。
「あなたは随分とこの場所がお気に召したようですね。『カジノに女神が降臨した。きっと勝利の女神だ』と噂になっていますよ」
「あんた、随分口が巧いわね。まあ、そう言われて悪い気はしないけどさ。でも残念ながら勝利の女神ではないわね」
「そのようですね」
 かなり寂しいコイン受けを見ながらクスっと笑うロレンスに、女はあからさまに不快な表情を見せる。
「遊技はあくまで遊びです。のめり込みすぎは身を滅ぼすこともある。気を付けた方が良い」
「フン、余計なお世話よ。なんで赤の他人にまで妹と同じこと言われなきゃいけないのさ」
 女は不貞腐れた顔をしたまま、再びスロットを始めた。
「ご存じですか? このカジノには特設ステージを組める場所があるんですよ」
 どれだけ疎まれても、ロレンスは懲りずに話を続ける。
「あなた、踊り子でしょう?」
「わお! よく分かったわね……って言うと思った? このカッコなら分かって当然。ところで何なのアンタ。もしかしてナンパ? だったらお断りよ」
 あまりにつれない返事にロレンスは苦笑いした。
「いえいえ、ナンパではないですよ。まあ、確かにあなたはナンパしたくなるほど魅力的ですけどね。でもそうではなくてですね、ズバリ言いますが、僕と組みませんか?」
 突然の発言に、女はさすがにあっ気に取られた。
「僕は楽器の演奏が得意なんです。どのくらいかと言うと、その気になればこの体ひとつで同時に二つの楽器を演奏できるくらいに。そしてあなたは、人を惹きつける力を持った踊り子だ。さっきステージを組める場所があると言ったでしょう? そこで僕が演奏して、それに合わせてあなたが踊るんですよ。
 ここに来るような人たちは宵越しのお金を持たないような者ばかり。良いモノを見せれば、それなりの対価を得ることができるでしょう。そうすればあなたはここで遊ぶ為のお金を稼げるし、僕も日銭を稼げる。悪い話じゃないと思いますが」
「へえ……それはいいわね。でも、ここで勝手にそんなことしていいわけ?」
 女は関心を示しつつも、すぐには乗ってこない。しかしその辺はロレンスも織り込み済みであった。
「このカジノは国営です。何かをするには国の承諾が必要ですが、ご存じのとおり、今は王女殿下の結婚式が行われていて、国全体がお祭り騒ぎ。城内や式場の警備こそ厳重ですが、出来るだけ多くの人に集まってもらいたいのも本音。承諾は簡単に取れると思いますよ。城下町では今までになく露店の出店ラッシュも続いている。それが証拠ですよ。もちろん、そういう手続は僕が全てやります。僕はここの住民、まずハネられない。さぁ、いかがですか?」
「なるほどね。……でも1つ確認したいことがある。すごく大事なこと」
 女はこれまでになく眼光鋭い、真剣な表情を見せた。
「それは、あんたの音楽とあたしの踊りがマッチするかってことね。合わなければ、いくら他の条件が整っても無理。あたし、これでも踊りに関しては物凄くこだわりがあるのよ」
「たしかにそれは大事なことですね。じゃあ一度合わせてみましょう。城下町から少し外れた空地なら人通りも少ない。そこで試してみましょうか」
 ロレンスは爽やかな笑顔で町の外を指差した。
「いいけど、町の外じゃ魔物が出るんじゃない? あんたみたいなヤサ男じゃ手に負えないかもしれないわよ」
 女は意地悪な笑みを浮かべてそう言ったが、ロレンスは微塵も笑顔を崩さない。
「心配には及びませんよ。僕はこう見えて副業で傭兵もやってるくらいですからね」
「その出で立ちで? それはオドロキ」
 女は思わず肩をすくめた。


 カジノを後にして、2人は町の外れの空地へやって来た。昼夜問わず魔物が出没するようになり久しいが、幸い、今この場所では魔物の気配は感じられない。
「で、どんな曲を演奏してくれるのかしら?」
 女はウォーミングアップしながらロレンスに問うた。
「どのような曲がお好みで?」
「へえ、即興で作るってやつ? じゃあね、カジノで負けた虚しさの中にも次は勝つという情熱を秘めた曲がいいわね」
 女はニヤリと笑いながら少し意地の悪いリクエストをしたが、ロレンスは涼しい顔で頷き、手にした竪琴を弾きはじめた。
 その演奏ぶりに女は目を見張った。色白の細い指を流れるように動かし音を奏でる。哀愁の中にも力強さが垣間見えるような音色。女はしばしその音色を聴き入った。
「さあ、あなたも踊ってくださいよ。相性を確かめるんでしょう?」
 ロレンスの言葉に我に返り、女も踊り始めた。その表情から気の強さは消え、悲しみを帯びた表情。かと思えば瞳に力強さを湛え、勇ましい表情も見せる。指の先から足の先まで体中に感情を込めて、虚しさ、悲しさ、情熱に満ちた力強さを余すことなく表現した。音楽と踊りが見事に絡まりあい、2つは1つの芸術へと昇華した。
「おお! さすがです。素晴らしいダンスです……」
「いや、あんたの演奏も凄いよ。メチャクチャ気持ちよく踊れる!」
 2人して感嘆の声をあげ、
「これならいける!」
 声を揃えた。
「そういえばあたしたち、コンビを組むのにまだお互い名前すら知らないね。あたしはマーニャ。モンバーバラでずっと舞台に立っていた踊り子さ。まあワケありで今はココにいるわけだけどね。どうぞよろしく」
「マーニャさんですか。僕はロレンスと言います。一応詩人なんですけど、もっぱら音楽で食ってるってとこですね。たまに傭兵として洞窟に潜ったりもしてますけど」
 互いに自己紹介し、握手を交わしたのだった。

「では僕はお城へ行き、許可をとってきます」
「せっかくだからあたしも行くよ」
 2人は空き地を後にして、城へと向かった。
「これで自分で遊ぶお金を自分で稼げるようになりそうで、良かったよ」
 マーニャは頭の後ろで手を組みながら言った。
「今まではどうやってお金を工面していたんですか?」
「妹の稼ぎを持ち出してたの」
 あっけらかんとしたマーニャの答えにロレンスはさすがに驚きの表情をみせる。
「妹さんは、何をされているのですか?」
「教会で手伝いしてる。あの子、治療術の心得があるんだ。あと最近お店を始めたみたい。あんたさっき言ってたじゃない? 露店の出店ラッシュが続いているって。そのラッシュに乗っかったんだよ。知らないかな、占いの店なんだけど。あの子の占いはよく当たるのよ。元々治療よりソッチが本職だから」
 ――占いの店だって? てことは、スコットの?

 ロレンスは腐れ縁の傭兵仲間のことを思い出した。

 −つづく−

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